犬にオーガニックなヴィーガンフードを 〜毎食 ”高タンパクな食事” は本当に必要なのか?〜

           

オオカミを祖先にもつ犬は、従来、動物性タンパク質を中心とした食事が良しとされてきましたが、近年の研究で、長い時間人間と生活を共にし、食生活も大きく変化したことから、いろいろな素材からアミノ酸を取ることがより良い犬の食事であることが分かってきました。動物性タンパク質をあえて減らし、健康を持続させるために必要な栄養素を良質な食材から取り入れることを重視し、いろいろな種類のアミノ酸をバランス良く摂取できる食事に変えることが、現代のパートナーにとってベストであると考える合同会社ナパーニジャパン代表 加藤氏より犬にオーガニックなヴィーガンフードを勧める理由を伺いました。

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犬に毎食 ”高タンパクな食事” は必要なのか?


ー なぜ動物性タンパク質をあえて減らし、健康を持続させるために必要な栄養素を良質なプラントベースから摂り入れることを重視しているのでしょうか?

犬狼が祖先だから、動物性タンパク質を多く摂るべきだという通説は根強く伝えられ続けていますが、成犬には、肉などの動物性たんぱく質は35〜45%しか必要ないと考えており、ドイツでの動物の栄養に関する研究による推奨事項(※1)の1つでもあります。
また、オオカミと比較して犬には遺伝的に変化があり、肉食ではなく雑食ということもその理由です。炭水化物の分解に関与する酵素アミラーゼの生産に関しての遺伝子研究によると、犬はオオカミよりも最大28倍活動的であることがアメリカ国立衛生研究所によりわかりました。(※2)

犬の祖先である狼は確かに肉食動物ですが、野生の狼(または野生の犬)は、時に1日に100kmも移動をすると言われ、それだけ運動をしながら食事にありつけるのは、激しい狩を行った末、ようやくありつけた餌のみです。その餌も、毎日朝夕得られるわけではありません。だから、彼らは高タンパクな食事を、生きるために必要とするでしょう。
現代の犬たちは、家庭犬として安全な家で過ごし、朝夕の数キロ(または数百メートル)のお散歩運動のみ。そして、朝夕の食事は寝ていても確実に与えられます。
それでも、毎食”高タンパクな食事”は必要でしょうか?

また、シニア(7歳以上)のパートナーには、肝臓や腎臓のトラブルもよく聞かれます。
私たちは、主たる原因はタンパク質の過剰摂取によるものと考えています。シニアになると、内臓の機能が徐々に低下してきます。そのため、過剰なタンパク質は肝臓や腎臓に負荷を与えてしまいます。ナパーニでは成犬になると、肉や魚などの割合を35%の食事を推奨しています。(※3)

犬にヴィーガンフードを取り入れること


アレルギーや内臓疾患のあるパートナーにとって、動物性タンパク質を摂らない「除外食」は、非常に有効な対策になります。動物性タンパク質は、犬にとって有益な栄養素ではありますが、問題は先に説明したように過剰摂取にあります。
タンパク質は肝臓で分解され、そこで作られたアンモニアが腎臓で尿になって排出されます。つまり、タンパク質を摂るだけで、肝臓と腎臓は働くことになるのです。
必要以上に摂取されれば、必要以上に臓器は働き、やがて疲弊して疾患という形で問題を起こします。一方、タンパク質は重要な栄養素であることは間違いありません。そのため私が考えるのは、腎機能低下の影響が少ないといわれる植物由来のタンパク質の摂取が大切ですということです。
そのためヴィーガンフードを摂ることによって、肝臓や腎臓への負担を減らすことができる
と考えます。また、肉のアレルギーが発生しているパートナーも多く、ヴィーガンフードで食肉以外から必要なタンパク質を補うこともできます。
ヴィーガンフードだけでは、犬の健康を害するのではないかと疑問を抱く方もおられるかと思いますが、実際に、ヴィーガンフードのみを与えられたハスキーの健康状態は、肉を食べているハスキーと健康上の差は見られなかったという研究レポートも存在します。(※4)
ただし、ヴィーガンフードのみを毎食与える場合は、サプリメント等でヴィーガンだけでは補いきれない栄養素を補給する必要はあります。

