《犬との暮らしを考えた時に》犬と家族になること 〜家族と出会った元野犬たち〜 #5 山下さん&しろ

現在日本には多くの野犬たちがいます。
動物愛護センターや保健所では、野犬を捕獲し今まであまりにも多くの処分を行ってきました。
ただ近年、動物愛護や福祉の観点から、大切な命を家族へ繋げていくために社会化を行い譲渡を促進する動きが高まっています。
「保護野犬を家族へ迎えたい」と考えている方をはじめ、「これから犬と暮らしてみたい」という方や多頭飼育を検討中の方へ___多くの日本人に届けたい保護された元野犬と暮らすご家族のインタビュー。野犬の個性や存在を知っていただくために連載でご紹介します。
写真を通じ月日の中で移り変わる犬たちの表情の変化と共に、心の変化を感じていただけたらと思います。
第5回は、香川県で生まれた元野犬のしろ君と暮らすご家族(香川県在住)のお話です。

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しろとの出会いについて

山下さん:「しろは、香川県の中讃保健所から【さぬき動物愛護センターしっぽの森】に収容されていた保護犬です。センターでは『2中-D811』という番号と『しろ』という名前が付けられていました。
センターに収容されたのは生後3ヶ月頃。どこでどんな母犬から生まれて、どこで育って、どんな経緯でセンターに収容されたのか知りません。
2020年12月20日にしっぽの森の譲渡前講習会を受講し、その後の譲渡会に参加してしろに出会いました。

譲渡会に行く前は、『茶色っぽい女の子がいいな』と思っていて、参加するとまさにそんな仔犬が元気に走り回っていました。
でも、その元気な仔犬たちのうしろでサークルにもたれてボーっとしている少し大きめの白い仔犬がちょっと気になり、抱かせてもらいました。
抱かれてもボーっとしていて、こんな引っ込み思案な仔犬は誰にも貰われないのではないかと思い、『この子にします』とセンターの方にお伝えしました。

当時、すでに2頭の犬とたくさんの猫がいて、その事をセンターの方に伝えたところ、『今いる犬や猫を大切にするのも立派な動物愛護活動ですよ』と言われました。
なので、うちはきっと審査で落とされるだろうと思っていて、譲渡してくださるという連絡を受けた時はとても嬉しかったです。
そして、2020年12月26日、うちの子となりました。

なぜ?犬と暮らしたいと考えたときに野犬を選択したのか?

山下さん:「野犬を選んだという思いはあまりありません。
特に飼いたいと思う犬種があるわけでもなく、『犬』が飼いたかったのです。
小さい頃から、犬や猫に囲まれて暮らしてきました。今まで、たくさんの犬や猫と暮らしていて、それぞれに性格があって個性があるのはわかっていたので種類や出身にこだわりがなかったのです。」

香川県さぬき動物愛護センター「しっぽの森」に対してどんな印象を受けましたか?また、香川県民は犬との暮らしを考えた時に「しっぽの森」へ行くことは一般的ですか?

山下さん:「他の保護施設に行ったことがないので比べることはできませんが、施設はきれいですし、職員の方は犬や猫が好きで一生懸命お世話してくださっている印象です。
事務室の中に犬がいることもしばしば見かけます。
しろを迎えに行った時、職員の方が首輪をつけながら『大きくなったなぁ』と優しく話しかけてくださっていたのが印象に残っています。
譲渡会に参加する前に必ず受講しなければならない譲渡前研修では、知らなかったことや鑑札と注射済票の必要性などを教えていただきました。
お迎えに行く時は、キャリーケースと首輪、リードを用意するように言われていましたが、段ボール箱でお迎えに来ている方がいて驚きました。」

山下さん:「譲渡後1年はイベントがあり、他の飼い主さんに会ったり、しつけ相談ができる機会がありましたが、その後はありません。できれば、しっぽの森卒業生が定期的に集まる事が出来るような交流会を開催してくださったらいいなぁと思います。

保護犬・猫に興味がある人は『しっぽの森』を知っているとは思いますが、そうではない人にはあまり知られていないのではないかと思います。
もしかすると、香川県の殺処分数が全国1位であることを知らない香川県民は多いのかもしれません。なので、犬を飼いたいと考えた時『しっぽの森』を第一選択とする人は多くないと思います。
ペットショップもいたるところにあって、『仔犬フェア』の”のぼり旗”が立っていたりします。だからこそ、『しっぽの森』出身の犬を飼っている私が『しっぽの森』出身の犬を飼うという選択肢があることを伝えていけたらいいのかなと思います。」

今までを振り返って、どんなことを感じますか?

