バリ島で行う動物保護のカタチ(前編)〜インドネシア バリ島在住 加納さん〜

動物保護のカタチは、国や地域によって大きく異なります。
その理由は経済や環境、教育や宗教観など様々です。
1つ認識をしておきたいのは”日本のカタチ”が基本でも標準でもないということ。
他の価値観を知ることで日本の動物保護も日本にあったカタチで変化を期待できるのではないか?
様々な国や地域で犬の保護に向き合う方たちのインタビュー連載がはじまります。
視野を広げることやイメージすることはどんなことでも大切だから。

プロフィール

第1回目は、インドネシア バリ島在住の加納さんご夫妻。
2016年からご夫婦二人で犬猫の保護活動を行いながら、現在預かりの犬(2頭)も含めて17頭と犬たちと共にバリ島で暮らしています。
記事は、前編と後編に分けてお届けします。今回は前編「加納さんが行う動物保護のカタチ」です。

前編:加納さんが行う動物保護のカタチ
後編:バリ島のリアルな動物保護事情とこれから目指す未来

いつから、なぜバリ島で保護活動を始めたのか

 

「活動を始めたきっかけは、2016年3月に我が家に迷い込んできた1頭の野良犬(ぱん)との出会いです。それまで私たち夫婦は動物と暮らしたこともありませんでした。
そして、その犬がバリ島で初めて家族に迎え入れる犬となりました。
当初は保護活動をするつもりは全くなかったのですが、その後怪我をした犬や助けを必要としている犬たちと次々に出会うこととなり、必然的に彼らの保護をする流れとなりました。」

実際にどんな保護活動をしているのか

 

「私たちの活動は基本的にはあくまで夫婦2人で完結できる範囲で留めるようにしていますので、他の方々のように“保護活動“と堂々と呼べるほどの事はできていないと思います。
『保護活動をしよう!』と言う意気込みを持って問題を探しながら取り組んでいるわけではなく、どちらかと言えば、せざるを得ない状況に常に置かれていてその対応に追われているというようなイメージです。
具体的には、自宅前や駐車場内に仔犬や怪我をした犬猫が次々に置き去りにされたり、遠方から持ち込まれ世話をするように頼まれたり、毎日のお散歩コースでそういった犬猫を発見したり、InstagramなどのDMを通し、新しい家族を探すよう頼まれたり…といったところです。」

「保護した後、まず動物病院へ連れて行き健康状態のチェックなど受けます。基本的な処置の後ワクチン接種、避妊去勢手術を行い新しい家族もしくは預かりボランティアを探します。
その間、怪我や病気の治療で入院が必要な犬猫以外は基本的に我が家で過ごしてもらいます。我が家は常に定員オーバーの状態ですので、どうしてももうこれ以上は家に入らないというときは、友人宅に協力してもらったり有料のペットボーディング施設を利用することもあります。
我が家での生活は、私たちの家族として共に暮らす犬と保護犬の間に区別をつける事はなく、食事、散歩、自由時間、就寝時の過ごし方など全て一緒に過ごさせ、犬社会を勉強してもらっています。」

保護活動の運営について

 

「大前提として私たちは団体ではないので、個人で出来る範囲内での活動をし、我が家で暮らす15頭の犬たちと自分たち自身の暮らしを優先するよう努めています。
活動資金は、当初は家計費から捻出したり貯金を切り崩したりしていました。
Instagramを通して支援を申し出てくださる方もたくさんいらっしゃったのですが、お金に関するトラブルが生じるのを防ぐため毎回お断りしていました。
レスキューが増えるにつれ治療費が高額になり家計が圧迫されるようになったことと、お声掛け下さる方々の数が増えたことから、『この方々の温かい想いを形にしてバリの犬猫たちに届けることができるのはここに在住する私たちしかいない、これが私たちの役割なのでは』と考えるようになりました。
現在は、表立って支援を訴える事はしていませんが、協力をお申し出いただいた場合はその方とのやりとりを通して適当と判断した方からのみ、ご支援金や物資をお預かりしています。人員は私と夫の2名です。」

保護から譲渡までの流れ

 

「保護と同時にInstagramへ状況をアップします。
大体がすぐに譲渡ができない仔犬や怪我や病気を患っている犬たちなので、譲渡まで待機時間がかかります。
SNSを活用する理由は、その間の様子を見ていただくことで譲渡率をあげられればという思いからです。
仔犬は2回の混合ワクチンと狂犬病ワクチンの接種を完了させることと、できれば避妊去勢手術までも済ませてから譲渡させたいと言う考えがあります。
都合上それが叶わない場合は、必ず新しい家族で完了させてもらうようにお願いしています。譲渡は無料です。」

保護した犬の譲渡に対する考え方

 

里親希望の方から連絡をいただいた場合、最初に下記の質問をします。

– Do you have a fully fenced and secure yard ?
– Do you have any other pets ? If so she what / how old / gender / breed ?
– Are your other pets fully vaccinated (Complete + Rabies).
– Are your pets sterilised?
– Do you have children? If so how old?
– Do you work full time? Is anyone home with the dogs during the day?

