うちの犬ってどこから来たの?TYPE2 動物愛護センター

TYPE2 動物愛護センター

犬と暮らしていると「どこから迎えたの?」という愛犬家同士の会話は日常的です。その答えは、ペットショップ、ブリーダー、保護団体、愛護センター、友人から・・・など様々です。でも、そのもっと先、ペットショップ、保護団体、愛護センター、友人の元へ来る前は、一体その犬たちはどこにいたのでしょう?うちの犬って、一体どこで生まれて、どこから来たのだろう??
どんな道のりをたどって私たちの家族になったのか。
私たちは、日本に暮らし犬との暮らしを考えた時、実はどのように犬を迎えていたのか、日本の現状を知る場所、そして具体的に動ける場所を作りたいと思います。

現在、生体販売の流通過程で、年間約25,000頭の犬猫が死んでいると言われています。
今まで解決すべきは殺処分問題の比重が大きかったかも知れません。
ところが現在、犬に限っては殺処分が約8,000頭、流通死は12,000頭と逆転現象が起こっています。そのことから、私たちは日本の犬の流れを正式に発表されている数値をもとにニュートラルに可視化することにしました。もちろん、数値はあくまでも1つの指標にすぎません。この数値に入らない犬たちの存在も、そして数字の操作もそれなりにあると認識しています。ただ、まずはここから、せめて見えている場所の中からできることを皆さんと一緒に考えていきたいとそう思います。

前回TYPE1として、「野良犬と野犬」の現状を可視化しました。
今回は、「TYPE2 動物愛護センター」について学びを深めていきます。皆さんの“犬を知る“を一緒にアップデートしていきましょう!

 

動物愛護センターとは?

動物愛護(管理・指導)センターは、自治体が運営する行政機関です。 そして、動物愛護センターの説明をする際、欠かせないのは同じ行政機関の保健所です。 保健所は、地域保健法により総合的な保健衛生行政機関として設置されています。
参照:厚労省 保健所概要(PDF)

地域保健対策の推進に関する基本的な指針(PDF)

保健福祉事務所、健康福祉センターなど名称は地域によって違う場合もありますが、都道府県や市町村単位で存在し、保健衛生の幅広い業務を担当する存在です。
犬に対する業務は、昭和25年1月制定された「狂犬病予防法」に基づき、狂犬病まん延防止のための犬の拘留等や犬の登録・管理などがあります。

一方、動物愛護センターは、「動物愛護管理法」に基づき、保健所で行っている業務のうち、動物愛護や福祉の観点から、犬猫の収容・管理、譲渡、啓発などの部分を担っている、またはその全てを担う機関です。
設置目的は、各自治体によって様々ではありますが、動物に関する業務の拠点となる機関を設置することで、効率化を図る目的もあります。
また、令和元年6月19日に公布された「動物愛護管理法」法改正により、動物愛護管理センターの位置付けは下記の通り明確化されました。

以上の内容からもわかるように、保健所と動物愛護センターの大きな違いは、保健所は動物関連以外の業務も行っていることに対し、動物愛護管理センターは動物関連以外の業務を行わないことです。
ただし、そもそも動物管理センターの設置は、各都道府県や指定都市に委ねられていることから、どの機関がどのような業務を行うかといった業務の振り分けは地域ごとに異なります。

今回の「TYPE2動物愛護センター」は、その運営が行政ということもあり全て法律に基づき運営を行っています。そのため、センターの立ち位置を深く知るためにも、動物愛護センターが設置されるようになった背景に触れてみたいと思います。

▶︎昭和48年9月「動物の保護及び管理に関する法律」制定
▶︎平成11年12月「動物の愛護及び管理に関する法律」(名称変更)

保護から愛護という表現へ変更。 法律としては、動物取扱業の規制、飼い主責任の徹底、虐待や遺棄に関わる罰則の適用動物の拡大、罰則の強化など大幅に改正。 基本原則に「動物が命あるものであることにかんがみ」「人と動物の共生に配慮」等が追加されると共に、動物の所有者の責務等が強化され、動物取扱業に対し届出制が導入されるようになりました。 これに伴い各都道府県は、今までと異なる取り組みや業務が増えたことで、動物行政のあり方や仕組みそのものの見直しが必要になったのではないかと考えられます。

▶︎平成17年6月22日公布 平成18年6月1日施行(法改正)

参照:環境省 改正内容(WEB)

この法改正により、都道府県は指針に沿った施策を推進する計画を定めることが義務付けられるようになりました。各自治体で「動物愛護管理推進計画」がはじまり、法改正に沿った施策の見直しが行われました。

▶︎平成24年・令和元年、共に一部法改正

参照:環境省 動物愛護管理基本指針「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(PDF)

上記の抜粋からわかるように、日本における動物愛護に関する指針は、現在も模索している段階です。昭和48年に制定されて以来、時代の流れに沿ってその都度議論され、必要に応じ法改正されてきた背景があります。
国の指針が変わる度、それに合わせて各自治体の条例も変わり、その条例に準じる形で動物愛護センターの方針や業務も変化してきました。
これからも、その時代背景に合わせ様々な形へ柔軟に変化し、その時代の日本にふさわしい形で犬たちを愛護する存在であり続けることを願います。

