《犬との暮らしを考えた時に》犬と家族になること 〜家族と出会った元野犬たち〜 #4 上野さん&いちまつ&いと

現在日本には多くの野犬たちがいます。
動物愛護センターや保健所では、野犬を捕獲し今まであまりにも多くの処分を行ってきました。
ただ近年、動物愛護や福祉の観点から、大切な命を家族へ繋げていくために社会化を行い譲渡を促進する動きが高まっています。
「保護野犬を家族へ迎えたい」と考えている方をはじめ、「これから犬と暮らしてみたい」という方や多頭飼育を検討中の方へ___多くの日本人に届けたい保護された元野犬と暮らすご家族のインタビュー。野犬の個性や存在を知っていただくために連載でご紹介します。
写真を通じ月日の中で移り変わる犬たちの表情の変化と共に、心の変化を感じていただけたらと思います。野犬こそ日本で緊急に保護譲渡が必要な保護犬です。全ての野犬たちが家族と出会い、心地よい環境のもと、生涯あたたかく過ごす未来へ繋がることを願います。
第4回は、香川県で生まれた元野犬のいちまつくんといとくんと暮らすご家族(兵庫県在住)のお話です。

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いちまつくんとの出会いについて

(左:いちまつ 譲渡会参加時)

上野さん:「【ペットのおうち】という飼い主募集サイトで、全国に家族を探す犬、猫がいることを知りました。その中で目に留まったのが ”いちまつ” です。
保護して育ててくださっている保護団体さんのブログでいちまつの様子を眺めては、ただただ思いを馳せる毎日でした。というのも、当時私たちはペットを迎えられる住まいではなかったのです。

『犬を迎える条件を満たしていないためすぐに迎えることが出来ないけれど、いちまつに会いたい』という気持ちを保護団体さんへ伝えたところ、私の気持ちを快く受け入れてくださり、そのおかげで、香川県の譲渡会でいちまつに初めて会うことができました。

『いちまつ』と声を掛けると、『何かくれるの?』という様子で私に近づいてくれました。
私は、すぐに仲良くなれることを思い描いていましたが、鼻をクンクンさせて、何も持ってないことが分かると、『誰、この人?』という様子で困った顔をして後ずさり。
私が想像していた すぐに仲良くなれる という感じではありませんでした。
それが、いちまつとの初めての出会いです。

その後保護主さんより、『香川県内でお声が掛かることは、砂浜から一円玉を探すくらい難しいと思っています』という話も伺いました。
香川県では、元野犬の場合生後3か月を過ぎてしまうと、『家族に迎えたい』というお声がなかなか掛からなくなってしまうそうです。いちまつはこの時、生後10か月を過ぎた頃でした。
実際に会い心が決まった私は、【いちまつを家族に迎えることのできる心地よい住まいを探そう】とすぐに動き始め、住まいを探す間も様子を伺ったり、譲渡会へ直接会いにも行きました。

最初の出会いから2か月後____一緒に暮らせる住まいに移り、いちまつを家族へ迎えることができました。
今思えば、家族の協力がなければ進むことはできませんでしたし、いちまつを迎え入れることもできなかったと思います。」

いとくんとの出会いについて

(いと 譲渡会参加時)
上野さん:「”いと” は、いちまつと同じ保護団体さんからご縁をいただきました。
初めていちまつと出会った譲渡会に いと もいて、この時はまだ、『保護団体さんのサイトに紹介されている仔犬達もいるなぁ・・・』くらいの認識しか持っていませんでしたが、譲渡会後も、保護団体さんのブログなどで愛情を注がれている いと の様子を度々目にしていました。

『トライアルが決まった!』というお知らせには安堵しましたし、トライアルから帰ってきたというお知らせには 『大丈夫!ちゃんと、どこかに太いご縁が繋がっているから!』と心の中でエールを送っていました。
新たなトライアル先から迷子になったというお知らせには、『なんということ・・・』と絶句し 、いと が無事に見つかることを信じ、心から祈っていました。
2週間もの放浪の後、保護主さんの手で いと が無事保護された時は『お帰りなさい』と泣きました。
今思えば、私はこの頃からずっと家族のように いと へ心を寄せていたのだと思います。

いちまつを家族へ迎えた後、故郷である香川県へ帰った際、『預かりボランティアファミリー、ボランティアスタッフさん、保護団体の保護主さんみんなでドッグランで遊びましょう』という話になりました。
その時、保護主さんが連れて来てくれた保護犬が いと でした。
ドッグランを楽しそうに駆け回る犬たちと、ベンチの下で息を潜めている いと。
いと にとってドッグランはその時初めての経験で、かなり緊張していたのでしょうね___保護主さんの声掛けに誘われてちょっと姿をみせたと思うと、また隠れんぼ。
何度も隠れんぼを繰り返していましたが、いちまつ たちの誘いに興味をもったのでしょう、いつしか楽しそうに走る いと の姿がありました。
嬉しかったなぁ・・・この日のことは、とても印象に残っています。
いちまつ が、いと を気にかけて誘う様子、追いかけて走り回る様子、犬同士の関わりを眺めながら、あたたかで幸せな暮らしが広がっていく感覚に、心が満たされていました。
いとが我が家に来てくれたのは、それから5か月後のことでした。」

