サウジアラビアの動物福祉や犬事情(後編)〜ダハラン在住 ピアース真実さん〜

           

動物保護のカタチは、国や地域によって大きく異なります。その理由は経済や環境、教育や宗教観など様々です。1つ認識をしておきたいのは”日本のカタチ”が基本でも標準でもないということ。他の価値観を知ることで日本の動物保護も日本にあったカタチで変化を期待できるのではないか?様々な国や地域で犬の保護に向き合う方たちのインタビュー連載。今回は、サウジアラビアです。視野を広げることやイメージすることは、どんなことでも大切だから。

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プロフィール

ピアース真実さん
第3回目は、サウジアラビア在住のピアース真実さん。
日本在住時から動物看護師兼グルーマーとして勤務をしながら国内外で動物保護活動を学び、その課題や問題に対して積極的に関わってきた真実さん。
2016年、サウジアラビアへの移住後も動物保護問題に様々なアプローチを行ってきました。現在は、ご主人さまと2018年に生まれたお子さまと一緒にサウジアラビアで暮らしています。記事は、前編と後編に分けてお届けします。今回は後編「サウジアラビアの動物福祉や犬事情」です。

前編:ピアースさんが行う動物保護のカタチ
後編:サウジアラビアの動物福祉や犬事情

動物福祉についての現状や課題

「サウジアラビアの動物福祉は課題が山積みです。
まず犬が嫌われているのが大きな問題ですが、嫌われていないはずの猫でさえ駆除される事が日常です。
コンパウンド(居住地)、スーパーマーケット、ショッピングモールなどは定期的に駆除を行います。その方法は毒殺、捕獲後に遠くへ放棄される事がほとんどです。害虫駆除の会社を定期的に雇う施設も多いです。

イスラム教の考えで“動物の避妊、去勢手術をやってはいけない“と信じる人がほとんどの為、数がどんどん増えすぎてしまい、その結果、数をコントロールする為に駆除をする、と終わりのないループを繰り返しています。
TNR活動(※)も現地の人には反対されるので、私も捕獲やリリースの際はお祈りの時間で人がモスクに向かう時間帯を避けるなど気を使っています。
保護活動をする人も、この国の習慣や文化を敬いながら行動しないと、通報されたり、国外に追放される恐れもあるので、どんなに納得ができないひどい場面に遭遇しても、冷静に対応する事が求められます。」

※外猫や犬を捕まえて、避妊去勢手術をし、元の場所に戻すこと

一般的な犬の迎え方と関わり方

「この国でももちろん犬が好きな人たちはいます。
人気犬種のジャーマンシェパードやシベリアンハスキーなどはペットショップに売られていますし、動物専門の市場もあります。
市場には行った事がありませんが、状態の良い動物はあまりいないようで、盗まれた犬や猫たちが売られている事もあります。

外にいる犬猫はペットという感覚はありません。
あくまでサウジアラビアの人にとってペットは血統書がある犬や猫の事です。
また子どものためにと小さな仔犬を探している人にはよく出会いますが、お世話が大変で、その後捨てられてしまう犬も多いです。」

サウジアラビア人が考える犬とは?医療や暮らしについて

「サウジアラビアでは犬は宗教上不浄なものと考えられている為、嫌われていて、害獣扱いで排除の対象です。私もこちらにきた当初は現地の方に『犬は危険で凶暴だから見かけても近づいてはいけない』と何度も言われました。 ただ、ペットショップにはジャーマンシェパードやシベリアンハスキーが生体販売されています。これらの犬は権力の象徴となる為、需要があるそうです。 野良犬たちは、銃で撃たれたり、毒をもられたり、虐待されることも非常に多いのが現実です。 また、動物病院で信頼できる獣医師を探すのは至難の技です。 動物保護をする人のために割引をしてくれますが、やはり足元を見られる事もありますし、まだまだ発展途上国レベルの医療で、手に入る薬なども限られているため、助けられたはずの命が助けられなかった事もあります。 もともと犬と暮らす人は少なかった為、犬用のフードはペットショップや動物病院に行かなければ購入できませんでしたが、最近では少しずつ、数は限られますがスーパーマーケットでも手に入るようにもなりました。質の高いフードは動物病院やペットショップで高額ですが購入することも可能です。」

サウジアラビアの子どもたちと動物の関わりの変化


「小さな頃から親やまわりの大人に犬が不浄で危険なものであると教えられている子は、どうしても犬たちを見ると石を投げたり、いじめてしまう事が多くなります。
猫を見ると反射で物を投げたり追いかけてしまう子たちを今まで何度も注意してきました。
そんな子たちには怒るだけでなく、どうしてそんなことをしてはいけないかを話すとわかってくれる子もいます。
毎日猫に餌をあげる私を見て、昔はいじめていた子たちも、今ではお気に入りの猫を教えてくれたり、病気の猫がいたら家に知らせに来てくれるようになりました。
将来、私みたいにどうぶつを助けたいと教えてくれる子まで出来ました。
子どもは柔軟です。
まわりの大人を見て良い方向にも悪い方向にも導く事が出来ます。
今は、残念ながら中東での子どもの動物への虐待が問題になっていますが、大人の働きかけから少しずつ変えていくことが出来ると期待しています。」

後編まとめ

後編では「サウジアラビアの動物福祉や犬事情」についてお伺いしました。文化や宗教観が違うと、その国の動物に対する関わり方があまりにも大きく変わることを今回お話を伺う中で強く感じました。またその価値観は、大人を通じて未来を創る子どもたちへ受け継がれていきます。
何がいいのか、悪いのか、私たちは異国からその国のことに対して意見することはできませんが、愛のある選択ができることで、心地よく全てのいきものが共存できる社会、世界であることを強く祈り願います。

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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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