高齢者とペットの問題に行政が取り組む! 福岡県古賀市が行う【ペットと暮らすシニアの備えサポート制度】とは?

高齢化社会の進む現代において「高齢者とペットの問題」は地域を問わず、日本各地で社会問題となっています。
実際には、入院や飼い主の死亡によってペットが取り残されてしまうケースや、介護従事者にペットの問題を丸投げしているケースなど、様々な問題を抱えています。
全国の犬の飼育頭数は約849万頭、その中で全体の21.8%、約3割が60代以上の飼い主です。(※)今後更に日本の高齢化が進むことを考えると、この割合が増加していくことは容易に想像ができます。
このような背景と問題に、”行政としての取組み”を始めた自治体があります。
福岡県古賀市が行う【ペットと暮らすシニアの備えサポート制度】は担当部署や課を超えて連携を図り、高齢者が安心して暮らせる環境を支えています。
今回は、制度ができた経緯や行政で取組む意味、具体的なサポート内容について、古賀市環境課 花田さんと村山さんにお話を伺いました。

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制度をはじめたきっかけと制定時に配慮した点


-enkara「古賀市の問題として〈高齢者のペット問題〉というのは以前からあったのでしょうか?」
古賀市環境課 花田さん(以下、花田さん)
「これまで環境課では高齢者のペットに関する問題を事前に把握できていなかったので、いざ相談が寄せられた時には、早急な対応が出来ない、対応が難しいというケースがありました。
また介護従事者の方に関しては、高齢者のペットに関する問題を抱えていることを知りながらも、相談先や対応方法が分からずに困ってたという現状もあり、件数自体カウントしてる訳ではありませんが、やはりそういった問題が増えてきているという状況は感じていました。」

-enkara「福岡県愛護センターが古賀市にありますが、殺処分数が福岡の他の都市に比べて多い印象があります。そのあたりも、この制度を始めようと思ったきっかけなのでしょうか?」
花田さん「今回の制度自体は、センターの殺処分数との関連性はなく、高齢者からの相談が増えてきていたため、事前の備えをしておくことが大切だと判断し開始に至りました。」

-enkara「シニアのペット問題に対して、具体的な制度を作り各担当部署が連携して対応している自治体は、私たちが知る限りではまだ見受けられません。
その中で、率先してやっていこうと決断されたその一歩は凄く大きなものだと思います。はじめるにあたり、どんな課題や問題を感じましたか?」

古賀市環境課 村山さん(以下、村山さん)
「行政として制度を作るにあたって一つは”課題”として持っていくまでの行政特有の縦の壁と言いますか、そういうところで取組めない問題があるのだと思います。
シニアのペット問題は、課題としてどの行政もかなり多く問い合わせがあるかと思いますが、連携して福祉部門と環境部門が今回のように連絡を取り合いながら進める必要があるところに壁があるような気がします。
今回、上手く古賀が取り組めたのは、両方の部署部門を経験をしどちらの業務も把握した職員が環境課に在籍していたため、ネックとなるポイントが明確に見えていたことが大きかったと感じています。その職員を中心に、今回の様々な結びつけができました。」

-enkara「それぞれの立場から様々な問題や相談が寄せられて、制定に至ったと思いますが、実際に当事者からの直接の相談が多かったのですか?
それとも、介護従事者の方など当事者以外からの相談が多かったのでしょうか?」

村山さん「去年、介護従事者やボランティアの方から環境課に何件か相談が寄せられました。例えば、入院が必要なのにペットを飼育しているからと入院を拒否されたり、急に亡くなられたことで猫だけが多数取り残されたりなどがありましたね。
その方は地域から孤立されてたのですが、いざ我々行政やボランティアさんが動こうとしても全く猫の飼育情報がない・・・という状況でした。
そういったことを実際に目の当たりにしたことで『これはなんとかしないといけない』と、この試みの発端につながりました。」

-enkara「制度を整える上で注意された点や、配慮した点などがあれば教えてください。」
花田さん「今回、福祉部門と環境部門がお互いの業務内容をそれぞれ理解して制度設計をしていきました。ボランティアの方との連携が必要になりますが、その際に対象者の個人情報の取扱いには何より気を付けて活動してもらうよう慎重に進めていきました。
取組み開始後も、福祉部門と環境部門のどちらか一方だけに情報が集中しないように、事例を整理して情報の共有を行っていくことにも注意しています。」

実際の運営方法

-enkara「実際のサポート制度について、どのような形で運営されているのか、フローも交えてお伺いさせてください。」
花田さん「まず要支援・要介護認定者がペットを飼っている場合、担当のケアマネージャーがチェックリストに沿って飼育の状況を確認します。そのケアマネージャーが飼育の環境であったり、将来のペットの備えに不安があると感じた場合は環境課に連絡していただきます。
もし連絡が入った場合は、その後、環境課とわんにゃん​サポーター(犬猫ボランティア)とケアマネージャーで訪問して、内容に応じてアドバイスを行います。その後、その内容を包括支援センターと環境課で情報を共有しサポートする。こうした流れに沿って運営しています。」