なぜ?犬と暮らしたいと考えたときに、野犬を選択したのでしょうか

上野さん:「私は以前、ゴールデンレトリバーと13年間、暮らしていました。
その子を見送ったあとも、その子と暮らした穏やかな毎日を想い、またいつかそんな暮らしができればと願っていました。
そんな想いの中、目に留まったのが飼い主募集サイトで家族を探していた〈保護犬いちまつ〉です。
当初は、野犬を選択したという認識ではなく、〈ただただ いちまつ と家族になりたい〉そう思いました。

野犬のことは、保護主さんや いちまつを通じてお友だちになった奄美大島の保護犬を2頭迎えたご家族の方など・・・関わってくださった方から沢山教えていただきました。
人間の作ったルールにより、飼い主がいないという理由から消されてしまう沢山の命があること。
その中から救い出され、多くの愛情を掛けられて繋がっている命もある
ことを学びました。

いちまつと いと は、優しく穏やかで賢く、いつもそばに寄り添ってくれています。
今まで多くの方々から愛情を受け、そのお陰で私たち家族に全力で愛情を注いでくれているのだと感じ、とても幸せな日々を過ごしています。」

保護野犬の多頭飼育で大切なこと

上野さん:「いちまつは、人にも犬にも懐っこく、本当に穏やかな子です。散歩へ出かけても沢山可愛がってもらい、迎えてすぐに馴染んでくれました。
元々預かりボランティアさんの元では沢山の犬猫と暮らしていましたので、当時留守番時間が長かった我が家でも、『もっと一緒に遊べる兄弟がいれば、いちまつも楽しいだろう』と考えるようになりました。
いと が来た日も、緊張で身構えている いと に、『大丈夫、仲良くしよう』と率先して誘ってくれました。『仲良くなれるだろうか?』と、不安に思うのは人だけで、犬は今の状況を理解し受け容れようと歩み寄ってくれます。
私たちがきちんとルールを示し、安心感をもって見守ることも大切だと感じています。
2頭いれば、必要なものや動きも増えますが、大変とは感じていません。
今も毎日、この子たちから見習うことばかりです。
そして何より、2頭の関わり合いからそれぞれの個性が更に引き出され、いつもその様子を眺めては愛しく思い、幸せを感じます。」

今までを振り返ってどんなことを感じますか?

(左:いと トライアル3日目のふたり、右:最近のふたり)
上野さん:「野犬として生まれ、その後どのような経験をし、どのような思いでいたのか知り得ないことも沢山あります。
仔犬期は遥かに過ぎ、保護の対象ではなかったいちまつを人懐っこいから繋げたいと譲渡できるよう尽くしてくださった保健所の職員の方。
大きくなったいちまつを、あたたかく迎えてくださった保護団体さんや預かりボランティアさん。
トライアルを重ね迷子になった時、再びの保護に至った際も強い気持ちで いと の幸せを何より一番に考えてくださった保護主さん。
沢山の優しい手が繋がって、今ここに居てくれていることにただただ、感謝しかありません。

犬は、私たちがかけた愛情のその何倍もの愛情を返してくれます。どれほど尽くしても、到底及びません。私たちより遥かに短い一生を私たちが守っているようで、守られているのかもしれないと感じます。」

保護野犬を家族に迎えたいと考える方へのメッセージ

上野さん:「保護野犬は警戒心が強い、怖がり、可哀そう、成犬は仔犬と比べて懐きにくい、迎えるには条件が厳しい・・・”保護犬”というイメージだけが独り歩きしているように、私は感じています。
その犬その犬を見てほしい。
成犬だから、体が大きいから、病気があるから、怖がりだから、それはだめなことなんでしょうか。
みんな、ただただまっすぐ今を生きていて、たくさんの愛情をかけてくれる家族がいれば、もっともっと優しく強く生きられると思うのです。
不安に思うことがあれば、保護団体や保護主さん、預かりボランティアさんへぜひ相談してみてください。誰よりその犬を見続け想っている方であり、家族へ迎えた後も、ずっと見守りサポートしてくださる方ですから。自分たちだけで解決しようとせず、周囲に相談することも大事だと思っています。」

上野さんにとって”犬と家族になること”とは

「ありがとう」を思う毎日を、愛をもって優しく強く!ともに生きること

編集部です。「香川県では、元野犬の場合生後3か月を過ぎてしまうと、『家族に迎えたい』というお声がなかなか掛からなくなってしまうそうです。」上野さんのそのメッセージから香川県に限らず、様々な地域で活動される方から「仔犬譲渡は順調だ」と伺ってきたことを思い出しました。
環境省最新情報によると令和3年度の殺処分数は、全国数値の場合「健康であり家庭で暮らせるにもかかわらず殺処分された犬は642頭(内訳:成犬276頭・仔犬366頭)」「治癒の見込みがない病気や攻撃性により譲渡不適切とされ殺処分された犬は2,789頭(内訳:成犬2,556頭・仔犬233頭)」です。
上記で殺処分された犬の比率は、成犬2,832頭・仔犬599頭と約5倍も成犬が多いことがわかります。
成犬は仔犬と比較すると放浪期間が長いこともあり社会化に時間がかかるため、専門的な知識や犬と暮らすスキル、また根気よく見守る愛情と余裕が必要な場合も多いでしょう。ただ、本当に日本で殺処分ゼロを目指すのであれば、保護野犬の成犬を家族に迎えられる環境の方は、今その選択をすることが貴重であり、日本の犬たちにとって尊い選択となります。
仔犬から家族に迎えること以外にも選択肢があることを多くの方が知ることで、犬たちの命は優しく繋ぐことが出来ます。上野さん、貴重なお話をありがとうございました。

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