【静岡市動物指導センター】拠点避難所76箇所へ設置!静岡市獣医師会が提案した「避難所ペットスペース設営ボックス」とは?

           

災害時、ペットとの「同行避難」を環境省は推奨していますが、全ての避難所でペットの受け入れ準備ができている訳ではありません。その理由として、避難所のスペースや人員不足など物理的な問題の他に、実際に避難所を設営・運営する側の知識や理解度なども挙げられ、ペットの受け入れ態勢は地域によっても差が生じています。こうした問題に対して、静岡県静岡市では非常時に知識の有無にかかわらず誰でも避難所内にペットスペースが確保できるよう、具体的な取り組みを始めました。市の防災担当部署と、動物の担当部署である動物指導センターが連携して取り組む、「避難所ペットスペース設営ボックス」の設置とは一体どのような役割を担うものなのでしょうか。今回は、静岡市動物指導センター小野寺さんにお話を伺いました。

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「避難所ペットスペース設営ボックス」とは?

enkara:「避難所ペットスペース設営ボックス」とは具体的にどのようなものですか?

静岡市動物指導センター 小野寺さん(以下、小野寺さん):「様々な方が避難所に避難されてくる中で、同行避難したペットを適切に飼育管理し、円滑な避難所運営を行っていくためには、人の生活空間と動物の生活空間(ペットスペース)を分ける必要があります。
同行避難した飼い主たちが協力しスムーズにペットスペースを設営・運営するためのマニュアルや用品をまとめたものが『避難所ペットスペース設営ボックス』です。
2022年11月に、静岡市内76箇所の拠点となる避難所の倉庫に配備
しました。」

避難所運営側の悩みや不安を解消するために

enkara:「避難所ペットスペース設営ボックス」設置の経緯を教えてください。

小野寺さん:「東日本大震災では、ペットがいるからと避難しなかった方やペットを迎えに行った方が被災されるという悲しい事例がありました。また、災害時に放れた動物が留守宅に侵入し繁殖してしまうなど、街の復興の遅れの一因にもなってしまいました。

そのため環境省では、災害時にはペットと一緒に避難する『同行避難』を推奨していますが、避難所運営側からは『避難者の受け入れに力を注ぐため、動物のことまで考えられない』『アレルギーや嫌いな方がいるため困る』『鳴き声や臭いでトラブルが想定される』など、ペットの受け入れを不安とする意見が多く聞かれました。

このような状況のもと、静岡市では平成24年度に静岡市獣医師会等と『災害時の動物救護活動に関する協定』を締結し、『被災動物救護計画』を策定・対策会議を開催してきました。

その中で、静岡市獣医師会の鈴木淑剛先生(ふくろう動物病院院長)から、ペットスペースを設営するためのボックスを避難所に設置することが提案され設置に至りました。」

静岡市の危機管理総室と連携して行う、ペット防災周知

enkara:通常、避難所設営に関する業務は市の防災担当課が行なっていることが一般的ですが、静岡市ではいかがでしょうか?

小野寺さん:「静岡市では避難所の開設は市の職員が行い、運営は地域の自主防災組織(自治会・町内会)が行うことになっています。今回、『避難所ペットスペース設営ボックス』の設置準備は当センターが行い、設置や今後の運用の関係者への周知については、市の防災担当課である危機管理総室と協議しながら進めてまいりました。 」

enkara:動物指導センターと危機管理総室との連携は、どのように行われていますか?

小野寺さん:「当センターは危機管理総室と連携し、毎年開催される地域の自主防災担当者が集まる連絡会で『ペットとの同行避難』への理解や協力を伝えています。
また、市民向けペット防災の出前講座の開催や、地域の防災訓練に参加するなど、危機管理総室と連携しながらペット防災への周知をはかっています。」

全ての避難所でペットの受け入れを目標!

enkara:静岡市内に避難所が設営される際、現時点でペットの受け入れが可能な避難所の割合はどのくらいですか?

小野寺さん:「『静岡市地域防災計画』に同行避難の記載はありますが、数年前に拠点の避難所にアンケートを取ったところ、ペットの受け入れを決定しているところは約10%と低い割合でした。」

enkara:今後の課題や目標を教えてください。

小野寺さん:「避難所の状況によって受け入れができない場合もありますが、全ての避難所での受け入れを目標としています。長期的な受け入れが難しい避難所であっても、同行避難の一時的な受け入れには対応できるよう、引き続き理解や協力を求めていきます。」

愛犬を災害から守るために飼い主がすべきこと

enkara:同行避難するにあたり、飼い主の皆さんにお願いしたいこと、準備してほしいことはありますか?

小野寺さん:「避難所で困らないようにするためには、犬の社会化を身につけておくことが必要です。避難所ではペットはリードで繋いだり、ケージで飼育することになるため、基本的なしつけをしっかりと行ない、普段からリードやケージに慣らしておくことでペットへのストレスも少なくなります。」

enkara:必要な準備を教えてください。

小野寺さん:「フードや水は最低でも1週間分は用意しておいてください。
備蓄品は、倒壊等のリスクの低いところにローリングストックすることをお勧めします。
また、諸事情により避難所でペットが生活できない場合に備え、飼い主同士、親戚・知人とも相談し、いざという時に預かってもらえる場所を事前に確保しておくとよいでしょう。」

同行避難できる環境をつくるために必要な認識

小野寺さん:「町内会等で『同行避難』の説明をする時にいつも言われることは、災害時のことではなく【散歩時の糞尿】【鳴き声】【放し飼い】等の日常のマナーについての苦言です。
飼い主の皆さまが、日頃からマナーに気をつけることで、ペットが家族の一員として地域に受け入れられ、避難所への同行避難の理解につながります。

愛するペットを守るのは、他ならぬ飼い主さんしかいません。
動物に優しい社会は、人に優しい社会といいます。お互いに協力し合い、そのような社会を作っていきましょう。」

まとめ

災害時、慌ただしく切羽詰まった環境下で、頼れるマニュアルや必要なものが常備されているという状況はとても心強い存在です。また、関係者への『同行避難』についての理解や説明を行う場に、市の防災担当職員だけではなく、動物の担当であるセンター職員が携わっているという点も、非常に大きい役割を担っていると感じました。
国が推奨している同行避難だからといって、それは当然の権利ではありません。
お住まいの地域で、ひいては日本の社会全体の中で犬が愛される存在になることが、非常時に愛犬を守ることにダイレクトに繋がってくるのです。
それには、飼い主のモラルの向上・スキルや知識のアップデートが、ペット防災の分野においても非常に大切なことではないでしょうか。静岡市のような取り組みや連携が、全国的にも浸透することを願っています。

<参照>
環境省「人とペットの災害対策ガイドライン 災害への備えチェックリスト」
静岡市地域防災計画
静岡市「犬猫について」

[文・構成/enkara編集部]
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