動物愛護センターのおしごと

では一体、センターではどんな業務が行われているのでしょうか。
動物愛護センターや保健所での主な動物関連の業務については以下のような業務が挙げられます。全ての業務は、法律に沿い遂行されています。

・放置犬などの捕獲
・捕獲された犬の抑留、管理
・犬、猫の引取り
・収容犬の返還
・負傷動物の収容、治療
・動物由来感染症に対する調査研究
・犬、猫に関する相談、苦情の受付
・犬、猫の譲渡
・啓発
・動物取扱業の登録・届出受付および監視
・特定動物の飼養許可および監視 等

職員は、捕獲や返還、治療や調査、登録や教育など動物にまつわる幅広い業務を担当しています。年々減少傾向にあるものの殺処分業務もセンター業務の1つです。先述の通り、職員単独の判断ではなく、法律に沿ってその業務を遂行しています。
いわば、私たち日本に住む国民がその業務を選択し決定していることで、今も殺処分は行われていると言えます。

愛護センター内ではどんな人が働いているの?

センターは行政の機関のため、職員は各自治体の公務員です。(センターによっては委託を受けた企業や各団体も業務の一部を担当している場合もあります。) 公務員ではありますが、センターの休館日にも収容動物の管理や世話を欠かすことはありません。では、東京都動物愛護相談センター本所を例に挙げて職員の内訳を見てみましょう。

・狂犬病予防員(獣医師)17名
・狂犬病予防技術員 6名
・事務 4名

(数値参照:東京都動物愛護相談センター、令和元年事業概要)

狂犬病予防員は、狂犬病予防法に基づき、都道府県の地方公務員で獣医師である者の中から知事によって任命された人です。
狂犬病予防技術員が、その補佐的な業務を行います。
獣医師という国家資格を有する動物のプロフェショナルが、職員の半数を超えて在籍し、施設を運営する方針であることに信頼を感じます。

また令和元年に法改正された中に、以下の内容が新設されました。

新設された中にある「動物愛護管理担当職員」は、獣医師の資格を有する者が望ましい、または動物の適正な飼養及び管理に関し専門的な知識を有する者と明記されています。
専門的な知識を持つ職員が必ず在籍している動物愛護センターを全国各都道府県に設立し、公費で運営を行う日本の施設は他国と比べて大変充実しています。

では実際に、海外との環境比較をしてみましょう。

▶︎ティアハイム(ドイツ)
稀に公設の動物保護施設を有している自治体もありますが、その施設のほとんどは民間で運営されています。
施設ごとに違いはあるものの、費用の一部を州が負担するといった支援はあれど、運営費用のほとんどは寄付やスポンサー契約などで賄われています。
保護(野良犬など飼い主不明)から一定期間は行政の施設に収容され、その期間を過ぎるとティアハイムに移送されます。そこから新しい家族への譲渡までの期間の費用についてはティアハイムが負担します。
ドイツでは、犬との暮らしを考えた時にティアハイムへ行く文化が根付いており、譲渡率は90%以上、また、犬の譲渡費用は 約160€(約¥19,000)です。※ベルリンティアハイムの場合

日本との大きな違いは、新しい家族を探す犬、寄付金、ボランティアなどの人員など全てがティアハイムに集まることにより、大きなパワーで循環に繋がる譲渡が行われることです。
そして、何より「犬と暮らしたい」と考える人がどこから犬を迎える事が出来るのか、情報がシンプルであることも保護犬が譲渡に繋がりやすいポイントだと考えます。
ただ、ドイツの場合、規模の大きなティアハイム以外はドッグトレーナーによる譲渡のためのトレーニングを行うということが難しい一方、日本の愛護センターには、ドッグトレーナーがほぼ全てのセンターに在籍しているという点は評価が高いと言えます。

参照:特定非営利活動法人アナイス「平成 29 年度 ドイツにおける動物保護の取組みに係る調査業務 報告書」(PDF)

動物愛護センターピックアップ!!

現在、45の自治体に動物愛護センターがあります。
それぞれの施設は、その地域や風土、慣習に合うものが多く、様々な特徴や方針があります。
最近は、「命のふれあい教室」など子どもへ向けた啓発教育に力を入れているセンターも増加しており、犬の譲渡以外でも日常的に動物とのふれあいを目的として立ち寄れる施設が多くなっています。環境的に犬との暮らしができなくとも、センターに立ち寄れば犬とふれあうことが出来る施設も増えてきました。
今回は、その中から3つのセンターをピックアップします。

栃木県
動物愛護指導センター

一般開放された大きな芝生の広場が特徴的な施設は、開館時間内、自由に見学や利用ができます。譲渡対象の動物を見学出来るほか、動物の正しい飼い方についての展示や、動物に関する図書コーナーを利用することができます。また、小中学校の夏休み期間に開催する「動物愛護ふれあいサマースクール」なども行なっています。
さいたま市
動物愛護ふれあいセンター

