車中泊をより快適に過ごすためのポイント by生活冒険家 赤井成彰

           

災害時、環境省はどうぶつたちとの避難について「同行避難」を推奨しています。それを知って「同行避難を国が勧めているなんて安心・・・」と思った私。「でもなんで、被災地の映像が映る時、どうぶつと避難する人たちは車中泊やテント泊をしている人が多いのだろう?」と疑問が浮かび調べると、勘違いしやすいカラクリがそこにありました。

環境省が推薦しているのは「同行避難」であって、「同伴避難」ではありません。同行避難は、避難所までは同行で避難して来てくださいね。でも避難所には同伴で入れませんよ。というケースが多く、結果、どうぶつと暮らす方は避難所に入ることが出来ず、車中泊を選択せざるを得ないケースが多いというのが現実でした。そして、いざその時になると混乱を招くことも多かったようです。

自治体によって同伴避難が広まる動きも少しづつありますが、知っておくと緊急時に役立つ『車中泊を快適に過ごすためのポイント』を、日常的にモバイルハウスで暮らす生活冒険家 赤井成彰さんに伺いました。

お久しぶりです!
今回はモバイルハウス”Toby”との生活についてリアルなお話を聞かせてください。

いつからモバイルハウスで暮らしていますか?
「2019年2月からなので約8ヶ月間になりましたね。」

車で生活しようと思ったきっかけを教えてください。
「僕の場合、『家賃が高いな』というところから始まっています。
ハワイで自給自足をしたいという夢があって、改めて自分の支出を見直した時に圧倒的に大きなウェイトを占めていたのが”家賃”でした。
この家賃を抑えることができたら人生が変わるんじゃないかなと思ったことがキッカケです。何が一番理想的なのか、と考えた結果モバイルハウスでの生活を始めることに繋がっていきました。」

モバイルハウス”Toby”のことを教えてください。
車種:マツダボンゴトラック(ワイドロー)
年式:2004年
「そもそもトラックは事業用として走ることを前提として作られているので、走行距離10万キロでもまだ余裕で走ると言われています。実際、Tobyは今9万キロを超えたくらいです。
長期滞在を想定し、1トントラックをベースにサイズを考えました。そのトラックの荷台に大きな箱状の居住空間を作り載せています。」

内装は?どんな装備なの?
「僕の場合は、かなりシンプルに作りました。
キッチンや水回りなどは何もありません。一つの大きな空間になっています。
それには理由があって、作る時に必要なものが分からなかったので、生活をしながら必要なものができたら付け足して行こうと考えたからです。
なので、まずはシンプルな空間に仕上げました。
でも、8ヶ月暮らしてみて今わかったことは、結局必要なものはこれ以上ないということですね。」

モバイルハウス生活を経験中の今、その生活について感じたこと。
「実は僕、先日千葉県に甚大な被害を残した台風15号が上陸した時、千葉県の被災地にいました。
その時に改めて体感した2つのことがあったので今回お話したいと思います。

今まで人生の中で大きな台風を経験したことがなく、台風を安易に考えていた僕は、その日も開放的な湖畔に車を停車しました。
ただ、夜中の2時過ぎに今までに経験したことにない揺れで起き、車が倒れるんじゃないかという不安と恐怖を感じて、一目散に車を走らせ安全な森の中に避難をし、夜をやり過ごした時に感じた気持ちがあって___

それは、災害時に家ごと自由に動かせる事がどれほど安心なのかという事。
基礎につながっていたら、その場で工夫をして祈るしか出来ない。
でも、モバイルハウスだと家ごと避難できるという経験をし、それは新しい発見でした。」

「2つ目は翌日感じた事で、台風が過ぎた朝、電気や水などライフラインが止まって街はパニックで____
街全体の信号が消え、断水して生活ができない中、僕は日常と全く変わらない生活がはじまりました。
僕は今、ソーラーパネルを積んで電気を自給していて、水はタンクに常に備蓄、調理は車に積んでいるガスコンロを使用しています。
自分でインフラを整えて作ることは、コストが抑えられるだけでは無く、緊急時には日常と変わらない生活ができるというのもメリットだと思いました。
それと同時に、インフラを100%外部からの供給に依存してしまうことの危険性を身を以て感じました。」

家族で車中泊生活をしている方から聞いたことがあるコツがあったら教えてください。
「キャンピングカーに4人家族(夫婦&子ども2人)で住んでいる方に出会った事があります。
彼らは全国を車で旅をしているのがベースだったけど、住居は車でした。
家族で1つの小さな空間に住む時に必要なことは『1人の時間を作ること』だと以前聞きました。
いつも近くに誰かがいるとそれによって気付けないこともあるから、自分を見つめる時間を意識的に作ることが大事というのはなるほどなって思いましたね。」

