うちの犬ってどこから来たの? TYPE3 生産流通システム


犬と暮らしていると「どこから迎えたの?」という愛犬家同士の会話は日常的です。その答えは、ペットショップ、ブリーダー、保護団体、愛護センター、友人から・・・など様々です。でも、そのもっと先、ペットショップ、保護団体、愛護センター、友人の元へ来る前は、一体その犬たちはどこにいたのでしょう?うちの犬って、一体どこで生まれて、どこから来たのだろう??どんな道のりをたどって私たちの家族になったのか。
私たちは、日本で暮らし犬との暮らしを考えた時、実はどのように犬を迎えていたのか、日本の現状を知る場所、そして具体的に動ける場所を作りたいと思います。

現在、犬猫は生体販売の流通過程で年間約80万頭が取引され、そのうち約25,000頭が死んでいると言われています。
今まで解決すべきは「殺処分問題」の比重が大きかったかも知れません。
ところが現在、犬に限っては殺処分が約8,000頭、流通死は12,000頭と逆転現象が起こっています。そのことから、私たちは日本の犬の流れを正式に発表されている数値をもとにニュートラルに可視化することにしました。もちろん、数値はあくまでも1つの指標にすぎません。この数値に入らない犬たちの存在も、そして数字の操作もそれなりにあると認識しています。ただ、まずはここから、せめて見えている場所の中からできることを皆さんと一緒に考えていきたいとそう思います。

前回まで、「野良犬と野犬」「動物愛護センター」を可視化しました。
今回は、「TYPE3 生産流通システム」について今の現状をニュートラルにお伝えします。皆さんの“犬を知る“を一緒にアップデートしていきましょう!

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1.飼い主が犬を迎える入手経路

犬の飼養者(一般飼い主)の約52.6%※1が小売店(ペットショップ、ネット販売等)から家庭犬として迎えています。また、少し前の情報にはなりますが、57.1%※2の飼い主が何らかの場所から犬を購入していると環境省からも発表されています。
今回は、犬を家族へ迎える時に約半数以上の日本人が選択している商用流通の犬たちの現状をクローズアップします。
※1 一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査 令和元年度」
※2 環境省「移動販売・インターネット販売・オークション市場について 平成21年」

2.犬の流通システム

日本における犬の流通過程の業務区分と経路は、兼業が多く想像以上に複雑です。
定期的に見直される動物愛護法の改正に合わせ、モラルある流通システムへ年々移行しているものの、世界で稀に見るペットオークション形式を取り入れた独特の流通スタイルは現状変わりません。
このシステムの上で、最も問題だとされていることは、その対象が「仔犬」であり生体という命であることです。生後50日前後、離乳期の仔犬たちが以下のように取引されており、その歪みが年間12,000頭という仔犬の流通死を生んでいる背景につながっていきます。

2-1業務区分と届出状況

日本では動物取扱業の「販売流通」にかかわる種目を以下の業務区分に分けています。
該当する事業所は、動物愛護管理行政担当部局(動物愛護センター)へ「動物取扱業者登録」をすることが法律上で定められています。

▶︎業務区分
・繁殖生産業(販売)
・卸売業(販売)
・小売業(販売)
・輸入業(販売)
・ペットオークション業(競りあっせん業)

<動物取扱業者登録・届出状況(犬猫)>
・販売のみ      3,676事業所
・繁殖生産をする販売 12,235 事業所
・競りあっせん業    24事業所
※参照:平成30年度 環境省発表数値

2-2経路流通フロー

業務区分のポジションを図解したものが上記の経路流通フローチャートです。
古い情報になりますが、環境省発表資料「ペット動物流通販売実態調査報告書(平成13年度)」を参考に、頭数ベースでみた流通量が多い順を並べると以下の通りになります。

①「小売」から「ペット飼育者」に向かう流れ
②「繁殖生産」から「ペット飼育者」に向かう流れ
③「繁殖生産」から「小売」に向かう流れ
④「繁殖生産」から「ペットオークション」に向かう流れ
⑤「ペットオークション」から「小売」に向かう流れ