山下さん:「そもそも、犬を飼いたいと思ったのは散歩をしたかったからです。
犬はみんなお散歩好きだと思っていたら、しろはまさかの散歩嫌い。散歩に行くための首輪やハーネスは寝ころんだまま装着する毎日です。それでも、飼い主の散歩につきあってもらって、季節の移り変わりや草花の成長、空の色の変化を感じることができています。」

山下さん:「しろを飼い始めた頃はできないことが多すぎて、もっとしっかりしつけをしなければいけない、と思っていました。
そんな頃、しっぽの森で卒業生の同窓会がありました。
他の犬が出来ることをしろは出来ないこともあるけど、他の犬が出来ないことをしろが出来ることもありました。それを見ていて、しろはしろのままでいいんだと気づくことができました。
今は、毎日しろにお見送りとお迎えをしてもらって、それだけで満足です。」

保護野犬を家族に迎えたいと考える方へのメッセージ

(左:初日の様子、右:最近のしろ)
山下さん:「今まで何頭も犬を飼ってきましたが、しろほどビビりな犬は初めてです。
その犬の性格もあるとは思いますが、元野犬、元保護犬と呼ばれる犬たちは何かしらトラウマのようなものを抱えているのかなと感じます。
しろも、ちょっとしたことに驚いて走り出すこともしばしばあります。仔犬の時に、前から歩いてきた男性に驚いて崖のようなところを走り下りてしまったことがありました。
呼んでも止まらない、走っても追いつかない…。
この時は、しろがひとりで家の前まで帰っていて事なきを得ましたが、血の気が引く思いでした。他にも、何かに驚いて急に引っ張り首輪がすっぽ抜ける、飼い主が転倒する、来客に驚いて塀を飛び越えそうになる、どこかへ行くとおもらしをする等もありました。」

山下さん:「飼い主も学習して、散歩の時のダブルリードのひとつはショルダーリードにする、散歩用首輪は指が一本入るくらいのきつめにする、鑑札と迷子札をつける、ハーネスにも迷子札をつける、家の中でも迷子札付きのチョーカーをつける、などの逸走防止対策を取っています。
自転車は怖いのに頭上を飛ぶヘリコプターは怖くない、男の人は怖いのに若い女の人には寄っていく、散歩は嫌いだけどドッグランは好き。観察をしているといろんなことがわかってきました。
怖くて近寄ることが出来なかった人や物から逃げなくなった、病院に行ってもおもらしをしなくなったなど、少しずつ変化してきています。

おやつなども家の外ではほぼ食べることが出来ません。それどころか初めて食べるものはすぐに食べません。『しろはおかあさんに何でも食べたらいかんって言われたんやなぁ、ちゃんと言いつけを守ってるんやね』と、しろの前で食べる(フリをする)と食べたりします。」

山下さん:「急には、改善しなくても少しずつ慣れて、いつのまにかできるようになっています。そのゆっくりとした変化を楽しみたいし、楽しんでもらいたいと思います。
母犬と父犬が分からないということは、どのくらい成長するかもわかりません。しろの場合も、成犬時は15~20㎏程度になるだろうと伝えられていましたが、今は約25㎏まで成長しました。『こんなはずではなかった!』と思わずに、成長したらどんな犬になるんだろうと楽しみするくらいがちょうどいいと思います。」

山下さんにとって”犬と家族になること”とは

犬から見た”犬の世界”には飼い主しかいない。
生まれてくる子が親を選べないように、犬も飼い主を選べない。
だからこそ、その犬の一生に責任を持つこと。
犬が幸せになるかどうかは飼い主次第であることを知って行動することだと思います。

編集部です。香川県は、2019年3月10日「さぬき動物愛護センターしっぽの森」を開所し、動物愛護管理の普及啓発や収容動物の譲渡をより一層進めることにより、殺処分数の減少に取り組んでおり、譲渡数は全国3位です。それでも最新数値によると愛護センター収容数は全国ワースト2位、殺処分数は全国ワースト1位___そもそも犬は繁殖力が高く爆発的に地域に野犬が増えます。そこに「温暖な気候」という野犬が住みやすい条件が重なり、香川県をはじめ四国地方の野犬の数はなかなか減りません。
野犬こそ日本で緊急に保護譲渡が必要な保護犬です。
「さぬき動物愛護センターしっぽの森」は、下記条件をクリアできれば犬の個性や状況にもよりますが、他府県からも犬を譲り受けることが可能な貴重なスタンスの愛護センターです。全ての野犬たちが家族と出会い、心地よい環境のもと、生涯あたたかく過ごす未来へ繋がることを願います。山下さん、貴重なお話をありがとうございました。

さぬき動物愛護センターしっぽの森」譲渡前講習会及び譲渡会日程
・毎週水曜日 14時〜
・毎週日曜日 10時〜
各10組定員

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