《横浜市全域 ペット防災編》災害から犬を守るために飼い主ができること〜保存版〜

           横浜市ペット防災

2011年に発生した東日本大震災を受け、災害時のペット対策は大きく見直されてきました。そして2013年に環境省は「人とペットの災害対策ガイドライン」を策定しますが、2016年に発生した熊本地震ではペットに関する新たな課題が浮き彫りとなり、更に改定されました。過去の多くの災害を受け、その教訓から災害時のペット対策は今もなお変化しています。

2019年enkaraでは「災害から犬を守るために飼い主ができること〜東京23区 同行避難方針比較〜」として東京都23区のペット同行避難に対する区の方針をリサーチしました。4年の月日が経ち、”ペット同行避難”という言葉や認識自体は定着してきているように感じます。今回は日本で最も人口の多い市である”横浜市”の防災体制を例に、災害時の対応や平常時に準備しておかなければならないことを、改めて現在の視点で見ていきたいと思います。

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横浜市の災害時ペット対策ガイドライン

横浜市の災害時ペット対策ガイドライン

神奈川県東部に位置する横浜市は人口約377万人の政令指定都市で、約17万3千頭の犬が登録されています。横浜市は18の行政区で構成されており、災害時のペット対策については、全ての区が横浜市発行「災害時のペット対策~ペットとの同行避難対応ガイドライン~」※1 に沿って進められることになっています。「災害時のペット対策~ペットとの同行避難対応ガイドライン~」は、ペットを飼っている人、地域防災拠点を運営する人など、広く「ペット同行避難」について理解してもらうため、災害発生時に避難先での混乱が生じることがないよう、平常時の備えや取り組みを進めるための指針をまとめたガイドラインです。「横浜市防災計画(震災対策編)」※2「地域防災拠点開設・運営マニュアル」※3「環境省 人とペットの災害対策ガイドライン」※4などを踏まえた内容となっています。

横浜市では災害時のペット対策は、”震災”と”風水害”でとるべき対策や避難の方法にも違いがあります。それぞれの対策について見ていきたいと思います。

A「震災時」の対策、飼い主の共助が重要!

震災時の対策、飼い主の共助が重要!

地域防災拠点とは?

身近な市立の小・中学校459ヵ所を”地域防災拠点”として指定避難所に指定しています。学校内に防災備蓄庫を設置し、のこぎり・バール・ジャッキ・エンジンカッターなど人命救助のための防災資機材をはじめ、乾パン・水缶詰などの食料等が備蓄されています。また、被害情報等の情報受伝達手段として、各拠点にデジタル移動無線が配備されています。自宅住所を基準にあらかじめ対象の地域防災拠点が決められていますが、その地域の住民でなくとも、出先で被災した方など自宅に戻ることが困難な方は誰でも地域防災拠点に避難することが可能です。

地域防災拠点運営委員会とは?

”地域防災拠点運営委員会”は、自治会や町内会などの地域住民・校長など学校関係者・区役所の職員など行政の三者で構成されています。避難所の開設・運営は地域防災拠点運営委員会が行います。

避難について

避難所は、自宅が損壊した方や自宅での避難が困難な方のための場所です。被災の状況に応じて避難先や避難方法を判断する必要があります。

・在宅避難
自宅が安全な場合は在宅避難となります。横浜市内で一カ所でも震度5以上の地震が発生すると、全ての地域防災拠点が開設されます。在宅避難であっても、地域防災拠点に集まる情報や救援物資をもらうことができます。

・ペット同行避難
横浜市では、各地域防災拠点運営委員に「災害時ペットの一時飼育場所設置事例集」や「ペットの一時飼育場所開設運営マニュアル(案)」を配布し、平常時の備えとして予めペットの一時飼育場所の設定や飼育ルールの作成をしておく取り組みを進めています。

地震発生から 72 時間までの間を目安に、運営委員と避難者が一体となって地域防災拠点を開設・運営していくための手順をまとめた「地域防災拠点開設・運営マニュアル」の中にも、ペット対策がしっかりと盛り込まれています。
避難所の運営は地域防災拠点運営委員が行いますが、避難者の相互扶助によって行うことを基本としています。ペットの飼育に関することは、飼い主同士での積極的な協力が必要です。地域防災拠点に愛犬と同行避難をする場合、動物が苦手な方やアレルギーの方への配慮は当然のことながら、一時飼育場所にいる愛犬の世話や衛生管理などは、飼い主が責任をもって行うことになっています。また、フードやケージなどのペット用品の備蓄はないため、必要なものは全て自宅から持参した上で避難しましょう。

B「風水害時」の対策、重要なことは早めの行動

風水害時の対策、重要なことは早めの行動

台風や大雨などの風水害は事前に進路や規模が予測できることから、震災時の対策とは異なります。暴風雨の中、愛犬を連れての避難は非常に危険で困難であることが予想されます。そして風水害時に開設される避難場所のペット一時飼育場所は、決して犬たちにとって最良の環境や場所とは限らないことからも、風水害時の対策では一時預け先の確保や避難行動計画を立てておくことが大切です。風水害時は、洪水や崖崩れなど切迫した災害が起きる可能性があります。在宅避難が危険な場合もありますので、早め早めの行動と対策が重要です。