今のビジネスフレームでは、消費者(ペット飼育者)の要望に常に答え続けるために常に仔犬を生産し続ける必要があり、結果、各業務区分から流通外として「余剰犬」が生まれ多くの犬たちが廃棄されることにつながっています。
そして何より、仔犬を望む「ペット飼育者」へ届くまでに生産から飼育開始までのこの複雑な流れの中で取引されているのは、生まれたばかりで免疫力が低下した生後約2〜3ヶ月の仔犬たちだということをを忘れてはいけません。

3.繁殖生産(繁殖場、一般ブリーダー繁殖者)

本来、繁殖販売をする場合、必ず事業者登録がなされていなければなりませんが、営利目的の流通の中にいる犬を生産繁殖する業者は、動物取扱業者登録の有無と規模によって上記の通り大きく3つに分かれています。

・繁殖業者(パピーミル・仔犬工場)動物取扱業者登録有
・個人業者(自家繁殖・一般ブリーダー)動物取扱業者登録有
・一般個人(素人繁殖・非営利も含む)動物取扱業者登録無

先述の通り、繁殖のみを行う事業所数は正式に発表されておりませんが「販売+繁殖」を行なっていると行政へ届出のあった数は平成30年度12,235事業所です。
その数値を踏まえ、動物取扱業者登録済の小売業者に対して環境省がアンケートを行った「ペット動物流通販売実態調査報告書(平成13年)」の結果に改めて触れていきましょう。

上記の図を見て分かることは、生産繁殖を行う事業者は全体の67.9%と極めて高く、その内訳は、自社生産62.3%、委託繁殖5.6%であり、生産繁殖をしていないと回答をした事業者は26.3%に止まることです。
この数値から、ペット取扱業者は何らかの形で生産に関わるケースが全体の約70%だということが分かります。


この図からは、1事業所あたりの犬の年間生産数は「100頭以上(21.2%)」が最も多く、平均値として70.6頭だということが分かります。

ここまでの数値結果から、小売店のビジネスモデルに準じる形で繁殖業者は常に多くの犬たちを生産し続け、収益基盤を安定化していることが明確です。
その結果、パピーミルや仔犬工場といった偏った繁殖場が事業化され、多くの繁殖犬(メス)を管理し、出産を繰り返すことで効率的に仔犬を安定供給する仕組みが一般化し、劣悪な飼育環境がすでに問題視されています。

自らを「ブリーダー」と名乗り繁殖生産させて事業を営む個人業者や、「自分の愛犬が産んだ仔犬が欲しい」など、未登録の一般個人による安易で危険な素人繁殖もここに含まれます。

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4.競りあっせん業(ペットオークション)


ペットオークションでの流通は、日本独自の文化に沿った流通として、約25年前に始まり現在も会員制の業者間で取引が行われています。
生産者(繁殖場、一般ブリーダー繁殖者)が直接出品、または委託をし、オークション形式で秒単位の売買がされており、平成30年度の競りあっせん業の登録数は24事業所。オークション会場では多い所で毎週1,000頭の仔犬たちが売買されています。

競り(販売)は、動物取扱業登録者が前提で入会金や年会費を払えば参加可能。
落札(購入)は、動物取扱業登録済のペット事業経営を行う事業者のみ入会金や年会費を払えば参加可能。

4-1オークションの仕組み

オークションは会員制です。
会場へ入場するだけでも、基本開催前日までに入会が必須で、出品(販売)、落札(購入)共に、動物取扱業登録者であることが求められます。入会すると1登録につき、2名までの写真付会員証を発行を受けることができます。
オークション会場では1度に6頭の画像が大画面に表示され、秒単位で次々に売買されていきます。

出品者は、陸輸と空輸を選択し、仔犬をオークション会場へ運びます。例えば神奈川県(蒲田)が会場の場合、出品者は仔犬を羽田着で空輸することも可能です。落札された場合は、開催日4日後にオークション主催者より入金を受け、血統書提出期限は、オークション開催日より起算して80日以内に出品者から落札者へ提出することなどが主催者より義務付けられています。

