繁殖引退犬と暮らす家族だからこそ思うこと(元保護犬と新たな家族の物語)

           

#07_KOUME (OSAKA)
Tomokoさん・ご主人さま・小梅ちゃん

繁殖引退犬の小梅は、生まれてから6歳になるまで長い間室内から出たことがなく、散歩をしたことがありませんでした。ケージの中で、その狭い世界の中で生きてきました。そんな小梅の人生に、ご夫婦との出会いがあり、外に広がる世界がこんなにも広いことを知ります。初めて家に来た日、怖くて不安でキャリーから出ることもできず、部屋の中の敷居を超えることすら出来なかった小梅。ご夫婦に見守られ、徐々に散歩もできるようになり、喜怒哀楽も表現できるようになって____今回は、愛を伝え続け、その全てを受け止めることで信頼関係が芽生え心を開いた小梅と家族の物語をご紹介します。

SPONSORED LINK

元保護犬 小梅(こうめ)のこと

2011年3月3日生まれ、トイプードル・女の子。現在8歳(2019.6時点)
大阪市内を中心に複数店舗の保護犬カフェを経営するNPO法人動物保護団体から、寒い冬の2月、6歳間近の小梅はTomokoさんご夫妻の家族になりました。ブリーダーからの繁殖引退犬、所謂「余剰犬」だったため、長年狭い室内ゲージの中だけで過ごしてきたこともあり、新しい環境に慣れるまで少し時間がかかりましたが、今はたくさんの友だちに恵まれ日々幸せに暮らしています。

保護犬たちとはじめてのふれあい___そして夫婦の選択

繁殖引退犬を家族として迎えたキッカケを教えてください。

「私は、元々実家で犬と暮らしていて、犬が好きなので家族に迎えたいと思っていました。
保護犬の存在を知っていたものの積極的に保護犬を迎えることについて考えていなくて、主人が『犬を家族に迎えるなら保護犬という方法もあるから』と保護団体を探して来てくれました。
探してくれた保護団体は、”保護犬カフェ”という、保護犬がいつでもカフェ施設にいて出会える場所を運営しているところで、比較的近郊に2〜3店舗あったので、それぞれ見に行ってみようかというのが始まりでした。」

保護犬カフェの仕組みと譲渡の流れを教えてください。

「カフェに行くとたくさんの犬たちがいて、ふれあう時間を作ることができます。気になる犬がいた場合は、スタッフの方に聞くとその犬のプロフィールを教えてもらえます。
情報としては犬の保護経緯と年齢、性格や疾患などです。保護犬たちは保護時に簡単なメディカルチェックをしているのでその結果も教えてくれました。
家族として迎えたい犬が決まっても、その日には一緒に帰ることは出来ません。最短でも2週間後くらい待機の時間があり、その後トライアル期間は無く正式譲渡となります。
譲渡時には契約書に必要事項を記入して、ペット可住居かどうか、そして必ずペット保険に入るように言われました。
ペット保険会社の指定はないけれど、何か病気になった時に高額になり、負担が増えることでまた遺棄されることがないようにいうのが理由でした。」

出会ってすぐに気持ちが決まったのでしょうか?

「1回目に見に行ったお店ですぐに心が決まりました。
私自身が被毛に若干アレルギーがあるので換毛の少ない犬を希望していて、事前に選択肢としてトイプードルを考えていました。
カフェに行った際に、2頭のトイプードルがいて、小梅の他にもう1頭のトイプードルがいましたが、その犬は若いこともあり家族が決まりやすいのではないかと考え、私たちは、もうすぐ6歳になる小梅を家族として迎えることに決めました。」