赤井さんがご実家の犬と一緒にモバイルハウスで過ごしている写真を見ました。実際どんな反応をしていましたか?
「うちの犬は好奇心が旺盛なのでソワソワしていましたね笑
でも、安心できる人がそばにいたらきっと落ち着いて過ごせるような気がします。
性格によるのかもしれませんが、実際に犬と一緒にモバイルハウスで旅するご夫婦に出会ったこともあります。」

駐車する際に気をつけていることや配慮などありますか?
「僕は、駐車するときにあまり人がいないところを選ぶ事が多いですね。
人目があると自分自身が気になって落ち着かないというのが理由ですが、自然の中で景色の良いところに停める事が多いです。
ただ、それには1つ問題点があって、そうすると下水システムがない場所が多い。
どうしても洗い物とかそういったものを大地に直接還すことになるので、そこには最大限配慮をしていて、食生活なども工夫しています。」

食事、照明などのライフラインはどうしているのか?
「食事は油を一切使わずに調理をしています。
理由として、そもそも土に還りにくいという事や汚れの原因になること、油を落とすために洗剤を使わないといけないという要因に繋がるので、僕の料理は基本的に野菜を煮ることが中心です。そのまま土に還しても地球環境に害のない食生活、というところがベースなっています。
照明は、キャンプ用の電池式ランタンを使用していますが、ソーラーパネルで蓄電した電池を使って灯りを取り入れています。
足りない何かを購入をして使い捨てるのではなく、できる限り全てのことは循環してサイクルするデザインを作るように意識して考え生活をしています。」

汎用性や必要性のある身の回りの必需品やベストギアを教えてください。
「一番便利なのは、太陽光パネルバッテリーです!
これで全部の電気を作っているので、一度そのシステムを導入したら繰り返し自然の力を使って作る事ができる。これはものすごく重宝しています。」

・愛用バッテリー(suaoki PS5B)
・愛用パネル(中古145W)※商品参考
「もうひとつは、寝袋
マイナス気温対応のハイスペックのものを使っていて、一生使えるグレードを準備しました。
車中泊での生活は、睡眠の質の向上がとても大事で、体を十分に休めるよう意識することは最も重要なことだと思います。」

光の遮断とかはどうしているの?
「僕はあえてしてないですね。
というのも、自然のサイクルに自分の生活を合わせていて、明るくなったら起きて、暗くなったら寝るようにしています。
朝日とともに目覚める日々は気持ち良くて健康的、かつとても自然です。」

車での生活をはじめて1〜2ヶ月くらいで順応したという赤井さん。
8ヶ月間モバイルハウスで暮らしてきた彼が今欲しいものは?
「僕は、今”ホーム”が欲しいと思っています。
ハウスがあるけどホームがない。そういう感覚があって・・・・
僕は、生活を見つめたいと思ってモバイルハウスをはじめたけれど、もちろん今も生活ではあるけど、”旅暮らし”だなと思っていて____旅をしたいわけではなくて暮らしたかったから、もっと暮らしに近いものをしたいなと今感じています。
旅と暮らしの違い、それは、ホームなのかもしれない。そう思いました。
今、新しいホームの形を計画していて、そのホームが形になった時にまた僕はそこでどんなことを感じるのかなってワクワクしています。」

生活冒険家としてモバイルハウスでの生活を選択した赤井さんに、今回は災害時に突如車中泊をすることになったらどうすれば快適に過ごせるのだろう?というライフハック的観点から様々な質問に答えてもらったけど、もっともっと彼に聞きたいことは人生観など他にもたくさんありました。
旅をするように人生を生きる彼にとって、一体”ホーム”とは何なのか?
いつかゆっくり、その旅と冒険のストーリーを聞ける日が今から楽しみです。
私は今回を機に、早速ソーラーパネルとバッテリーを常備し、犬たちも共に休める大きなサイズの寝袋に見直し、自分の周りに小さなサイクルを作ってみることにしました。
日頃の生活を見直すことで、有事の時にも強い自分になれる。
そして、いざという時、その強さは家族や犬を守ることへ繋がると感じました。
赤井さん、ご協力をいただきありがとうございました。


赤井成彰(Nariaki Akai)
生活冒険家。
モバイルハウス”Toby”と共に新しいライフスタイルを探す旅の途中。
モバイルハウスに住まいながら全国の面白い場所、人、食を探して生きる。
2019年9月30日発売、Cal Vol.30巻頭特集VAN LIFE「旅をするように生きる」(徳間書店)に掲載中。
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Photo:Kenta Jufuku
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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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