落札者は、会場・オンラインどちらでも参加可能です。
オンライン参加の場合、好きなデバイスから専用サイトにログインし、会場と同じ競り情報をリアルタイムで見ながら入札することができます。(主催者へ事前入金をし、その入金額まで落札可能)落札した場合は、オークション主催者へ仲介手数料として落札価格の8.33%+消費税+段ボール箱代を落札代金に加算して当日現金で支払い、生体引渡しは精算終了後という流れで仔犬を購入します。

オークション主催者は、出品された仔犬を獣医師(7名)が全頭、健康状態をチェックし、厳正な審査を実施している上で、返品受付期限が設け、下記の通り仔犬の返品保証を行っています。
・ウイルス性疾患以外:開催日翌日正午まで。
・ウイルス性疾患:開催日翌々日正午まで。
※返品・受渡期限は原則、返品確定日翌日。

4-2主なペットオークション業者と会場

▶︎ ペットオークション会場
・北海道ペットパーク(札幌)       
・仙台ペットパーク(仙台市)
・ペットパークみかも(栃木)       
・岩槻ペットパーク(さいたま市)
・ペットモール蓮田(埼玉県)    
・東京ペットパーク(埼玉県)
・ペットオークション蓮田(埼玉県)
・B&Bペットパーク(埼玉県)   
・関東ペットパーク(埼玉県)
・ペットモール神奈川 (神奈川県) 
・静岡ペットパーク(浜松市)
・三河ペットパーク(岡崎市)   
・ペットパークJPA(愛知県)
・ピースワンペットパーク(大阪府)
・オオサカペットパーク(大阪府)など

4-3取引実績出荷頭数(※自社サイト正式発表数値)

・ペットオークション蓮田&ペットオークション神奈川(毎週約2,000頭)
・関東ペットパーク(毎週約700頭)
・ピースワンペットパーク大阪(毎週約267頭|2018年度 年間22,431頭)
・B&Bペットワーク埼玉(毎週約200頭)

5.卸売業(ブローカー、バイヤー)


小売業と繁殖業者を橋渡しするブローカー(仲買人)は、オークションで売れなかった仔犬を格安で卸したり、何らかの理由でオークション会場に入れない販売業者へ卸すなど、様々な事業者と関わり卸売事業を行っています。
複数の繁殖業者の在庫状況を常時把握し、小売業者に情報提供を行い、受注を受けて販売する仲介業として在庫を抱えずに販売を行っている場合もあり、上記資料を見ても卸売業のみで登録している事業者はほぼなく、生産・小売を兼業する場合がほとんどです。
また、平成24年に行われた動物愛護法の改正によって、動物取扱業者が直接行政に殺処分を依頼できなくなったことで売れ残った犬を引き受ける「引き取り屋」と呼ばれる業者が現れましたが、ブローカーは引き取り屋として仕事を請け負うケースもあります。

バイヤーは、海外から犬を輸入し、業者に販売する事業所です。
一般購入者からの依頼ではなく、主に、ブリーディング目的で繁殖場向けに輸入代理販売しているケースが多いとされています。

6.小売業(ペットショップ、インターネット販売、移動販売)


小売業者は、一般購入者(飼い主)に対して犬を販売する立場です。普段私たちが街やホームセンター、ショッピングモールなどで目にする店舗型ペットショップや、非店舗型インターネット販売、固定店舗を持たずにイベントなどで販売を行う移動販売があります。
販売する犬の仕入先は、繁殖業者(表記ブリーダー)54.6%、自社生産50.0%の割合が最も高く、ペットオークション(表記せり市)22.8%ということが分かります。では、3つの小売業の特徴をそれぞれ見ていきましょう。

6-1ペットショップ

ペットショップは、仔犬を仕入れ値よりも高く販売できて初めて利益が出るビジネスモデルです。そのため、ペットオークションや自社生産など多くの流通を辿り生後間もない仔犬をできる限り安価で仕入れ、展示販売、または仲介販売をしています。
自社工場の繁殖引退犬をはじめ、売れ残り犬などの余剰犬を「保護犬」として安価で販売するケースもあります。

