犬との生涯に向き合うからこそ生まれる絆(譲渡犬と新たな家族の物語)

           

#08_TUGUMI (YAMANASHI)
藤沢 貴子さん・ご主人さま・つぐみちゃん

東京都出身のご夫妻は、「木工の仕事をしたい」というご主人の夢を実現すべく約20年前、木工を学ぶために長野県での暮らしをスタートしました。その当時、共に暮らしていた犬”こう太”と共に「自然の中で生活をしたい」という願いも同時に叶え、広々とした自然豊かな環境で犬との暮らしがはじまります。その後、河口湖、北海道での生活を経て、北軽井沢から現在は八ヶ岳南麓へ。日本の美しい森林と共に犬たちとご家族で生活をしてきました。そして今は、ご夫婦として3頭目となるコーギーの”つぐみ”と暮らしています。24年間という歳月、犬と共に暮らしてきた貴子さんだからこそ思うこと。今回は、つぐみと家族の物語を紹介します。

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譲渡犬 つぐみのこと

2010年生まれ、ウェルシュコーギー・ペンブローク、女の子。現在9歳(2019.7時点)
2018年初夏、高齢者の飼育放棄により貴子さんの知人が前飼い主から直接保護。
その後、友人経由で貴子さんご夫婦の元へ。保護当時8歳だったつぐみは、とても静かな犬でした。
心配されていた環境の変化に対しても、すぐに順応し、今では自分の主張もちゃんとするようになりました。たくさんの木々に包まれて日々豊かに穏やかに生活をしています。

共に過ごしてきた3頭の犬たちの共通点はみんな保護犬ということ

つぐみと暮らす前にも2頭の保護犬“こう太とさくら“と暮らしてきたご夫妻。 家族として迎えた犬たちとのそれぞれの出会いを聞きました。

「人生ではじめてパートナーとして迎えた犬はこう太でした。都内在住時、テナントの一角で開催していた”里親募集コーナー”で出会い、ふと立ち寄ったその場所から犬との暮らしがはじまりました。
こう太はコーギーのように大きな耳をした、真っ白な雑種犬でした。
犬と自然豊かな土地での暮らしを実現したくて、タイミングもあり、長野へ移住することになりました。

その後、河口湖に転居した私たちは散歩中に2頭目となる犬、さくらに出会いました。野犬として湖畔のどこかで生活していたようでしたが、毎日だんだんと距離が縮まって。
自宅の方にも来るようになって、『家族になろう』そう決めて保護しました。
のちに近所の方から聞いたのですが、ちょうど1年くらい前に近隣の神社に兄弟の仔犬たちが数頭捨てられていて、愛護センターの職員に捕獲されたそう。
でも捕獲時に1頭だけ逃げてしまって、さくらによく似た毛色の犬だったとのことで____もしかすると、その1年後に私たちはさくらと巡り合ったのかもしれないなって思っています。
そういった経緯があって暫くは、こう太とさくらの多頭飼育でした。」

2011年、こう太は17歳で亡くなり、その後7年間ご夫婦と共に暮らしたさくらも17歳という長い人生を全うし、今は2頭共に高いお空へ。 さくらが亡くなって数ヶ月経過した頃、飼育放棄から保護をしたという、つぐみの存在を友人から聞き、その後家族になり今に至ります。

「こう太、さくら、つぐみと、経緯はそれぞれ違いますが、全て共通しているのは保護犬であることですね。
でも、私たちが偶然に出会ってしまうのが保護犬だっただけで、保護犬を家族に迎えたいと思っていた訳ではないんです。犬と暮らしたくて積極的に犬を探すというイメージは元々無いんですね。不思議と、なぜか犬へ繋がっていくみたいな、そんな感覚です。」

さくらのように野犬を保護することは都心部ではなかなか聞かないシチュエーション。
八ヶ岳周辺の野犬事情について聞いてみました。

「河口湖には5〜6年間住みましたが、数回は犬を保護しましたね。公園に捨てられていたり、湖畔近くを仔犬がうろうろしていたり。
八ヶ岳南麓に移住してからも、散歩中に何度か迷い犬に出会ったこともあります。
観光地ということで、いろんな人が訪れるということが理由なのか、”良い人が誰か一緒に暮らしてくれるのではないか”と期待して県外から置いて行ってしまう人もいるようです。
河口湖に住んでいた頃に聞いた話だと、別荘に遊びに来る人たちが夏のおわりに都心へ戻る際に置いて行ってしまうこともあるようで、地域性もあるのかもしれませんね。」

