「動物愛護管理法」飼養管理基準 に関する省令等の公布! 〜 “数値規制” の施行へ向けて〜

           

令和2年10月16日から1ヶ月間、「動物の愛護及び管理に関する法律に係る省令案(飼養管理基準に係るもの)」について、パブリックコメント(意見の募集)が実施され、この結果を受け、1月7日に中央環境審議会から環境大臣に対して答申がなされ4月1日省令が公布されました!本記事では、改正される法律の内容についてポイントをまとめました。今回の法改正に”何を期待し何を問題とするのか”、ご自身の視点で読んでいただけたらと思います。

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今回の法改正についてのポイント

〈対象範囲〉
・犬猫を取り扱う事業者全般
ペットショップ・繁殖業者・ブリーダー・グルーミングサロン・ペットホテルなど、第1種動物取扱業者(営利)の届出をしている全ての事業者・事業所の他、保護譲渡団体等の第2種動物取扱業者(非営利)も全て対象。

〈施行期日〉
・令和3年6月1日から施行
※令和元年に改正された「動物愛護管理法」は、施行時期が3段階に分かれており、1段階目の適正飼養のための規制強化に続き、今回は第2段階目の施行。

〈改正案の内容とポイント〉
・犬の適正な飼養管理基準が具体化
「犬の飼養に関して具体的に数値を決めて、これを守るべき基準としましょう」ということ。数値での基準以外にも、新たに禁止事項や遵守しなければならない事項も追加。

具体的な内容について

(1)施設の管理、設備

ケージでの飼育や平飼い等を行う際の運動スペースケージサイズ等の基準金網を床材にとして使用することの禁止など、構造上の基準を設定しています。また、1日3時間以上は自由に運動できるようにすることが義務化されます。基準に適したケージの買い替えなど準備期間が必要なことから、既存事業者については施行まで1年間の経過措置が設けられました。

・新規事業者 令和3年6月1日から適用
・既存事業者 令和4年6月1日から適用

(2)従業者数と飼養頭数

健康的に犬の管理ができるよう、従業員1人に対して飼養できる犬の頭数を決めたものです。この頭数の中には、繁殖をやめた犬(繁殖引退犬)や親犬と同居する仔犬は含まれません。従業員数に応じて犬を手放す必要がある事業者も多く、不当な遺棄や殺処分などを防ぎ、新規従業者の確保、又は譲渡等による飼養頭数の削減を行う期間が必要なため、段階的に施行されます。
第2種動物取扱業(保護団体など)では、第1種動物取扱業からの譲渡が増加する可能性があることから、完全施行時期を1年遅らせる経過措置が設けられます。新規事業者は、令和3年6月に完全施行されます。

(3)環境の管理

動物の健康に支障が出るおそれがある状態を禁止するため、温度計や湿度計の設置義務化の他、自然光や照明による日照サイクルの確保が義務付けられました。また、清潔を保つことも義務付けられています。

(4)疾病等への措置

1年以上継続して飼養や保管を行う犬について、年1回以上の獣医師による健康診断を行うことが義務化されました。更に、無理な繁殖を防ぐため繁殖業者やブリーダーは、雌雄ともに繁殖に適しているかなど獣医師の診断を受けることが義務付けられました。

(5)展示・輸送の方法

長時間の展示や輸送を行う場合の基準が設けられています。休息できる場所へ犬が自由に移動できる状態を確保すること、もしくは6時間おきに休憩(展示を行わない時間)を設けることが義務付けられました。

(6)繁殖回数、選定、方法

犬の出産は生涯を通して6回まで、例外もありますが主に雌の交配は6歳(満7歳未満)までとされました。また、帝王切開を行う場合は獣医師が行うこと、更に実施した獣医師による出生証明書と母体の状態に関する診断書の交付を受け、5年間保存することが義務付けられました。出産回数については、繁殖実施状況記録台帳への記入も義務化されます。繁殖させる場合には、前述の健康診断、上記の帝王切開の診断その他の診断結果に従うとともに、繁殖に適さない繁殖をさせないということが明文化されました。
第3段階として、令和4年6月1日にマイクロチップ装着の義務化が控えています。これにより年齢の確認が明確にできると期待されており、繁殖に関する事項についての施行は令和4年6月1日から適用されます。

・年1回の健康診断及び帝王切開に係る規定 令和3年6月から適用
・雌の交配年齢・出産回数に係る規定 令和4年6月から適用

(7)愛護と適正な飼養

劣悪な環境下で飼養や保管される動物に多く見られるような状態を、それぞれ禁止する内容が明文化されます。

・被毛に糞尿等が固着した状態
・体表が毛玉で覆われた状態
・爪が異常に伸びている状態
・健康及び安全が損なわれるおそれのある状態

更に、人とのふれあいや散歩、清潔な給水の確保など、健康的な飼養に必要とされる内容が義務化されます。

効果的な取組のための措置


上記(1)から(7)までの施策を効果的に実施するために、以下の措置を講じることが決定しています。

■ 「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」の策定
事業者の指導監督を行うのは各自治体の職員です。この職員に対して基準の考え方や基準を満たす状態等を分かりやすく示し、自治体ごとに判断が異なることのないよう管理基準の解釈と運用指針が策定されます。■ 自治体の取組の支援の充実
環境省は、省令が施行される令和3年6月以降、自治体が不適正事業者に厳格に対応するため、行政処分に係るノウハウを自治体へ周知する目的で相談窓口を設置します。

■ 国民的な議論の推進
譲渡促進のための取組を進めるための議論の場の設置や、犬種の多様性や人の動物への関わり方について、幅広い視点から国民的な議論を進めていくことが必要であるとされています。

■ 事業者の主体的な取組の推進
事業者が主体的に飼養管理の質を向上させる取組が重要であるため、事業者が専門家の助言を得て飼養管理の状況を評価し、改善につなげる方法や、優良な事業者が消費者から評価される仕組みなど、より良い飼養管理が促進されるようその具体的方策の検討が必要であるとされています。

イラストで「数値規制」を学ぶ

まとめ

私たち愛犬家は、常に犬を取り巻く環境の中に存在しています。立場が変われば視点も捉え方も異なりますが、どんな立場であれ、法律というルールを正しく認識し、更により良い法律となるよう理解と問題意識を持つことが大切ではないでしょうか。今回の法改正は、悪質業者を淘汰する目的も含まれています。法律以前に、常に犬の健康と幸せを最重要と考えている事業者にとって、今回の法改正は何の痛手もないでしょう。事業者を監督するのは自治体ですが、一人一人が正しい判断基準で事業者を評価できることも大切です。そうすることで、法を順守した誠実な事業者から犬を迎えることができるのではないでしょうか。
愛犬を思い浮かべたとき、現在の動物愛護法に何を感じますか。法律という大きな存在であっても、全ての命ある動物たちが今よりもっと幸せに暮らせる社会となるために、守り、変えることができるのは、私たち人間だけなのです。

参考資料
環境省:第3次答申(動物愛護管理法の飼養管理基準に関する省令)案の概要

環境省:第3次答申(動物愛護管理法の飼養管理基準に関する省令)案の本文

環境省:動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行(令和3年6月1日) に係る関連省令等の整備について(概要)

環境省:「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」

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