-enkara「保護団体ではなくて敢えて”行政が行う”意味として、何を感じますか?」
花田さん「ペットに関する備えを必要としている高齢者方の把握を、どうやって行うのかが大きな課題だと思います。先ほども申し上げたように、ケアマネージャーがチェックリストに沿ってペットの飼育状況などをチェックし、高齢者へアプローチする流れとなっています。これは市が持っている高齢者の情報を基に事業をしていますので、個人情報保護の観点から、行政が取り組むことが望ましいと考えています。」

-enkara「逆に行政が行うからこそ難しい点など、実際に運営されて今どう感じますか?」
花田さん「行政が行うことで特に障害や難しい点はありませんが、我々が高齢者のお宅を訪問した際に、『指導に来たのではないか』という風に構えられたり、誤解されたりすることがあります。しかし、実際に日頃からコミュニケーションを取っているボランティアの方やケアマネージャーが同行することで、その点も緩和されているのではないかと思います。」

-enkara「対象者として要介護者と要支援者に限定した意図があるのでしょうか?」
村山さん「急な入院であるとか、最悪亡くなられるなどの可能性が高い方が【ペットと暮らすシニアの備えサポート制度】の必要性が高いと考えていることが理由です。
それともう一つ、全市民の問題に介入するにはまだノウハウもパワーもありませんので、まずはチェックが最も必要な要介護支援者の方に絞って始めることにしました。」

ーーノウハウが蓄積してリソースが整えば、対象の幅を広げていくイメージですか?
村山さん「はい、まさにその通りです。」

対象者の犬猫をサポートするボランティア『わんにゃん​サポーター』について


-enkara「具体的な活動内容など教えてください。」
花田さん「わんにゃんサポーター制度は今年の3月から始まりました。サポーターの登録要件については、古賀市内に住所を有する方、もしくは古賀市内に通勤通学をしている方となっています。サポーターを希望する方から申し出があった場合、こちらでその都度<わんにゃん​サポーター養成講習>を実施しますので、その講習を受講していただくことが登録の要件となっています。」

ーー今大体どのくらいの方が登録をされているんですか?
「今は12名のサポーターがいらっしゃいます。」

ーー具体的な活動内容を教えてください。
「大きく分けて3点あります。まず1点目が<ペットと暮らすシニアの備えサポート支援>、2点目は<犬と猫の適正飼養に関する啓発の協力>です。
古賀市では地域猫活動というものを実施しており、その活動の支援をしていただくのが3点目です。」

本制度の現状と目指す方向

-enkara「本サポーター制度の活動事例や現状を教えください。」
花田さん「この制度の流れに沿って、環境課に報告が上がり対応した件数は今の所1件です。
利用者はひとり暮らしの高齢女性で、9歳の去勢手術済みオス猫2匹を飼ってらっしゃいました。状況としては、要介護・要支援の認定を受けてる方で、年に何回か入院されていることから、将来のことを心配されケアマネージャー経由で報告がありました。」

村山さん「『何かあった際に、ペットのことをどうされるか決めていますか?』というのが本サポート制度の中心的な相談内容なのですが、その方は自分が仮にお亡くなりになった際にペットをどうするか決めていない事を不安に感じてのご相談でした。
実際にお話を伺うと、息子さんと娘さんがいらっしゃるという事でしたので、当事者が娘さんに相談し、最終的には息子さんと娘さんが『何かあった際にはペットの面倒を見ます』という約束をいただいたので、ご本人も納得をされて解決した事例です。」

-enkara「制度の今後についてお伺いさせてください。」
花田さん「今後は更に高齢者とペットの問題について増えてくると思いますが、可能な限り事前の備えをすることを、具体的にサポートさせていただきたいと考えています。
高齢者が、最後までペットと安心して生活できる環境を作っていきたいと思います。」

まとめ

犬との暮らしには無数の喜びと幸せがあり、特に高齢の方にとっては、生活に張りを与え健康維持にも効果があるとされています。しかし様々な問題が蔓延していることで、一括りに「高齢者は犬を飼うべきではない」という風潮も見受けられます。
高齢になるにつれ、世話をする上で困難なことが増えることは事実ですが、犬と暮らす選択を安易に否定や禁止をするのではなく、住民である高齢の飼い主それぞれの不安に寄り添い、市全体でサポートする古賀市の取組みは行政の本来あるべき姿だと感じました。
冒頭でお伝えした通り、今後は飼い主の高齢化が更に進むことが考えられる上、犬の寿命も伸びています。このようなサポート制度は、既に全国的に必要なフェーズにあると考えられます。
「高齢者とペットの問題」は相談できる場や頼る相手がいないことが最大の問題点ではないでしょうか。飼い主が孤立しない環境を作ることこそがサポート制度の大きな役割であり、最悪の事態を防ぐことに繋がります。一日も早くこのような制度が全国の自治体で整備されることを心から願っています。
そして高齢者に限らず全ての愛犬家に共通して、”今”私たちがすぐにできることとして、古賀市の取組みに倣い「万が一を想定し、事前に備えること」から始めてみませんか?

※)2020年10月一般社団法人ペットフード協会発表より

古賀市「ペットと暮らすシニアの備えサポート」(WEB

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VISION「私たちは循環する社会の仕組みを創る」

今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。 最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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