犬と家族になること 〜家族と出会った元野犬たち〜 #6 谷川さん&ハナ

           

現在日本には多くの野犬たちがいます。動物愛護センターや保健所では、野犬を捕獲し今まであまりにも多くの処分を行ってきました。ただ近年、動物愛護や福祉の観点から、大切な命を家族へ繋げていくために社会化を行い譲渡を促進する動きが高まっています。「保護野犬を家族へ迎えたい」と考えている方をはじめ、「これから犬と暮らしてみたい」という方や多頭飼育を検討中の方へ___多くの日本人に届けたい保護された元野犬と暮らすご家族のインタビュー。野犬の個性や存在を知っていただくために連載でご紹介します。写真を通じ月日の中で移り変わる犬たちの表情の変化と共に、心の変化を感じていただけたらと思います。野犬こそ日本で緊急に保護譲渡が必要な保護犬です。全ての野犬たちが家族と出会い、心地よい環境のもと、生涯あたたかく過ごす未来へ繋がることを願います。第6回は約15年前、京都動物愛護センターから迎えたハナちゃんとご家族のお話です。

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ハナちゃんとの出会いについて

谷川さん:「ハナとの出会いは、2007年10月5日金曜日。犬嫌いの夫を説得し、一緒に京都動物愛護センターの譲渡会へ行き、生後2ヶ月のハナに出会いました。当時、保健所に持ち込まれた成犬は全て殺処分。猫は仔猫も含め全て殺処分で、譲渡されるのは仔犬だけでした。今のように保護犬や保護猫を迎えるということがほぼ無い世の中で、保護団体も少なかったと思います。」

なぜ?犬と暮らしたいと考えたときに野犬を選択したのか

谷川さん:「ハナが野犬の仔犬だったからではなく、犬を飼うことを反対していた夫が数頭いた仔犬の中から昔飼っていた犬に似ていたハナを選んだからです。」

京都動物愛護センターから迎えた理由は?どんな印象を受けましたか?

谷川さん:「犬好きの祖父が、テリアやダルメシアンなどドッグショーのチャンピオン犬の血統の犬を飼っている環境の中で幼少期を過ごしました。私が子どもの頃は 知り合いのところで生まれた雑種犬をもらって飼っている家が多く、田舎でダルメシアンやテリアは珍しくて、良い血統の犬は祖父の自慢でした。

私が、学校の帰り道で捨て犬を拾って帰ると『戻してきなさい』と言われ、泣きながら元の場所に戻したことを思い出します。昔のことですから捨て犬も多く、そんなことが何回かありました。ある日、保健所の車が捨て犬や野良犬を捕まえて連れていくところも見ました。”保健所へ行ったら殺される”と聞き、幼心に本当に恐ろしかったです。

家にいる犬と捨てられた仔犬は何が違うのか____子どもながらに疑問を抱き、大人になったら絶対に殺処分になる犬を飼いたい!1頭でも救いたい!と強く思っていたので、迷わず【京都動物愛護センター】から迎えました。今、京都動物愛護センターは京都駅の近くにあり明るくきれいで楽しい場所ですがハナを迎えた15年前は山の峠にあり、まさに殺処分場というイメージで殺処分になった犬や猫の魂を慰める慰霊碑が記憶に残っています。」

今までを振り返ってどんなことを感じますか?

谷川さん:「犬嫌いだった夫は、ハナのことを”犬の天使ハナちゃん”と呼ぶようになりました。ハナを大切にする夫を見て私自身も夫を信頼し、本当の意味で家族になれたんだと思います。ハナが寂しい日や悲しい日が1日も無いように、毎日幸せであって欲しいと15年間毎日願って、何があっても絶対に守る。ハナを産んでくれたお母さんにいつ見られても堂々と『あなたの大切な娘さんは幸せですよ、安心して私たちに託してください』と言えるように心がけています。ハナという存在が私たち夫婦にとって何にも変えられない宝物なんです。あの日ハナを迎えて助けたつもりが、助けられてたくさんの幸せをもらいました。」

保護野犬を家族へ迎えたいと考える方へのメッセージ

谷川さん:「もし犬を飼うことを考えておられるなら、どうか保護野犬を選択肢の1つとして考えてください。人気の犬種の仔犬がどんどん生産される一方で、未だに殺処分は続いています。全てがそうではないけど、悲惨な犬生を送る繁殖犬がいることも知ってもらいたいです。『ペットショップへ行ったら売れ残ってかわいそうだったから』という優しい方もいらっしゃると思います。ですが、その犬がいたケージには、すぐにまた違う犬が入ります。殺処分と同時に、必要以上に仔犬を産ませることをどこかでストップできたらと願います。」

谷川さん:「どんな犬でも悪い犬はいません。心を閉ざしてしまっていたり、恐怖から攻撃的になったり、逃げようとするかもしれないけど、それはその犬が悪いのではなく元を辿れば全て人間が原因なんです。毎日のように一緒に散歩するお友だちに野犬で問題になっている山口県周南市の保健所から来た1歳の成犬がいます。何を見てもパニックになり、散歩することすら出来なかった犬が、恐怖や不安の中で飼い主さんと一緒にひとつひとつ乗り越えて頑張る姿を見ていると、『元野犬だってちゃんと家族になれるんだ』と教えてくれているように感じます。」

谷川さんにとって”犬と家族になること”とは

私にとっては自然なこと、だけど神様からの特別な贈り物のような毎日

編集部です。「2007年当時、保健所に持ち込まれた成犬は全て殺処分。猫は仔猫も含め全て殺処分で、譲渡されるのは仔犬だけだった」という谷川さん。今から約16年前、その頃の日本は今よりもっと殺処分が一般的であり、その事実を知らない人たちも多かったように記憶しています。例えば環境省が例年発表する統計資料によると2007年は【犬の引き取り数129,937頭に対し、返還譲渡数29,942頭、殺処分数98,556頭】でしたが、最新の2020年は【犬の引き取り数27,635頭に対し、返還譲渡数24,199頭、殺処分数4,059頭】でした。犬の引き取り数自体そもそも大きな違いはありますが、この16年間で行政による殺処分数は、約96%減少したとされています。それでもなお、犬の流通に関して様々な問題が時代によって浮き彫りになります。今私たちはどんな命を知るべきなのか、そして選択できるのか____改めて考える時が来ていると思います。谷川さん、貴重なお話をありがとうございました。

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