※環境省⾃然環境局が毎年発表している「全国動物愛護センター収容犬内訳の割合」からも、平成29年度に同センターに収容された犬たちは全体の8割が1歳以上の成犬です。
また、引き取りに関しては、飼い主からが1割、所有者不明が9割と、飼い主が直接センターに持ち込むケースは極めて少なく、遺棄や野犬の保護・捕獲などに分類される所有者不明が圧倒的に多いことがわかります。

いろんな方が繋いでくれた縁

今、共に暮らす”つぐみ”との出会いは?

「高齢者による飼育放棄から保護をしたというつぐみの存在を友人から聞いた時、さくらが亡くなってまだ3ヶ月半くらいと日も浅く、新たに犬を迎えることを考えていませんでしたが、長年、犬との暮らしをしてきたこともあって、ぽっかりと穴が空いてしまっていたのも事実で。
つぐみは当時8歳ということもあって、8年間違う環境で過ごしてきた犬を迎える不安もありました。
それと、音に敏感だったこともあって、自宅の1階が工房なので木工機械などの作業音が常にあるので、その反応を見るためにも保護主さんと相談をして、2週間のトライアルをしてみることにしました。
『つぐみ自身にも本当にうちでいいのか選んでもらおう』そういう気持ちでスタートしました。
結果、心配していた音への反応も、意外なほど何も無くて笑
約束の2週間を経過した頃に、行政の登録変更などの手続きも行い、正式に家族として迎えることになりました。」

トライアル期間中に何か問題や気になる事はありましたか?

「いい子すぎて不思議なくらいでした。全く吠えない。
最初に会った時も、顔はかわいらしいけど、どこか遠くを見ているような・・・目線が合っているような合っていないような、そんな印象を受けました。とにかく静かでしたね。
イメージをするコーギーって喜怒哀楽がはっきりしている犬が多かったので。」

譲渡された時と1年後の今の変化はありますか?

「まず、外見は8kgから9.5kgに変化しました笑
たくさん散歩をして、筋肉もちゃんとついて、小さいなりに体がガッチリしたなって思います。
お友だちからも『毛艶や表情がよくなったね』と言われます。
そして当初全く吠えなかったのですが、徐々に声に出して気持ちを表現する瞬間が増えてきました。
自分を表に出せるようになってきましたね。
警戒心があまりない犬なので、今でもそういったことで吠えること少ないのですが、自分が欲しいことに対してちゃんと意思を出せるようになってきましたし、アイコンタクトもできるようになりました。」

起こる全てをありのまま受け止めること

犬との暮らしについて改めて思うことは?

「気がつけば、24年間犬と暮らしています。
はじめての犬だったこう太が家に来た時は”犬の飼い方本”とかを読みました。
書いてある通りに、なんとなくいいイメージで、こうしたらこうなるだろうって勝手に想像をしていたけれど実際は全く、そうはならない笑
特に、やんちゃで難しい犬だったこともあってマニュアル通りにいかないことを知りました。
犬と暮らしていく中で、長いようで短い時間の中で、楽しい時もあるけれど、病気を患ったり歳もとっていく___そして犬の方が先に亡くなってしまいますよね。
全部を一通り、向き合って受け入れて、送れる。それがぜーんぶ、いいなって思っていて。
全部ひっくるめて犬との暮らしが好きだなって、そう思います。」

犬が教えてくれたことや犬から気づかされたことはありますか?

