犬と家族になること〜ブリーダーから迎え家族になった犬たち〜 #2 大川さん&ケイ(前編)

           シリアスブリーダー, ダルメシアン

様々な背景や環境、理由があって犬種を生み出し、その種を改良し守ってきたことで世界中には、非公認犬種を含めて700〜800の犬種があるといわれています。国際畜犬連盟(FCI)により公認された355犬種のうち、日本では一般社団法人ジャパンケネルクラブが206犬種*を登録しており、それぞれ異なる魅力に溢れた個性を持っています。(*2022年4月現在)だからこそ犬との暮らしを考えた時、多くの方は思い描く憧れの犬種があります。ただ、約25年前に始まった日本独自のペットオークション流通の影響を受け、現在消費者は憧れの犬種と出会いたいと考えた時、ペットショップで店頭に並ぶ仔犬の中から迎えることが一般的です。そもそも仔犬の生体展示販売は倫理的にも問題があり、また余剰犬など多くの犠牲の上で成り立つ仕組みであることから諸外国では禁止の方向へ規制が始まっており、日本でも早急に見直しが必要とされています。では今後どのように、思い描く純血種と出会うことが最も健康的なのか?
実際にブリーダーや犬舎から直接家族へ迎えたご家族インタビュー連載。はじめて犬と暮らす方も、多頭飼育を考えている方も____これから犬を迎えたいと思う全ての方へ読んでいただきたいリアルな声。第2回は、ブリーダーから家族へ迎えたダルメシアン、ケイ君(7歳)とご家族のお話を前後編でお届けします。本記事は、前編です。

SPONSORED LINK

ケイくんとの出会いについて

大川さん:「ケイのことを知ったのは、自分の年齢を考えて保護犬を迎えたいと考えている時期でした。私は40代前半で夫は50代後半。仔犬ではなく成犬でご縁があればとも考えていましたが、飼い主に求められる条件なども考えるとなかなか決め手がないまま数年経っていた頃、知人から『付き合いのあるところでダルメシアンが生まれてまだオーナーが決まっていない子がいる』と連絡がありました。それが、たまたまケイのブリーダーHappy Angel Hillsさんでした。

夫に何気なくそんな話があったよ、と伝えましたがまさかあんなに真剣に考え始めるとは思っていなかったんですよね(笑)。私は設計事務所を自宅横で運営しており、現場や打ち合わせで外に出ることも多く、主に世話をするのは自宅が仕事場である夫になるだろうとは思いましたし、庭もなく超都心のど真ん中でダルメシアンサイズの犬を飼うことはちょっと想像しづらかったのです。

ところが次の週、Amazonから『犬の飼い方』『社会化について』の和訳本が届き、なんとなく家の整理をし始め、周辺環境を撮っているのを見て”こりゃ本気だな”と思ったのを覚えています。2週後にはブリーダーさんに連絡をし、会いに行く約束を決めていました。後から知ったのですが、夫は子どもの頃、実家でダルメシアンを飼っていた経験があったのも、本気になるきっかけだったのかもしません。」

ブリーダーから直接譲り受けようと思った理由

大川さん:「ブリーダーさんは、私にとってはダルメシアンと暮らす上で様々なことを教えてもらえる先生でもあり、一緒に考える同士でもあると感じています。相談できる相手がいることは何より安心ですし重要なことです。
実家ではシェルティを2頭、最期まで(主に母が)自宅で介護して看取りました。同時に猫もいましたし、そこそこ動物を飼うことに慣れた家族だと思いますが、今思っても犬種の特性や飼うことについて学んだ記憶はありませんでした。とても大切に愛された実家の2頭ではありましたが、シェルティは牧羊犬のルーツを持つ犬種。その特性を考えて接していれば、『なんで吠えるの!なんで追いかけるの!』と叱ることもなく、もっとよい関係で暮らせたのではないかと切なく思うことがあります。

ちょっと話がズレるようですが、私自身は設計事務所を主宰しています。家づくり、店づくりのスタート前に、もっと勉強できる場があればと思いスタートアップのセミナーを続けています。家は3度建てたら失敗しなくなるなんて、そんな話は勿体ないですよね。これからずっと暮らす家ですから、思いついたらパッと買っちゃう!決めちゃう!ではなく、もっとじっくりと考え学び、自分にあう暮らしを考えてから得る方が良いと思うことと、動物と暮らすことを考えるのは、似ているところがあるかもしれません。」

選択した犬舎の決め手は?

大川さん:「そんなこんなでケイと出会う前はブリーダーの意義も、それに違いがあることも分かっていませんでした。その後知ることになる”私は本当にラッキーだった”という出会いの大切さもわからないまま、たまたまのご縁でケイをHappy Angel Hillsさんから引き受ける機会を得たわけです。

Happy Angel Hillsさんは、極めて真面目にダルメシアンという犬種を大切に考えているシリアスブリーダーです。私はここからケイを譲り受けたことが本当にラッキーだったし、そうじゃなければ今だによく分からず犬の表面的なかわいさだけを大切にしていたかもしれません。

『ドッグショーは見た目だけで争っているのかな』くらいにしか深く考えていませんでしたが、会場に行くとすごく勉強になります。犬種の特性、スタンダードの大切さは、全てその犬の健康に繋がっていて、その先、飼い主と犬、一対一の暮らしを楽しくより平穏に過ごすための知識なんですよね。何を持ってジャッジされているのかを知ると『犬が何を考えているのかな』とか犬の内面も見えてきて、気持ちの繋がりが増えることを学びました。