辛抱強く見守ることで心を開く瞬間に繋がっていく

年齢が高い犬を迎えて実際にいかがでしたか?
家族になって半年の間に様々なことがあったとか___苦労したことも交えて聞いてみました。

「小梅は、我が家に来てから”声を出すこと”がなかったんです。主人と、『もしかして声帯がないのではないか?』と話していました。
ケージの中に置いた犬用ベッドに何度教えてもおしっこをしてしまったり、ご飯を食べる時に一度口に入れて持って行くんです。ご飯を安全なところに持っていく癖が抜けませんでした。
でも、一番大変だったのは散歩ですね。
外に出ると、すぐに散歩を拒否しました。抱っこして、下ろして___辛抱強く小梅の気持ちを優先させて、その繰り返しで・・・散歩が楽しめるようになるまでは少し時間が必要でした。」

「でも、半年経ったある日、帰宅すると小梅が小さな小さな声にもならないような声で『ワン!』と鳴きました。
この鳴き声をあげた日から、お散歩も少しづつ距離が長くなり、歩けるようになっていきました、心を開いてくれた瞬間でしたね。

今ではお散歩も大好きで、芝生や公園で追いかけっこもよくします。家の中でも遊びを誘うようにお尻を突き出して走ったりもするんですよ笑」

逆に、この頃から”怒る”という感情も表面に現れてきました。

「それまでは何をされても為すがままだったのですが、嫌なことに対して意思表示をちゃんとするようになり、喜怒哀楽を出してくれるようになりました。
ただ、怒りのコントロールはなかなか難しくて、嫌なことがあり、怒りがMAXになると自分自身の手を噛んで癇癪を起こすようになりました。自傷行為をすることで自分のことを落ち着かせているようでした。
最近はカウンセリングに重点を置いたドッグスクールに月1回程度定期的に通うようになって、その機会のおかげで、そもそも怒ることがなくなり穏やかに過ごせるようになりました。
成犬からの譲渡は、成犬ならではの落ち着きがあるので私はとても良かったと思っています。」

小梅が運んできた新しい楽しみ

小梅ちゃんが一番好きなことは何ですか?

「性格が甘えん坊なのでとにかく撫でてもらう事が一番好き。甘える事ですね。
寝ている時も、お腹をちょっと出して撫でてもらうのが好きです。
共働きなので朝から18時くらいまでは自宅でお留守番していますが、最近は帰宅すると小梅の喜びの表現がすごくて変わったな〜って思います笑」

今、一番小梅ちゃんと何をするのが楽しいですか?

「小梅のお陰で広がったものがあって___そもそも私は趣味がなかったんですけど 、”カメラ”っていう趣味ができました。
小梅のお陰でインスタを始めたことがきっかけで、インスタ友だちの写真を見ながら、『私もあんな風に可愛く小梅を撮ってみたいなぁ。』そう思って写真を始めることにしたんです。8歳なので長丁場はできないのですが、小梅を撮るのが楽しくて、一緒にいろんなとこにお散歩に行くことが楽しいですね。」

「その写真の趣味も広がって、SNSで犬友だちがたくさん増えました。
実際に犬たちも含めてみなさんとお会いすることもありますが、情報を色々と教えていただいたり____共通の話題も多いし、とても楽しい時間を過ごさせていただいています。
でも小梅。実は犬が苦手なんです。
無理強いはさせたくはないのですが、ある程度は犬同士のコミュニケーションも楽しんで欲しくて、それもあって普段のお散歩だとなかなかそういう機会も作れないので、慣れさせるためにも犬友だちとの時間を作っています。
みなさんのお陰で、最近は他の犬ともコミュニケーションが取れるようになってきたんです。
犬の匂いを嗅ぎに行ったり、少しづつ他の犬にも慣れてきましたね。」

人生において ”当たり前のこと”ができない命がそこにあった

小梅ちゃんがTomokoさんに伝えてくれた事を教えてください。

『 今、目の前のことを頑張って生きること。』

「小梅は過酷な環境の中、6年間も頑張って生きてきたんですよね。
犬だからその環境が全てで、その世界しか知らないと思うし、当たり前と思って生きてきたのかもしれないけれど、その中で”ちゃんと生きていた”。