–完全にフェンスで囲まれた安全な庭はありますか?
–他にペットはいますか? もしそうならペットの種類/年齢/性別/品種は?
–他のペットは完全にワクチン接種されていますか(混合ワクチン+狂犬病予防ワクチン)。
–今、共に暮らすペットは避妊去勢手術を行なっていますか?
–子どもはいますか? もしそうなら何歳ですか?
–フルタイムで働いていますか? 日中は犬と一緒に家にいますか?

「また、ケージに入れっぱなしにしたり、鎖でつなぎっぱなしにしたり、放し飼い状態にしたりすることを禁じ、アパート暮らしの方は譲渡をお断りしています。
まずはこの質問にきちんと答えてくださった方、そしてお答えいただいた内容がその犬猫にマッチするかどうかを見て判断します。
例えば質問の中で先住犬猫がいる場合、ワクチン接種をしてあるかどうか又避妊去勢をしてあるかどうかといったことを聞きますが、これらをしていない場合、理由によってはお断りすることがあります。
一番重要なのは、犬猫に対する考え方だと思っています。
遠方でない限りは譲渡前にご自宅の環境をチェックさせていただくのですが、そこでご家族と面会し、十分な知識や経験また経済的安定や精神的余裕があるかどうか等を見させていただき決定します。」

人慣れしていない野犬を保護した時

 

「バリは、大体の犬が外で放し飼いにされているため、飼い犬と野良犬の区別がつきにくい状況にあります。そのため野良犬だからといって人に慣れていなかったりしつけが難しいと言うような事は一概には言えません。
それよりも、人から虐待を受けていたなどの理由でトラウマを抱えている犬が多いように感じます。私たちが過去保護した大体の犬は、最初は緊張や警戒をしている様子でも、私たちをはじめ、我が家でたくさんの犬たちに囲まれ生活しているうちにだんだんとその緊張が解けていき、穏やかな性格に変わっていくように感じます。
特別なトレーニングなど対応が必要な場合は、その犬の求める環境にあう譲渡先を選んだり、新しい家族と連携してトレーナーによる訓練を受けさせたりしています。」

譲渡の課題と現状

あたたかな家族との出会いへ

「バリ犬の譲渡は日本のそれ以上にとても難しく、譲渡の条件のレベルを保ったまま新しい家族を探す事はとても大変な作業になります。
これまでも理想的な譲渡が成功した例は何件かありますが、悔やんでも悔やみきれない結果になってしまったことも少なからずあり、譲渡後のケアや自分たちが抱える精神的なストレスを考えると我が家でお世話をする方が良いのではと考えることも多く、そのため我が家にとどまる犬の数がどんどん増えているような状態です。
譲渡の条件は、上記の通り私たち夫婦個人の感覚で設定しておりその部分で基準が高いため、譲渡が決まった後は、そのご家族のスタイルを尊重して大丈夫だろうという判断で特に諸条件など明確な決まりごとは設けておりません。
大体の場合、譲渡先のご家族から折を見て写真など近況報告をいただいています。」

保護譲渡以外の活動として過去約100頭の避妊去勢手術を行う

 

「地域における不幸な仔犬の増加を防ぐため、専門の医療チームと連携して不定期で自宅駐車場にて金銭的に余裕のない家庭の犬猫を対象とした避妊去勢手術イベントを行っています。
毎回4〜5人の獣医にお越し頂き、1回のイベントあたり20〜30頭の手術を行い、過去5回のイベントで約100頭の手術を完了させています。
その他必要に応じて、ワクチン摂取、避妊去勢、皮膚病薬の投与や場合によっては獣医に往診をお願いするなど、路上で暮らす犬猫たちのケアも行っています。」


前編では加納さんの動物保護のカタチについてお伺いしました。
異国で傷ついた犬たちへの保護活動をご夫婦二人で行うことは簡単なことではなく、加納さんの活動と情熱に対し、心から感謝を感じ、尊敬します。
また、いつも笑顔でポジティブな保護活動の発信は私たちに多くのことを感じさせてくれます。避妊去勢手術のイベント活動などを通じて不幸の連鎖に対し向き合う姿勢に触れて、地道な活動こそが改めて今後の未来のカタチを作っていくのだと思いました。