「3頭ともこういった経緯もあって、犬たちから共通して感じることは”その時その時を懸命に生きているんだな”っていうこと。
どの犬も同じく、みんな一生懸命に今を生きてきました。
つい人間は過去と未来ばかりを考えてしまうから、犬たちを見ていると『今を大事にしないと』と、いつも感じます。
歳をとっても、それをちゃんと受け入れて生きているし、身体的な変化も自然と受け入れていく。すごいなって感銘を受けますね。
特にシニア期は尊い感じがします。
そして亡くなる時も、ちゃんと受け入れているなって。
こう太もさくらも、自分自身で死を受け入れていましたね。
私もそれを見て『あぁ・・・亡くなるんだな』って、そう思いました。
『もういくね』って、そう全身で伝えてくれて、なんか本当にすごいなって思って。
忙しい時は頑張ってくれて、落ち着いた時にスッと・・・
その心積もりも含めて犬たちから学ぶことや気づきは多いですね。」

彼らは人間じゃなくて犬、そのことを尊重する

犬との関係の中で大切にしていることはありますか?

「私は犬たちに対して主観的にというか、擬人的にならないように気をつけています。
つい自分の想像でこうだろう、ああだろうと思ってしまうことも多いけど、なるべく本質を探るようにしています。
理由は、彼らは人間じゃなくて犬だから・・・
犬だということを尊重したいし、人間とは違う、別のいきものだという意識を忘れないようにしています。
人間の子と一緒ではなくて犬は犬。だから犬として向き合う。
改めて、犬は人間とは違う種類のいきもので、なのにパートナーとして家に一緒に住み、言葉が通わずとも心が通い合い、家族として過ごしている事実ってすごいなと思います。」

犬が教えてくれたことや犬から気づかされたことはありますか?

「365日、どんな天気でも必ず外に朝夕散歩。とにかくよく歩くようになり健康的です。
毎日同じ散歩道を歩くので自然のちょっとした変化も感じますし、四季の移ろいも味わうことができます。
今の季節は緑が少しづつ濃くなってきて、梅雨もあるけど、山アジサイや夏の花たちも咲き始めて、しっとりと美しいです。
田舎だと案外、車移動が多くなってしまうので、歩くからこそ、その風景も感じることができるというのもあります。
車で通り過ぎてしまう場所も、散歩をして奥の山道に入ったりすることで見える景色も多いんです。
さくらが亡くなって、犬がいなかった数ヶ月間、やっぱり散歩は行かなくなりましたね。
犬と共に暮らすからこそ、その土地の四季を毎日見て楽しむという日常に変化しました。」

感謝をもって死と向き合う

思い出のエピソードを教えていただけますか?

「犬との暮らしには必ず最後に”死”というものに直面しますね。
これは決してネガティブ要素でないのですが、最初の犬、こう太が亡くなった時に木工の仕事をしている主人が、本人も辛かったと思いますが、犬たちがよく寝ていた家の床材と同じ杉の木材を使って<おくり箱>という蓋のない箱を作ってくれて、その箱の中に、お花と共に納めて火葬をしてもらいました。
不思議と、その時間がとても良くて・・・。
さくらも同じように送りました。
もちろん悲しくて辛かったけど、自分たちなりに順番を踏んで、ちゃんと見送る準備をして死に向き合えて送れたことが良かったと思っています。
後々、あったかい思い出みたいな感じで心に残っています。ちゃんとできてよかったなって。

木に包まれて。
ずっと我が家の犬たちの場合、木と共に犬生があって、空に送るまで。
死のことは本来は考えたくないところかもしれないけど大事だなって、そう思います。」


編集部です。今回、記事を書きながら雨上がりの森の中を森林浴をしながら歩いているような香りを感じて、心身ともに癒されました。
今日みたいな梅雨空の日も、雪が深い日も、どんな日も毎日、歴代3頭の犬たちと共に貴子さんご夫婦は同じ散歩道を歩いてきました。
”犬と一緒に歩く何気ない普段の道”
きっと皆さんの心の中にも犬と歩いた思い出の道があると思います。
元気な頃はグングンとその道を進んだ犬たちも、いずれ一歩一歩ゆっくりと歩くようになり、いつかはそれも思い出になるときが訪れる。
そしてまた新しい出会いと縁があり、繋がっていく一本の道。
きっとこれからも、貴子さんご夫妻はその道を犬たちと共に歩むのだと思います。

貴子さん、つぐみちゃん、ご協力をいただき誠にありがとうございました。

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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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