その時はその時で環境に対応をして、今この新しい環境に大きく変化をしても、柔軟に対応をしてちゃんと私たちにも心を開いてくれた。

私が色々と連れていって苦手な犬に会わせたり、カメラで写真撮ったりとか小梅もストレスがあるかもしれないですけど笑 でも、ちゃんといつも一緒に楽しく過ごしてくれる。

『目の前のこと、今を一瞬一瞬、生きているんだな』ってそう思うと、私も、”今”を精一杯やっていかなくちゃいけないなって思うんです。

人間は、娯楽もあるし、恵まれていますよね。その今の自分の状況とか立場に対しても改めて”ありがたいな”って思いました。
小梅がいなかったら、そんな当たり前のことに気がつかなかったと思います。
その当たり前ができない命がそこにあったんだなって。そう思うと、大事に毎日を日々生きていきたいなって、そう思うんです。」

命を販売することには大きな責任が伴う

繁殖引退犬の元保護犬と暮らす家族だからこそ思うこと。

「愛情を持って繁殖する犬たちを、大切に責任を持って育ててくれているブリーダーと、それ以外の繁殖のためのブリーダーは全く別のものだと思います。
後者は、無くなって欲しいです。
以前は犬が好きだったのでペットショップを見に行くこともありましたが、最近は見に行くと、その仔犬の背景を想像してしまうので、あまり見に行きたくなくなってしまいました。少し大きく育ってしまった仔犬を見ると、この犬は今後どうなってしまうのかな・・・って思ってしまいます。
ペットショップもブリーダーも悪いわけじゃないけど、命を販売することには大きな責任が伴うと考えます。」

「小梅を連れて写真を撮りに行くとたくさんの人に話しかけていただく機会があります。
その時に”保護犬”っていう存在があるんだということを知っていただきたくて、ちゃんと伝えるようにしていますが、保護犬自体を知らない人がまだまだ多いと感じています。

年配の方だと『年齢のこともあるし犬と暮らしたいけど暮らせないんです。』という方も多くて、そういう方にこそ成犬やシニア犬もいることを、お話するようにしています。
少しづつですが、小梅を通じて広めていけたらいいなって思います。」

犬と暮らして変化はありましたか?

「小梅が来るまでは予定がなければゆっくりと起きることもありましたが、今は『休みの日だから小梅をどこかに連れて行きたい!』と思って、二人とも早起きになりました笑
ちょっと遠出をしてみたり、今まで行ったことの無かった場所に家族で出かけることが多くなりましたね。夫婦共通の楽しみが増えた感じでもあります。
和歌山マリーナシティーまで行って一緒に観覧車に乗ったり、淡路島や鳥取、白浜・・・と、お出かけが本当に増えましたし、楽しみも随分広がりましたね。」


編集部です。寒い冬もあって、ポカポカ暖かな春もあって、驚くほど暑い夏もあって、落ち葉がカサカサする秋もある。そんな移り変わる四季を家族と共にお散歩をすることがどれほど幸せで豊かなことなのか。1つ1つの見たもの全てが小梅ちゃんにとって驚きと喜びに満たされていると思います。そんな小梅ちゃんをご夫婦で温かく見守りながら、Tomokoさんはこれからもカメラを片手にその愛おしい存在を撮り続けるのでしょう。小梅ちゃんのインスタは輝きを切り取った写真ばかりで全て美しいです。

これからも、日常をご家族で楽しむ時間が思い出としてたくさん重なっていきますように。Tomokoさん、小梅ちゃんご協力をいただき誠にありがとうございました。

《この記事を読んだあなたにオススメ!》
子ども達から古着を回収し、犬服に作り変える「アップサイクルドッグウェアプロジェクト」で作られた世界で1着しかないサステナブルな国産ドッグバンダナ。
売上は、野犬たちの譲渡促進を目的としたプロジェクトや情報発信に循環しています。
enkaraMarket

子ども達から古着を回収し犬服に作り変える「アップサイクルドッグウェア」プロジェクトで作られた世界で1着しかないサステナブ…

\enkara最新情報をチェック!/
 data-eio=VISION「私たちは循環する社会の仕組みを創る」" width="1280" height="768" >

VISION「私たちは循環する社会の仕組みを創る」

今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

CTR IMG