一時預け先の確保

平常時に愛犬の預け先を調整しておくことが大切です。避難の可能性がある場合は、天候が悪化する前の安全な内に、預かり先へ愛犬を避難させましょう。

横浜市獣医師会では、自身で預かり先を確保することが困難な場合に備え「風水害時のペット一時預かり」事業※5を実施しています。これは台風接近時や警報級の大雨の可能性が気象庁から発表された場合に、該当の動物病院で一時預かりを行うものです。預かり費用は無料ですが、あくまでも預かりのみのため、夜間休診日等、不在となる時間帯があることは理解しておく必要があります。しかし緊急時には有効な事業ですので、いざという時に躊躇せず活用できるよう、事前に確認しておくと良いでしょう。

マイ・タイムライン(避難行動計画)作成

横浜市では一人ひとりにあったマイ・タイムライン(避難行動計画)の作成を勧めています。マイ・タイムラインとは台風や大雨の水害等、これから起こるかもしれない災害に対し、一人ひとりの家族構成や地域環境に合わせて、あらかじめ時系列で整理した自分自身の避難行動計画のことです。いざという時に速やかに避難できるよう、愛犬の安全を考慮したマイ・タイムラインの作成が必要です。犬と暮らす飼い主の責任として、預け先も含めどのように避難すべきか家族全員で話し合うことが大切です。※6

ペット同行避難は「警戒レベル3」

震災時に開設される地域防災拠点が、必ずしも開設される訳ではありません。また、開設されたとしても、ペットの一時飼育場所は屋外に設置することを想定している避難所も多くあります。悪天候の中でのペットを連れて避難することの危険性と、飼育場所の環境を考えると、風水害時の避難所への同行避難は、最終的な避難方法であるということをしっかり認識しておくことが重要です。やむを得ず同行避難をする際は、「警戒レベル2」までには確実に準備を整え、遅くとも「警戒レベル3」つまり「避難準備・高齢者等避難開始」の時点ですぐに避難することが必要です。避難を考えている場合は、各区役所や市のホームページ等で開設されている避難所を確認し、早めの行動が必須です。

アプリの活用

横浜市では「横浜市避難ナビ」※7 というスマートフォンアプリを提供しています。アプリ上でマイ・タイムラインが作成できるほか、作成したマイ・タイムラインと連動した避難情報がプッシュ通知され、開設している避難場所やルートが確認できるなど便利なアプリです。特に避難所の開設は”震災時”と”風水害時”で異なるため、マップ上でそれぞれ確認できる機能は、いざという時に慌てている状況を考えるととても安心です。事前の備えにもアプリを活用することはおすすめです。

まとめ

ペット防災

横浜市では、愛犬との避難は同伴避難ではなく同行避難が基本です。以前に比べ、同行避難が受け入れられる状況になりつつある今だからこそ、飼い主のモラルや備えが問われているのではないでしょうか。犬を飼っていない人の方が多い中で、同行避難の受け入れが当然のことでは決してありません。全国的にも避難所の開設は自治会や町内会が先導して行うことが一般的です。愛犬が地域の方々に愛される存在であることは、今後の受け入れ態勢に大きく影響を与えるはずです。自分の犬だけのためではなく、地域コミュニティの一員であることを認識し、地域の犬たちと飼い主のために行動することが大切です。
犬と暮らす私たちは、常に愛犬の安全を考える義務があります。避難所への避難も、季節によっては愛犬の健康を害する可能性も考えられます。自身の暮らす地域の防災体制を把握し、それを踏まえた上で、どのように危険から愛犬を守れるのか様々な想定をしておくことが、最も重要な備えなのです。今一度、防災グッズや持ち出し用品、避難所や避難ルートと併せて確認してみてはいかがでしょうか。

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飼い主の在宅時に災害が起こるとは限りません。飼い主の不在時、災害や緊急事態が起こった際に、”ペットが在宅していることを外部に知らせる”マグネットタイプのドアサインです。犬、猫、その他のペットの有無と飼育頭数を知らせます。マグネットタイプなので、着脱も自由なため車などにも貼ることが可能です。耐久性を高める特殊コーティング加工済み、屋外耐水仕様。

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〈参考資料〉
※1 災害時のペット対策~ペットとの同行避難対応ガイドライン~(横浜市)

※2 横浜市防災計画「震災対策編」(横浜市)

※3「地域防災拠点」開設・運営マニュアル(横浜市)

※4 人とペットの災害対策ガイドライン(環境省)

※5「風水害時のペット一時預かり」(横浜市獣医師会)

※6 マイ・タイムライン作成シート

※7「横浜市避難ナビ」

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