《犬との暮らしを考えた時に》犬と家族になること〜家族と出会った元野犬たち〜 #2 田村さん&りん

現在日本には多くの野犬たちがいます。
動物愛護センターや保健所では、野犬を捕獲し今まであまりにも多くの処分を行ってきました。
ただ近年、動物愛護や福祉の観点から、大切な命を家族へ繋げていくために社会化を行い譲渡を促進する動きが高まっています。
「保護野犬を家族へ迎えたい」と考えている方をはじめ、「これから犬と暮らしてみたい」という方や多頭飼育を検討中の方へ___多くの日本人に届けたい保護された元野犬と暮らすご家族のインタビュー。野犬の個性や存在を知っていただくために連載でご紹介します。
写真を通じ月日の中で移り変わる犬たちの表情の変化と共に、心の変化を感じていただけたらと思います。野犬こそ日本で緊急に保護譲渡が必要な保護犬です。全ての野犬たちが家族と出会い、心地よい環境のもと、生涯あたたかく過ごす未来へ繋がることを願います。
第2回は、鹿児島県徳之島で生まれた元野犬のりんちゃんとご家族(大阪府在住)のお話です。

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りんちゃんとの出会いについて

田村さん:「先代犬がいた頃から”保護犬”に関心を持つようになりました。(先代犬は迷い犬で、飼い主を捜しましたが飼い主が現れず、そのままうちの家族になりました)
いろんな保護団体さんのブログを見ていた時、うちの近くにも保護団体さんがあることがわかり、特にここの保護団体さんのブログをよく見るようになりました。

先代犬が亡くなり、犬を迎えるならこの保護団体からということで、2020年2月23日の譲渡会に出向き、りんちゃんとの出会いがありました。
その日、譲渡会に気乗りのしなかった夫がりんちゃんに一目惚れ状態でした笑

翌日から始まったトライアル期間。
初日に私はりんちゃんに咬まれ、私を見ては唸っていました。
怖くて怖くて触ることもできず、保護主(保護団体の代表)さんから『食べることが大好きな犬なので”おやつ作戦”をしてみては?』とアドバイスを頂き翌朝から取り入れたことで、その日の夜初めてお腹を見せてくれました。
トライアルは基本的に2週間ですが、その間に夫が咬まれることもあり、期間を延ばしてもらい結局1ヶ月かかりました。その1ヶ月のトライアル期間に夫は4回咬まれましたが、それでも夫は『りんちゃんがいい!』と言い張り、正式に家族となりました。」

※写真は、譲渡会の時のもので「フェリス」は一時預かりさんが付けてくれた仮ネームです。

りんちゃんが一時保護されていた保護団体さんを選んだ理由

田村さん:「最初、個人で保護活動をされていることに驚きました。
発信するブログを見ているうちに、保護団体さんの犬に対する考え方、一時預かりさんへの接し方、一時預かりさんが預かっている犬に対しての関わり方などを知ることができ、なんと気持ちがあたたかいのかと感銘し、共感しました。

ブログでは逃走してしまった犬のことなども赤裸々に書かれてあり、ブログを見た人たちの意見や思い、そんなことも削除することなく載せてあり、誠実な姿勢を感じるこの保護団体と関わりを持ちたいとの思いから、『今度犬を迎えるならここから』と心に決めていました。

ー昨年に搬送チームのボランティア募集があり、今はその一員としてお手伝いもしています。
搬送チームというのは、トライアル先へのお届けや離島から引き出した時の空港へのお迎えです。
犬たちは離島から大阪へ飛行機で来ます。その時は、バゲージボランティア(※)さんに運んでもらいます。それと今年からですが、月に一度ある譲渡会でりんちゃんも同行してハンドラーのお手伝いをしています。」

※バゲージボランティアとは?
犬のみを貨物として空輸すると多額の輸送費がかかりますが、航空機利用者がその方の手荷物として犬を同機で委託することで空輸経費を抑えることができ、航空会社からのケージ貸出サービスも受けることもできます。ボランティアでその委託を行うボランティアです。飛行機を使う全ての方ができる野犬の譲渡に関わるボランティア活動とも言えます。

犬と暮らしたいと考えたときに、なぜ野犬を選択したのか

田村さん:「りんちゃんのことは最初”野犬”という認識がなくて、”保護犬”という認識でした。
りんちゃんが家族となってインスタをするようになり、保護犬には野犬や保健所に持ち込みされる犬、繫殖引退犬、放浪犬(飼い主が名乗りでない、迷子)など様々な背景があることがわかりました。
りんちゃんもブログでは一時預かりさんが”野犬”と表現されていましたが、『なぜ野犬を選択したのか?』と訊かれたら、【保護犬を迎えたかった】という意識だけで、りんちゃんはたまたま野犬だったという感覚です。」

りんちゃんと暮らし始めて2年半。今までを振り返って、どんなことを感じるのか

田村さん:「りんちゃんが捕獲されたとき何頭かの赤ちゃんと一緒に捕獲されたようで、トライアルでうちに来た時、痩せた身体で(初めて動物病院に行った時にも”もっと太らせてあげてね”と言われました)毛艶はなく体臭もあり…お散歩は顔を上げることなく、鼻先を道路に向けて食べ物を捜しながらのそんなお散歩だったので拾い食いには気をつけていました。