「オーガニック」を重要視する理由


オーガニックであることは、ナパーニの理念の1つに過ぎませんが、オーガニックが大事であると考える理由は、2つあります。1つはパートナーの健康のため。もう1つは、地球環境にとって良いフードでありたいと考えているためです。
オーガニックは畜産であれば、成長ホルモン・抗生物質・遺伝子組み換え・農薬を使った農作物を材料とした飼料が使用されていません。さらに、飼育環境も配慮されて、健康に育っています。
また農作物は同様に、化学肥料・農薬・遺伝子組み換え作物など使用されておらず、化学肥料を何年も前から使用していない安全な土壌が条件です。
犬が健康を害する理由として、食べ物を通して、農薬や抗生物質などから受ける影響も大いにあると考えています。特に胃腸への負担や、薬を分解する臓器である肝臓や腎臓への負担、免疫力への影響は無視できません。
人間よりも、体が小さく寿命も短いパートナーたちはその影響を非常に受けやすく、早くから症状として現れます。そのため、それらの有害な物質を、毎日の食べものから摂取するリスクを、オーガニック食材にすることによって、軽減することができます。

企業責任として”肉の量を控える”のはなぜか?

企業の責任としてできる限り環境への負荷が少ない食材を積極的に取り入れ製造時も、カーボン・ニュートラル(※5) な方法を選択することはナパーニの社会への責任だと考えています。
例えば、地球上の総土地面積の45%が畜産に使用されており、種の絶滅、水質汚染、生息地の喪失、世界の海のデッドゾーンと言われる低酸素海域の増加の主な原因の一つと言われています。
地球上では1時間ごとに600万頭以上の動物が屠殺されています。そのほとんどは大量飼育の畜産動物です。畜産用の敷地作りや家畜用の飼料となる作物を育てるために、毎秒約4,000㎢もの熱帯雨林が伐採されています。
さらに、1kgの牛肉を生産するために、約15,000リットルの水が必要です。世界の水資源の約3分の1が農業や灌漑作物に使用されています。
ペットフードで使用する肉の量を控えることは、少しでも、大量生産の食肉を減らすことにつながり、ひいては、大切な資源を守ることに繋がります。


出典・参考
※1 ベルリン自由大学の動物栄養研究所のJürgenZentek教授の著書「犬の栄養」(第8版、エンケ・バーラグ)より
※2 National Library of Medicine 2013年3月21日発表(WEB
※3 Vitalblutdiagnostik bei Tieren, Dr. med. vet. Peter Berger sen. & Tierarzt Peter Berger jun., 1. Auflage, Semmelweis-Institut
※4 MDPI Vegetarian versus Meat-Based Diets for Companion Animals 2016年発表(PDF
※5 カーボン・ニュートラルとは、事業活動等から排出される温室効果ガス排出総量の全てを他の場所での排出削減・吸収量で埋め合わせする取組です。自らの責任と定めることが一般に合理的と認められる範囲の温室効果ガス排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部を埋め合わせた状態。環境省(カーボン・オフセットフォーラム)より(WEB

【プロフィール】

合同会社ナパーニジャパン 代表
加藤 善久
1972年生まれ 愛知県出身
ディーゼルエンジンのエンジニアとして長年自動車会社に勤務、世界的な大気汚染を食い止めるため、研究を重ねた。世界を飛び回る日々を送る中、ドイツ滞在中にドイツに嫁いだ妹の義理の姉ウルリケヒルシャワー(オーガニックペットフードnapani創設者)よりnapaniの日本販売を勧められ、それをきっかけにドッグフードの調査を開始。
napaniの品質の高さを認識するとともに世界全体の自然環境の保全を意識したコンセプトに惹かれ、一念発起し、2019年 合同会社ナパーニジャパンを設立。研究者の視点で、犬の健康、栄養学を学ぶ日々。
[文・構成/enkara編集部]
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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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