こんにちは、enkaraの井手香織です。私は、2019年5月5日にリリースした”犬を知る”をアップデート!をミッションに活動するenkara(エンカラ)の代表を務めています。enkaraは、犬と人のより良い未来の形の実現を具体的に目指すプロジェクトです。今までの”犬との当たり前”がアップデートされ、新たな気づきが生まれることで飼い主の行動が変わり、犬と人が、より豊かな関わりで本質的に繋がり共に社会で生きる姿を目指しています。この記事では、「保護犬、余剰犬、譲渡犬」をあえて細分化して表現しているenkaraの考えとスタンスをお伝えします。
遺棄される犬をゼロにするために
私は、生まれた時から犬と共に暮らし、自分自身のパートナーとして犬と暮らしはじめてからは約20年が経ちました。犬との暮らしは日常的なもので、逆に犬のいない生活を想像することが出来ません。
はじめてのパートナードッグ(コーギーペンブローク)はペットショップから、2頭目の犬(コーギーカーディガン)はシリアスホビーブリーダーから、3頭目の犬(ミニチュアダックス)は動物愛護センター収容犬を保護団体経由で、4頭目の犬(トイプードル)は友人が運営する保護団体がブリーダー崩壊現場から保護した繁殖引退犬を、5頭目の犬(カニンヘンダックス)は知り合いから譲渡犬として迎えました。今まで5頭の犬たちと共に暮らして来ましたが、今振り返ると様々な出会い方がそこにありました。
どの出会い方が正しくて、どの出会い方が間違っている。そういう議論をここでしたいとは思いません。
それぞれの家族にとって、それぞれの出会いや想いがあり、それは全て尊重されるべきものだと私たちは考えます。どの出会いも尊いものであることに変わりはなく、そして出会いという一瞬のスパークよりも共に暮らす日常がどれほど貴重な時間なのか、きっと犬と暮らす全ての人たちがそれを知っていると思います。
一番大切なことは日々の時間です。その一瞬一瞬が犬たちとの幸せの時間の蓄積で愛おしいものです。
その前提で、私たちは様々な理由から<遺棄される犬をゼロにしていきたい>。そう思っています。
遺棄と譲渡は大きく異なります。絶妙なニュアンスに感じるかと思いますが、犬にとって大きな大きな違いがそこにあります。
”幸せになるためにこの地球に生まれ、健康的に犬らしく犬としての生涯を全うする。”
この流れの中に、「遺棄された犬(保護犬)」はいません。「譲渡犬」は、「遺棄された犬(保護犬)」とは似て非なるもので、別の課題や問題があると考えていますが、良い仕組みを作ることができれば上記の目的「幸せになるためにこの地球に生まれ、健康的に犬らしく犬としての生涯を全うすること」を犬たちが果たせると考えています。
保護犬と余剰犬、そして譲渡犬のこと
「保護犬ってなんですか?」
聞かれることが多いこの質問。複雑ではありますが、保護犬を細分化すると大きく2種類に分けられると思います。そこに譲渡犬が加わります。一般的には、新しい家族を探す必要のある犬をまとめて保護犬と表現しますが、私たちenkaraは、「保護犬と余剰犬と譲渡犬」は大きく異なると考えておりその経緯によって分けています。
商用利用の流通サイクルに関わりがないことを前提とした、野犬や野良犬・譲渡犬など新しい飼い主を必要としている犬たちや、保護すべき犬たちの総称。平成29年度に全国施設センターに収容された全ての犬たちの内訳は、年齢別だと仔犬2割:成犬8割と、そのほとんどは1歳以上の成犬です。多くは野良犬や野犬で遺棄されており、その犬たち(保護野犬)こそが本当の意味で現状日本では最も保護が必要なため、「保護犬」だと考えています。見分けるポイントは、基本「雑種」であること。
最近、ペットショップで売れ残ってしまった犬や問題があり流通ルートに乗ることができなかった犬を「保護犬」とリラベルして販売しているケースも見受けられます。その結果、保護犬だけれど不思議と誕生日や生い立ちが明確なこともあります。その犬たちは保護犬と一般的には言われていますが、enkaraでは「余剰犬」と分けて表現をしています。
所謂、営利目的のルートの中で生まれてしまった保護する必要のある犬たちのことです。ただし、余剰犬を救っても多くの場合その枠にまた新たな犬が配置され、そしてまた余剰が繰り返される事実があり、繁殖業者や引き取り屋などが関わる「保護犬ビジネス」が横行しているのもこのカテゴリのため、十分注意が必要です。見分けるポイントは「純血種、クロスブリード種(純血種×純血種)」であること。
個人間のやり取りで飼育継続が不能になった犬を譲渡するケースもあり、その犬は保護ではなく双方の意思を確認し譲渡を行います。 個人間譲渡の際は「無償」です。最近は、WEBサイトなどを利用し、譲渡が成約するケースも増えています。見分けるポイントは「飼育困難になった一般の飼い主が新しい飼い主を探している」こと。