6-2インターネット販売

現在法律上、犬を購入する際「対面販売」が義務化されており、インターネットのみで販売を完結することができないため、インターネット販売では、ブリーダー検索(仲介・情報提供、予約販売)のようなマッチングサイトとする場合が一般的です。
インターネット販売の場合、ペットオークションのような専門業者の仲介がないこともあり、購入者自らが仔犬の健康や血統背景を判断する必要があり、専門的な知識が必要です。
また、正式な犬舎や繁殖犬を実際に見学できないケースが多く、インターネット仲介という不透明な点は拭い切れません。

▶︎販売の流れ
繁殖場や一般ブリーダー繁殖者がサイトで出店販売を行い、購入者は指定先まで購入または予約した仔犬を引き取りに行きます。
見学できる犬舎を持たない事業所が多いため、犬舎での受け渡しではなく、事業所の最寄り場所などでの受け渡しが現状一般的です。
仔犬の購入が決まった場合、繁殖場や一般ブリーダー繁殖者は仲介手数料をブリーダーサイトに支払う仕組みです。

6-3移動販売

固定店舗を持たずに移動しながら全国のイベント会場等で仔犬の販売する事業所です。
仔犬の仕入先としては、主にオークションで落札されなかった生体を引取り販売したり、自社生産している場合が多く、仔犬のトレーサビリティーの確保が極めて困難です。
安価なことが最大の特徴で、ペットショップなど小売店の1/10ほどの価格で販売しています。ただ、購入後、病気などの問題が起きやすいにも関わらず事業所はイベント後に移動してしまうため購入者はアフターフォローを受けることが出来ないことで問題が多発しています。

実例「わんにゃんカーニバル2020」
開催日:2020年6月27日〜6月28日
主催者:アプラス株式会社(ペットショップアプラス・ペットショップワンピース)

今回は、複雑に絡み合う現在の犬の流通について1つづつ丁寧に紐解き、環境省をはじめ企業サイトやエビデンスを可視化することを念頭に置き構成しました。その理由は、ここには多くの方がすでに問題を感じ、アクションを行なっている中で、私たちは何がポイントなのか極めてニュートラルに可視化することで課題を整理する必要があると考えたからです。そして、その情報を多くの方に知っていただくことが大切だと考えました。
本文に書いた通り、この問題は「離乳期の仔犬に対して理想的な流通フローではないこと」が最も問題であると考えます。仔犬たちが、この世に生を受け、たった生後8週で1頭づつ段ボール箱に入れられ流通する仕組みと母犬から得た免疫力が下がる時期が合致し、不健康な取引が成立し多くの犠牲が出ます。また、犬にとって生後8週という離乳期は、母犬から社会性を学ぶ動物行動学上、大切な時期でもあります。早期の離乳や心理的不安はその後の犬の資質や性格形成に大きく影響を及ぼすため、犬たちにとって生産流通システムによるマッチングは「幸せな家族との出会い」から大きくかけ離れてしまうものだと感じざるを得ません。

【参照】
一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査 令和元年度」(WEB)
環境省 動物取扱業者登録・届出状況(PDF)
環境省 「ペット動物流通販売実態調査報告書 平成 13 年度」(PDF)


Miyako
インフォグラフィックス担当|外大を卒業後、総合商社で総合職として働きながら、グラフィックレコーディングのスキルを独学で習得。19年4月に武蔵野美術大学造形構想研究科への進学をきっかけに退職し、現在は大学院生フリーランスとして、持ち前の明るさとグラフィックレコーディングスキルを生かしながら、様々な分野での「見える化」の可能性やコミュニティ作りを追求中!

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今までの犬と暮らす当たり前や固定概念にとらわれず、新しい情報や価値観を知ることで気づきを得るために、様々な情報発信や活動をします。 最終目標として掲げる「循環する社会の仕組みを創ること」を実現するため、ミッションとして、“犬を知る“をアップデートし、より豊かな関わりで犬と人が本質的に繋がり、共に生きる姿を提案します。私たちは、循環サイクルの中でその未来を創造し実現できることを強く願いビジネスを営む社会を目指します。

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