プロギングドッグ協会は、犬たちが愛される社会を創ることを目的として、愛犬と一緒にゴミ拾いPloggingDogアクションをはじめ、犬と暮らすためのスキルアップや学びを深める様々な企画をメンバーに提案しています。そのひとつがオンラインクラスです。
3月に開催した第4回オンラインクラスでは、Dog Link K&F 代表責任者ドッググルーマー河上皓太氏(以下、河上さん)を講師に迎え、「犬のグルーミング(シャンプー編)」について学びました。おうちシャンプーは多くの飼い主の方々が行っているケアのひとつだと思います。ぜひ皆さんに知っていただきたい犬のグルーミング、本記事で特にシャンプーのポイントについて、河上さんによるオンラインクラスの内容をお届けします。
犬のシャンプーで一番大切なこと
グルーマーとして日々シャンプーを行う中で、僕にはとても大切にしている考えがあります。それは【優しいシャンプー】をするということ。そして【優しいシャンプー】のために、次の2つのことを最も大事にしています。
・決してムリをしないということ
・こちらのエゴになっていないかということ
シニアやハイシニアの犬たちをはじめ、全ての犬たちを無事にお家にお返しすることが一番の目的です。そのためには犬への負担を常に考慮し、頑張りすぎないこと。そして時にはキレイさよりも安全を優先することが大切です。
また、シャンプーをすることで”犬たちを怖がらせない、嫌な思いをさせない”ということに最大の注意を払っています。愛犬をシャンプー嫌いにさせないことは、安全面でもとても重要だからです。ホームシャンプーをする場合も同じです。飼い主が決して無理なことはせず頑張りすぎない、できる範囲のことをできる範囲でケアすることが大切です。
犬のシャンプー4つのポイント!
それでは実際に、おうちシャンプーをする場合に注意することをお話しします。大前提、部分洗いなど、洗える範囲でOKです。頑張りすぎず【優しいシャンプー】を心がけることを忘れないでくださいね。
【ポイント1】呼吸
犬は基本的に”鼻呼吸”のためお湯の蒸気で息苦しくなる場合もあります。特に短頭種、シニアや肥満気味、心臓病や気管虚脱、興奮しやすい犬の場合、息苦しさに加えて呼吸が荒くなることがあります。ハァハァと呼吸数が多くなると心臓に負担がかかることになるため、蒸気で呼吸がしづらくならないよう工夫が必要です。
《アドバイス》
・浴室のドアを開けた状態でシャンプーする。
・ドッグバスを使用する場合は、蒸気が籠らないようドッグバスから顔が出るくらいの深さになるように。深すぎる場合はドッグバスの中に台などを置いて高さの工夫をする。
・興奮した状態だと呼吸数が増えるため、なるべく落ち着かせてから行う。
【ポイント2】温度
急激な温度変化も心臓へ負担をかけてしまいます。シニアや心臓病の犬だけでなく、気管が狭い、肥満気味、シャンプーが苦手で興奮しやすい犬は特に注意が必要です。
特に冬場は急な温度変化により血圧が乱高下することで、高齢者の方と同じくヒートショックという現象が起こる可能性が高まります。季節にかかわらず急激な血圧の変化は、血管や心臓に大きな負担がかかるため、異変がないか愛犬の様子を見ながら行いましょう。
▶︎ヒートショックの諸症状
重症化すると心筋梗塞を起こす場合もあります。
・突然の嘔吐や下痢、元気消失、失神、ふらつき、眼振、チアノーゼ、貧血
・脈拍、心拍異常、体温異常、呼吸困難、意識障害など
《アドバイス》
・体をマッサージしたり、ブラッシングしてからシャンプーへ。
・浴室を前もって温めておく。
・足先や尻尾の先など、身体の末端からお湯をかけて濡らし慣らしていく。(足先→下半身→尾&お尻→体→顔の順に)
・お湯の温度は35~37℃くらいが理想。皮膚トラブルがある場合は、35℃くらいの低めの温度で様子を見る。
・温浴は心臓に負担がかかるリスクが高まるため、基本的にお勧めしない。
・できるだけ短い時間でシャンプーが終わるようにする。
【ポイント3】肛門腺絞り
肛門腺は、絶対に無理に絞ってはいけません!骨の構造を知らないと痛がらせてしまうばかりか、無理に絞ると炎症が起きたり破裂する恐れがあります。絞りづらい体質や犬種もあります。絞れない場合は決して無理をせず獣医師に処置してもらいましょう。
《アドバイス》
・犬が座っている状態であれば、必ずお腹に手を添え立たせてから行い、尻尾だけを持ち上げないようにする。尻尾は先端まで骨が通っており、そのまま背骨まで繋がっているため、尻尾だけを持ち上げる行為は背骨を傷めてしまう可能性もあり危険!
・絞る際は、力を入れすぎないこと。
・出ない場合は、無理に出さないこと。
【ポイント4】目と鼻
シャンプーをする際に最も気をつけて行いたいのが「目と鼻」などの顔回りです。シャンプー嫌いにさせないために1番重要なポイントになります。
犬は顔の正面に鼻の穴があるため、すすぎの際はお湯が入りやすい構造です。人間も鼻に水が入ってしまうと痛いですよね。同じように痛い思いをさせないためにも、しっかりとポイントを押さえておきましょう。また、鼻からお湯(水)が入ってしまうことで誤嚥性肺炎や肺水腫を引き起こす場合があります。特にシニア犬は誤嚥性肺炎が重篤になるケースも多いため注意が必要です。
《アドバイス》
・シャンプー剤は、絶対に目に入らないように。
・シャンプー泡は手で取り除き、目や鼻にお湯が入らないようシャワーヘッドを使わず、手で優しくすすぐ。
・怖がらせないためにも、顔回りは時間をかけずにできる範囲で洗う。
・シニアや心臓に問題を抱えている犬の場合、蒸しタオルなどで拭くだけでも十分に効果がある。顔回りは洗わないという選択肢も取り入れる。
まとめ
編集部です。今回のオンラインクラスでは”シャンプーのHOW TO”ということよりも、もっと大切な心構えを学ばせていただいた実感があります。【優しいシャンプー】とは、シャンプーの工程一つ一つを犬の目線で考えることなんだと気づかされました。
「シャンプーが大好き!」という犬は多くはないと思いますが、私たち飼い主が必要以上に頑張らず無理をしないことで、シャンプーの時間が愛犬と触れ合う楽しいコミュニケーションの時間になるのではないかと思います。
次回のオンラインクラスでは、シャンプーと同じくらい大切な「ドライング」について、再び講師に河上さんを迎え学びを深めます。7月末に開催を予定していますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。
プロフィール
Dog Link K&F 代表責任者 河上 皓太
専門学校卒業後2店舗を経験し、27歳で独立。「Dog Link K&F」オーナートリマーとして今年で13年目となります。APNAペット食育士をはじめ、これまでたくさんの学びに時間とお金を投資してきました。幅広い知識や経験、専門家の意見、専門書籍、数々のデータベースから、「本当に大切な事に気づき、飼い主様に選択する力をもって欲しい」そんな想いで、インスタライブやその他数々のイベントやセミナーを開催しています。飼い主様とワンちゃんの幸せを心から願い、発信活動を続けています。
資 格・経 歴
・APNAペット食育士1級
・ドッググルーマー歴 19年
[構成/enkara編集部]
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