当初寝るときは、身体を丸めてることが多かったです。
りんちゃんは推定5歳で捕獲されて、出産も1度や2度ではないと思うし、その時の赤ちゃんはちゃんと育ってるのかなとか思ってみたり…その都度、栄養は赤ちゃんに取られてりんちゃんの身体はぼろぼろになってたんかなとか…りんちゃんを見ていて、野犬としての過酷な暮らしぶりのことを思うことが多々ありました。

お散歩で犬が木の実やバッタを食べることも私にとって初めての経験でした。
一度、弱った雀を咥えたことがあり、その時は『ひぇ~!!』でしたけどね___
そんなりんちゃんも身体を触られるのが心地よくなったのか『触って~、撫でて~』と自分から身体を持ってくることも多くなり、甘えてくるようにもなってきました。
夫には甘えに行くことも多くなりましたが、夫がすることに気に入らないことがあれば今だに歯を剝きながら向かっていくことがあります。
そんなりんちゃんを叱るのは私なんですが、『あかんやん!』の一言で私に対しては歯を剥くことなく平常に戻ります。

りんちゃんとはコロナ生活が始まった頃、家族になりました。
コロナが広がり出したからといって家に籠ることなく、りんちゃんとお散歩に行き、空を見上げたり、雑草と呼ばれるような足元のお花に目が留まったり、時には雨が降る中のお散歩でも季節の移り変わりを感じる日々を過ごしてきました。
りんちゃんが楽しくお散歩している姿は見ていて私も嬉しいですし、世の中がコロナであっても豊かな時間が過ごせていることに幸せを感じます。

けどお散歩で出会う他の犬には歯を剝いたり、小学生には跳びかかろうとしたり、ほうきで掃き掃除してる人には吠えることもあります。なので、そういうことが前もってわかった時は近寄らず、避けてのお散歩をしています。
これはりんちゃんの性格上、気の強さから攻撃性として表面化していますが、りんちゃんがひとりで暮らしていた過程でのトラウマからくるものなのではと思っています。

こういうことを<野犬だから>ということに結びつける人もいると思いますが、野犬だからいってどの犬も攻撃的かといわれればそうではなく、怖がりの犬もいれば天真爛漫な犬もいて、その犬の性格なのだと思います。
外ではこんな面もありますが、うちの中では無駄吠えすることも吠えることもなく、玄関に人が来たら廊下でフセして待ってたりと、おりこうさんなところもいっぱいあります。」

保護野犬を家族へ迎えたいと考える方へメッセージ

田村さん:「先日、一時預かりさんの自宅から”預かり中の犬”が逃げ出しました。
必死の捜索の結果、無事保護に至りましたが個人的に気をつけるのは、やっぱり逃走かなぁと思います。逃走してしまったら、逃げ出した犬も迎えたご家族もお互いに不幸になってしまう可能性が大きいのではないでしょうか。
我が家の場合、トライアル期間は家の中にいる時もハーネスとリードを付けたままにしておくようにと言われました。トライアルが終わり正式に家族へ迎えたら”首輪とハーネスには目立つように必ず電話番号を記入する”ようにとも言われてます。
今もりんちゃんは、首輪とハーネスに私の携帯電話を入れ、家にいるときでもハーネスを付けてます(お散歩ではお散歩用のハーネスをつけるので2つ装着しています)。
保護犬だから、野犬だからといって気をつけることはあっても、そんな犬との信頼関係さえ築ければ(なかなか時間がかかったりすることもあると思いますが)可愛さや愛おしさが溢れてきて、かけがえのない存在になることまちがいなし!そう思います。」

田村さんにとって”犬と家族になること”とは?
同じ人間ではなく、犬から学ぶことはいっぱいで、人間の生活そのものに豊かな彩りをプラスしてくれるものかなぁと思います。

編集部です。保護当時5歳と言われたりんちゃん。人間に換算すると35歳前後になります。
大人になるまでに自然と身につけた性格や性質を変化させることは、自分に当てはめて考えた時にとても難しいことだと分かります。
さらに慣れ親しんだ環境から遠く離れた都心。全く異なる環境下で、人間が作ったルールに沿って社会で暮らすことに慣れるには時間がかかって当然だと感じます。
ただ、保護野犬たちは自分でサバイバルを生き抜く強さやしなやかさを確実に持ち合わせています。その適応能力や柔軟性が働き、時間はかかっても信頼の中で「ここは安心な居場所」だと認識するでしょう。その背景と個性に一貫して向き合うことができる深い愛を持ち合わせる人たちが、保護野犬の家族として大切な要素なのではないかと、そう感じました。田村さん、貴重なお話をありがとうございました。
りんちゃんは、#PloggingDogアクションのアンバサダーを努めていただいております。
お散歩にプラスオン!犬と一緒にゴミ拾い活動を今後も一緒に広めてまいります。

▶︎#PloggingDogアクション(WEB)

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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。 最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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