保護犬・譲渡犬マッチングサイト
2017年、保護犬を家族へ迎えたい人が、将来家族に迎える予定の犬たちにどんな条件を求めているのかをサイト内アンケートに答えて、理想の犬を探し出すマッチングサイトがアメリカでリリースされました。その後、日本でも数多くの保護犬・譲渡犬マッチングサイトがリリースされています。ただ、保護団体が仲介管理する保護犬や余剰犬と、個人が継続飼養が出来ずに愛犬の新しい家族を直接探す譲渡犬が混在しており、犬によって譲渡条件が全く異なるためマッチングには注意が必要です。犬の愛らしさに惑わされず、その譲渡背景を入念にチェックしてください。
●ペットのおうち(日本)
●OMUSUBI(日本)
短期的な課題解決だけで考えれば、「ペットショップに行かないで余剰犬の家族になろう!」という運動を広めることで、余剰犬を迎える家族を増やす方向へアクションをすることになるのかなと思いますが、それだけでは本質的な問題解決に繋がらないと考えています。
そもそもマッチングサイトの運営は法人企業ばかりなので、ビジネスとして持続可能なサービスを追求することを考えれば致し方ないのかもしれませんが、目的に対してフォーカスされておらず、日本の場合、個人的に非常に残念なサービスが多い印象です。
目指すべき方向へ
犬と暮らす時に、一番理想的な社会の仕組みは___健やかな環境で育つ母犬や父犬、責任を持って繁殖を行う犬舎やブリーダーに敬意を感じ、健康的に生まれてきた仔犬を大切に譲り受け社会化し、人生を共に歩むこと。だと現状、私たちは考えます。そして、飼い主のいない犬の家族になりたいと考える方は、保護野犬や譲渡犬を譲り受けること。その2つの経路が今の日本では一番安心です。
ただこれは、夢物語なのかもしれません。でも、その世界が訪れたなら、きっと最愛なるパートナーに出会うことなく生涯を終える犬たちや、尊厳なく痛みや空腹に耐え日々生きる犬たちもゼロに近くなると思うのです。とは言え、ここにも犬を使った悪徳ビジネスを行う人たちや企業が多く存在します。
ブリーダー、犬舎だからと言って信頼できるわけでもなく、すべての問題を解決するわけではありません。日本の場合、責任を持った繁殖を行う国際水準のブリーダーや犬舎は残念ながら極めて限定的です。
enkaraは、効果的に犬たちの流通に対して何ができるのか。よく学び、よく聞き、よく見て、よく感じ、よく頭を使って考えて行動し続けたいと思います。そして、その未来を子どもたちへ繋げていく活動を継続して行います。
近年、自治体や行政が運営する動物愛護センター等の施設では、処分から新しい家族を探す方向へ少しづつシフトしています。センター独自の施策や譲渡会も多く見られるようになってきました。ただ、都市部と郊外など残念ながら地域性もあるようです。現にとある地方自治体では収容犬の情報がいまだ非公開の地域もあります。
そもそも大前提となりますが、「保護犬はかわいそう」という気持ちや想いを持つことはその犬たちにとって、あまりにも失礼です。生い立ちの違い。ただそれだけです。過剰な特別視や感情的な行動は犬にとって良くありません。犬はどんな状況であっても「今」を生きています。そして、犬は何歳になっても順応・適応し、犬として犬らしい生涯を開花することができます。その犬たちの側で共に過ごせる人間という生きものは、いつも幸せです。
まとめ
冒頭に戻りますが、enkaraは、犬と人のより良い未来の形の実現を目指すプロジェクトです。今までの”犬とのあたりまえ”がアップデートされ、新たな気づきが生まれることで飼い主の行動変化が起こり、犬と人がより豊かな関わりで本質的に繋がり共に生きる姿を目指します。そのために犬を知るをアップデートし続けます!行動は知り、学んだ先に必ずあるからです。
だからこそ、今までの当たり前や慣習を全て疑います。なんで??どうして??その意図は??常に疑問視して、わからないことを1つづつ考えて、具現化していきます。その先に、きっと犬たちと共に暮らす理想的な社会の形があると強く信じています。
このプロジェクトを成功させるためには、犬を愛する多くの方の知見や力、繋がりが必要です。様々なサポートの形や関わっていただける場があります。ぜひ、日本の犬の流通の現状に対して興味・関心がある方はenkaraメンバーに加わって活動をしていただけたら嬉しいです!enkaraは、いつでも多くのご協力とご支援を希望しています。皆さんで保護犬を減らし、むやみやたらに余剰犬に加担せず、譲渡犬を優しく選択する。そんな世界観を作っていけたらと思います。
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