高齢者とペットの問題に取り組む! 北海道苫小牧市社会福祉協議会が行う【犬猫一時預かり事業】とは?〜 後編 〜

高齢化社会の進む現代において「高齢者とペットの問題」は地域を問わず、日本各地で社会問題となっています。以前、この問題に対し行政としての取組みを始めた自治体として福岡県古賀市が行う【ペットと暮らすシニアの備えサポート制度】についてお伝えしました。
今回は、民間として全国に拠点のある「社会福祉協議会」の施策、北海道苫小牧市社会福祉協議会が2020年10月にスタートした【犬猫一時預かり事業】をご紹介します。
取材をさせていただく中で、ペットが取り残されてしまう状況や背景は、決して高齢者に限ったことではないのだと改めて考えさせられました。
【犬猫一時預かり事業】をはじめたきっかけや具体的なサポート内容、現状について、苫小牧市社会福祉協議会 地域福祉課の千寺丸さんにお話を伺いました。前後編に分けてお伝えします。
前編では、事業の開始以前から始動、事業内容についてお伺いしました。後編となる今回は、事業開始後の変化や今後の展望についてをお届けします。

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事業を始めて知った幅広い年齢層や状況の方からのニーズ

enkara:今までの預かり状況を教えてください
千寺丸さん:「犬猫一時預かり事業は2020年10月にスタートしました。
現在までのところ圧倒的に猫の方が多いです。今までの実績としては、猫が17匹、犬が3頭です。
猫の場合お一人で何匹か飼われているケースも多くて、今まで預かった中で1番多かったのは、1件で猫5匹です。このケースは短期入院される方でしたので、1週間ほどの期間お預かりしました。
その時は5匹をボランティア3人に分けて預かっていただきました。」
enkara:実際に事業をスタートしてみていかがですか?
千寺丸さん:「基本的には”高齢者が安心して暮らせる事業”ということでスタートしましたが、実際に蓋を開けてみると、高齢者だけではありませんでした。最近多いケースがDV被害による案件です。一時避難しなければならない中、ペットを飼われている場合はシェルターにペットを連れて行くことができませんので、その間だけ短期間預かって欲しいという要望がありました。もちろん、そういった場合も全て対応しています。」

ーー幅広い年齢層や状況の方からニーズがあるということですね。

千寺丸さん:「はい。やはりやってみないと私たちもどういったニーズがあるのか分からなかったのですが、実際に始めてみると色々なところから問合せがあります。
例えばご本人のかかりつけの病院はもちろんですが、1番多い問合せは市役所からですね。
”今日から猫をお願いしたい”とか、気軽に連絡いただくことは有難いのですが、今日から明日からと言われると、ボランティアを見つけることは本当に大変です。
ただ有難いことに、今のところは当日中に対応することが出来ています。」
enkara:事業についてどのように周知されてるのですか?
千寺丸さん:「市内にある大きな病院や、全ての動物病院には犬猫一時預かり事業に関するポスター貼らせていただいています。
実際に問合せや事前登録者が増えていますので、事業について目にする機会があることで、今現在ご自身が該当しなくても、もし何かあったらお願いしようと思っていただいているのだと感じています。安心して入院できる環境であれば治療に専念できますし、治るのも早いと思っています。」

良い方向に縁を繋いでくれる地域協力者の存在

enkara:飼い主は何かあれば自費でペットホテルやペットシッターにペットを預けたり、家族や友人宅にお願いすることが多いと思うのですが、こちらに依頼される理由はどんなケースなのでしょうか?
千寺丸さん:「苫小牧にはペットホテルがそもそも少ないんです。あるとしても動物病院で預かってもらうことが一般的です。ですが1泊5~6,000円かかるので、2週間入院すると6~7万にもなってしまいます。その費用を捻出するのは簡単なことではありませんので、入院を渋ったりする悪循環にもなり兼ねます。
また利用者の多くは家族がいなかったり、友人知人が少ないという方も多いので、ぜひ犬猫一時預かり事業をご活用いただきたいと考えています。」
enkara:スタートから1年弱が経過して、難しい点や困っていることなどはありますか?
千寺丸さん:「高齢者の場合、入院後に亡くなる可能性がどうしても他の年齢層より高くありますので、その場合の譲渡先を探す部分はやはり難しい点だと思います。
また、ペットの病気に気づかない飼い主も多くて、ボランティアに預けた時には既に病気になっていたという犬猫が多いんです。経済的な問題もありますので、その治療に対してどう向き合うかという所も難しい点ですね。
実は苫小牧市、胆振地区を兼任されている獣医師会会長にこうした状況を説明して何とか治療してもらえないかとお願いをしに伺ったことがあるのですが快く返事をいただきまして、『薬代だけで診察費はいらないから』とご協力を受けることができました。」

ーー皆さんのご協力があってこそ成り立っていくような形で、今繋がってきているのですね。

千寺丸さん:「そうですね。例えばこの事業を知った行政書士会の方が”知り合いの獣医師を紹介してあげるよ”と繋いでくださったこともあります。
皆さんに沢山の縁を繋げていただいて、今色んな人に面倒を見てもらっているような感じですね。
私たちが動くより前に周りがとても良い方向に動いてくれて、本当に有難いです。」

今後それぞれの地域が課題やニーズに対応し事業展開を

enkara:他の地域の社協でも今後こうした事業は展開されますか?
千寺丸さん:「同じような問題を抱えている地域は多いので、似たような形でスタートさせたいという問合せが、道内に限らず全国の市町村からきています。
資料は全てオープンにしているので、私たちの運営方法については全てお伝えしています。
問合せいただいたことで、事業をスタートした所も1ヵ所ありますので、今後はそちらと連携してお互いの困ったことなど情報交換をしながら進めていきたいと思っています。
そうすることで、また違うニーズが拾えたり、もっと良い事業になっていくのではないかと思います。」
enkara:最後に、今後目指している方向性やメッセージをお願いします
千寺丸さん:「色々な思いはあるのですが、一番は犬猫が悲しいことにならないよう、私たちも色んな関係機関にもっと周知しなくてはと思っています。
社会福祉協議会は様々な活動を行っていますので、一時預かり以外でもペットを飼っていることによって生活が苦しいようであれば、違う角度から力になることもできます。
その人が生きるために必要なものであれば、私たちはしっかりサポートします。
そういった面も知っていただけたらと思います。これをきっかけに、人間同士の繋がりができる形を願っています。」

後編まとめ

昨今、「高齢者は犬を飼うべきではない」「経済的余裕がなければ犬を飼う資格がない」という風潮が見受けられます。
確かに飼養には体力もお金も必要です。しかし、今当たり前にできていることが突然できなくなる可能性は誰しもにあります。そんな時に相談できる、対応してくれる場所があることは本当に心強い存在です。高齢化社会やコロナ禍での不安定な状況の中、全国に拠点を持つ社会福祉協議会が取組んでいるということに意義があるように感じました。
そしてこれで終わりではなく、より多くのニーズに応えようとブラッシュアップを続けている事業だからこそ、温かい輪が繋がっているのではないかと感じます。
私たち愛犬家も”排除”という視点ではなく、”共生”していくための視点を持ち、より良い繋がりが広がっていくことを願っています。

参考:
・苫小牧市社会福祉協議会「犬猫一時預かり事業」(WEB)

・社会福祉法人全国社会福祉協議会(WEB)

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