どの業界もそうですが同じ業種の看板を出していてもやっていることの中身、重んじていることは大きく違います。外からはなかなか真意は見えてきませんが、日本においても動物を飼うという重要な場面において、飼い主側から進んで勉強して、知ることがもっともっと必要だと感じています。私も日々、勉強です。」

ダルメシアンの魅力と迎えた理由

大川さん:「ダルメシアンはあの柄から見た目重視の犬と思われますが、ルーツは馬車の先導犬。あの柄は泥で汚れても目立つから♪いくら走っても疲れないスタミナも納得ですよね。瞬発的に早く走ることより、トロトロと人と並走して長く走ることが得意なのも納得です。よくいえば繊細、悪くいえば神経質だと表現されることが多いように思いますが、ケイは基本的にのんびり、おおらかです。年下犬の面倒も好きで、いまだにドッグランでは小さい犬とわちゃわちゃします。」

大川さん:「町を散歩していると『ダルメシアン飼ってみたいんですよね。お散歩大変ですか?毛は抜けませんか?』と声をかけられることがありますが、速攻『簡単に飼えるタイプの犬(なんてどこにもいませんけどね)ではないですよ。ペットショップでは絶対に買わない方がいい犬種ですよ。毛は年中抜けまくりますよ』と伝えています

実際に、散歩は朝晩1.5時間ずつ行きますし、毛は年中抜けまくります。主人は元々潔癖症を自称していますが、今では床の毛を手で集めてはダイソンで吸う”床お掃除妖怪”と私に呼ばれていて、その成果は”奇跡のダル家”と呼ばれているくらいきれいです。

毛をまき散らして常に清潔に保ちやすいので、シャンプーの回数は少なくても犬臭くなりづらいです。普段の手入れは比較的簡単。でも家は掃除しなければ毛だらけ。でもそれが幸せ。そう思える方には良いと思います。」

大川さん:「ケイは、3ヶ月でうちに来た次の日から犬の幼稚園に通って他の犬との付き合い方を学びました。中央区にはフリーのドッグランがあるのですが、都心での犬との暮らしは犬との距離感の取り方を知った方が良いと考えてのことです。必ずしも犬同士が仲良くなる必要があるとは思っていません。大切なのは、飼い主と犬との関係です。

その犬の個性や飼い主の暮らし方によるかと思いますが、私たち、特に夫に関していえば、犬を通じてワンワンパトロールのボランティア活動を続けていますし、犬友だちと良いご近所付き合いができています。ケイがいなければできなかった繋がりが、多々ありました。」

大川さん:「次もダルメシアン、もう一頭ダルメシアン、私もついついそんなことを考えてしまいますが、自分の年齢や体力、暮らし方を考えるとそれは叶わないかもしれません。ですが、ダルメシアンのことはずっと特別枠で応援していきたい素晴らしい犬種だと思っています。」(後編へ続く


編集部です。「犬との暮らしを考えた時に、犬と家族になること 〜ブリーダーから迎え家族になった犬たち〜」では、ブリーダーや犬種について、そして純血種を家族へ迎えたいと考える全ての方が経験者からの体験談をもとに学びを深めることを目的とした連載です。ブリーダーから犬を迎える流れを再考すること、それは即ち余剰犬、繁殖引退犬など商用利用される犬たちに向き合うことでもあります。また、本質的なブリーダーは必ず健康で穏やかな性格、性質を重んじることから健康的な犬との出会いを推奨するものだと私は考えています。消費者である私たちの立場で考えたとしても、固定概念を外せば、具体的に動けること、選択できることは無数にあります。長年の品種改良に思いを馳せた時、犬種を知ることは、犬を知ることでもあります。懸念すべきは、流通時の負の反復です。オフラインがペットショップ展示販売だとした時、オンラインとしてWEBブリーダーマッチングサイトが広がることで同じ過ちを繰り返さないこと。そのために消費者自身が《ブリーダーや犬舎を見定める知識と目》が必要です。大川さん、貴重なお話をありがとうございました。

instagram

▶︎一般社団法人ジャパンケネルクラブ ダルメシアン(6G:嗅覚ハウンド)2022年犬籍登録頭数332頭(38位)

《この記事を読んだあなたにオススメ!》
「犬を迎えたいな〜と考えている方へ」犬を迎えたいけど、家に来た後どんなことが待っているのだろう?どんな問題が起きやすいのだろう?心構えって必要なの? など、ワクワクな気持ちと同時に心配事も頭に浮かんでいると思います。犬を飼う前に気になること、不安なことをドッグトレーナーに聞いてみませんか?
enkaraMarket

「犬を迎えたいなぁ〜と考えている方へ」 犬を迎えたいけど、家に来た後どんなことが待っているのだろう? どんな問題が起きや…

関連記事

様々な背景や環境、理由があって犬種を生み出し、その種を改良し守ってきたことで世界中には、非公認犬種を含めて700〜800の犬種があるといわれています。国際畜犬連盟(FCI)により公認された355犬種のうち、日本では一般社団法人ジャパンケネ[…]

シリアスブリーダー, ダルメシアン
\enkara最新情報をチェック!/
 data-eio=VISION「私たちは循環する社会の仕組みを創る」" width="1280" height="768" >

VISION「私たちは循環する社会の仕組みを創る」

今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

CTR IMG