小動物とのふれあいやお散歩体験ができるなど、いつでも気軽に遊びに行ける開放的なセンターです。地域に密着して動物愛護精神の普及啓発を図り、人と動物がより快適に共生できる社会づくりを目指した運営を行なっています。
京都
動物愛護センター

ドッグランやグルーミングルームなどを一般開放しており、夜間動物救急センターが施設内にあるなど総合的に充実した施設が特徴です。
また、子どもの頃から「動物との正しい関わり方」や「命の大切さ」について考えることは情操教育や人格形成の基盤づくりと考え、子ども向けの動物愛護教育の教材も制作しています。

いろいろな出会いの場を提供

動物愛護センターから犬を迎えたいと考えた時、施設で管理されている新しい家族を探す段階の犬の中から自分のライフスタイルに合う犬を探し、家庭へ迎え入れる方法が一般的です。

■愛護センターからの譲渡について
1.事前講習を受講
2.犬と直接ふれあう
3.面談・ヒアリング
4.犬を迎える

■譲渡費用
約1,000~5,000円

※畜犬登録料やマイクロチップ代などの実費のみの負担
最近、新たな試みとして独自の取り組みをはじめた自治体が増えてきました。
その目的は、事情があり共に暮らす事ができなくなった飼い主が、自宅で飼育している犬を自ら登録し、新しい飼い主を探す場所として提供するものです。
犬を捨てる前に救う仕組みを確立することで、遺棄の前の受け皿となり、飼い主は最後までその犬の命に対して責任を果たす事が出来ます。

罰則や禁止、そして非難ばかりではなく、命を繋ぐ仕組みとして地域に合わせ柔軟な形で譲渡が行われる仕組みが広がる社会を期待したいと思います。

数値から見る動物愛護センターの実績

平成30年、全国の愛護センターで何らかの経緯をたどり管理された犬の総数は35,719頭です。その内訳は、センターが捕獲した推定野良犬数20,655頭(58%)、迷子の返還11,338頭(32%)、飼い主から持ち込まれた3,726頭(10%)であり、犬の引き受けや迷子の管理と返還対応、野犬や野良犬の捕獲や管理、動物取扱業の登録などの業務の他にも負傷動物の治療や講習、譲渡会イベントなど多岐にわたる業務を行う中で、保護犬の譲渡対応を行なっています。 飼い主が現れ返還された迷子の犬を抜いて、センターが捕獲した飼い主がいない野良犬と飼い主から持ち込まれた犬の中から新しい家族へ譲渡に繋がった犬は、年間16,694頭であり、その譲渡率は68.4%と約7割の犬たちが新しい家族と出会い命が繋がった実績があります。
参照:環境省 動物愛護管理行政事務提要「犬・猫の引取り及び処分の状況」(PDF)

私たちは今回のリサーチの中で、流通という視点で動物愛護センターを考えたとき、大きな課題があると感じました。
それは、動物愛護センターは自治体によって管理頭数が大きく異なるということです。例えば住民が多い東京都(人口約1,399万人)の動物愛護センターにおける平成30年管理頭数は213頭。この記事を書くための数ヶ月に渡るリサーチの間、センターWEBサイトの譲渡事業ページに一度も譲渡可能な犬は掲載されませんでした。そうです、何らかの理由によって譲渡できる犬が施設内にいないのです。
一方、平成30年で最も管理頭数が多い香川県(人口約95万人)は、2,027頭。譲渡犬に対して、犬を飼いたいという希望者の不足などもあり、現状多くの殺処分が行われています。
愛護センターは自治体運営のため、基本的には居住地域の方のみが地域のセンターから譲渡犬を迎えることができるという規則を適用をしています。
住民数と管理頭数のアンバランスな比率に対して、柔軟に対応がなされ、仕組み化されることでマッチングに繋がり、殺処分数は低下するのではないかと感じました。
動物愛護センターは、犬をはじめ動物に向き合う唯一の行政機関として、日本に住む私たちの税金からその全ての運営が行われています。
現時点での取り組みや施策に課題がある場合、その意見は地域の自治体へ正しく伝えることで、議論を経て改正に向かうことを誰もが認識することが重要です。
文中でもお伝えしましたが、現時点での業務や取り組みは私たち国民がその方向を選択し、間接民主制により意向を託した代表による決定であり、民主主義のあり方が反映された形です。「捨てられた犬たちを処分する施設」という偏った認識だけではなく、私たち国民がこの恵まれた施設や環境を犬をはじめ動物たちへ適正に使うことができるよう、当事者意識を持って冷静に行動をする必要があります。

ある国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱いかたを見ればわかる
マハトマ・ガンジー

【参照】
環境省 自治体一覧(WEB)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/shuyo/link.html

環境省 法令・基準等(WEB)
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/rule.html
http://www.env.go.jp/council/14animal/yoshi14.html


Miyako
グラフィックレコーディング担当|外大を卒業後、総合商社で総合職として働きながら、グラフィックレコーディングのスキルを独学で習得。19年4月に武蔵野美術大学造形構想研究科への進学をきっかけに退職し、現在は大学院生フリーランスとして、持ち前の明るさとグラフィックレコーディングスキルを生かしながら、様々な分野での「見える化」の可能性やコミュニティ作りを追求中!