犬のワクチン接種 〜”ワクチンを打つ”ということ〜狂犬病予防接種と混合ワクチン接種を考える

           

毎年犬たちへ行う狂犬病予防接種、定期的に接種する混合ワクチン。飼い主の責任として多くの方が接種されていると思います。では、なぜ?改めて何のための予防接種なのでしょうか。ワクチン接種により、毒性を弱めた病原体(生ワクチン)、または死滅させた病原体やその一部(不活化ワクチン)を体に入れることで、抗体(免疫)を作らせることができます。あらかじめ免疫をつけておくことで、実際に感染したときに発症しない、もしくは重症化を防ぐことができます。春の予防接種の前に、今回は意外と知らないワクチンについて考えてみたいと思います。

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犬が受けるワクチンの種類

日本では、法律で義務化されている「狂犬病予防ワクチン」と、任意で接種する「混合ワクチン」の2つに分けることができます。それぞれのワクチンについて特徴を見ていきましょう。

狂犬病予防ワクチン

日本では狂犬病予防法に基づき、毎年1回、飼い犬へのワクチン接種が法律で義務化されています。
狂犬病は犬だけの病気ではなく、人を含めた全ての哺乳類が感染します。そして発病すると治療方法がなく、ほぼ100%死亡する極めて危険なウイルス性の人獣共通感染症です。しかし1957年以降、日本での狂犬病の発症はありません。では60年以上もの間、発症例がないにも関わらず義務化されているのは何故でしょうか。

私たち日本人にとっては、狂犬病は身近な存在ではなく過去のものという感覚が強いと思います。しかしながら、オーストラリア、イギリス、スカンジナビア半島の国々など一部の地域を除いて、ほぼ全世界においては現在もなお、毎年発生しています。(情報:厚生労働省)日本の検疫体制がしっかりと整っているとはいえ、今もアクティブに世界的に発生しているウイルスです。国内に侵入する可能性を100%否定することはできません。しかし万が一、狂犬病ウイルスに感染した動物が国内に入ってしまったとしても、現在ほぼ全ての犬が狂犬病ワクチンを接種しているおかげで蔓延することはありません。

日本では、60年以上にわたり法を遵守してきた犬と暮らす飼い主のモラルによって、狂犬病に怯えることなく安心して暮らせている事実があります。さまざまな議論はありますが、自分本位な考えではなく、歴史的背景や現状を認識し、まわりの犬や人が安心して暮らせるよう愛する犬たちの社会的地位向上なども考えて、義務と責任を果たす必要があります。そして、接種が義務化されている狂犬病予防ワクチンですが、持病がある、副作用の経験があるなどの場合は接種が猶予されます。高齢や既往歴など、体調が心配な方は積極的に獣医師に相談することも可能です。

混合ワクチン

接種するワクチンの種類や接種スケジュールなど、判断が分かれる部分ではありますが、今回は世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインに沿って見ていきたいと思います。

混合ワクチンは、狂犬病予防ワクチンとは異なり任意ではあるものの、コアワクチンの対象となる4つの感染症に対して現状特効薬はなく、感染後の死亡率が非常に高いものです。この4つの感染症に対して感染を防ぐには、ワクチン接種以外の方法はなく、全ての犬が接種すべきと位置付けられています。
一方ノンコアワクチンとは、住んでいる地域や生活スタイルによって感染のリスクが高い場合は接種することが推奨されています。温暖な地域に住んでいる、または山や川などのアウトドア、ドッグランへ行く機会の多い犬は、その状況に合わせ接種した方が良いとされています。

混合ワクチン接種の前に抗体検査を受けよう!

狂犬病予防ワクチンも混合ワクチンも、毒性が弱い(または死滅している)とは言え、毒を体に入れることには違いありません。そのためアレルギー反応などの副作用が出るリスクも考えなければいけません。副作用のリスクを減らすひとつの方法として、免疫力の一部を調べることができる”抗体検査”があります。血液中の抗体の数値(抗体価)を調べることで現在の免疫力を知ることができ、必要に応じたワクチンを見極め接種することが可能になります。
ノンコアワクチンについては、抗体持続期間が短く、病気と抗体価との相関性はないと考えられており検査によって必要の有無を判断することはできませんが、コアワクチンに対してはワクチン接種の有無を判断する上で非常に有効な検査です。都内数か所の動物病院を調査した結果、費用と所要時間は概ね次の通りです。

費  用 ¥7,000~¥9,500(診察料・ワクチン代は含まず)
検査結果 当日~2週間

外部の検査機関に検査依頼をする病院と、検査キットを使用し院内で検査を行う病院とで検査結果までの日数に開きがあります。また、健康診断と同じタイミングで検査できる病院もあるなど、病院によって対応もさまざまです。抗体検査については、かかりつけの病院にお問合せ下さい。

ワクチン接種の注意点

ごく稀ではありますが重い副作用であるアナフィラキシーは、接種直後~1時間ほどの間に発生します。動物病院が遠い方などは、すぐに帰宅せずしばらく病院の近くで様子を見ることをお勧めします。また、顔面浮腫や消化器症状などの副作用が発生した際、迅速に処置してもらえるよう、ワクチンは午前中に接種することも重要です。接種後、ワクチン接種の効果を得るまでには2週間ほどかかります。ペットホテルやドッグラン等へ行く予定がある場合は、体調面も考え余裕を持って接種しましょう。

まとめ

ワクチン接種は、愛犬を感染症から守るため、更には私たち人間にも感染を広げないためにとても大切なことです。どのワクチンを接種したのか、そのワクチンは何の感染症に効力があるのか、私たちがきちんと理解しておくことが結果として愛犬を感染させない行動に繋がります。そのためにも、信頼できる獣医師との連携や、かかりつけ動物病院の存在は重要です。みんながあたりまえのように接種しているワクチンでも、個々によって状況は異なります。普段から相談できる、飼い主も愛犬も信頼して通える病院で納得のできるワクチンの接種を受けることが、犬たちにとって何よりの安心材料であり、ワクチンとの向き合い方なのではないかと私たちは考えます。


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