犬を迎える選択肢の一つに、”譲渡”があります。
現在、愛護センターや保護団体、友人知人など様々な場所から犬を譲り受けることが出来ますが、譲渡条件や手続き、費用について、その相手や機関によって大きく異なります。今回は、その中から保護犬や譲渡犬を譲り受ける際の「譲渡費用」についてクローズアップしたいと思います。
大前提として『非営利での犬の譲渡は無償であること』
まず『非営利での犬の譲渡は無償であること』が大前提です。
医療費実費以外の負担を新しい飼い主に請求することは法律上出来ません。
それ以外の費用を請求する場合、それは営利を目的とした販売や譲渡と見なされ、動物愛護管理法の定めにより「第一種動物取扱業者登録」の届出が必須です。
そのため、第一種動物取扱業者登録の届出をしていない人や企業、団体が譲渡を行う場合は、犬の譲渡に際し、1円たりとも利益を出すことはできません。
しかし、保護団体から譲り受ける保護犬など、非営利での譲渡の場合でもよく耳にする”譲渡費用”。この譲渡費用とは本来どういったものなのでしょうか。
動物愛護センターから犬を譲り受ける場合
都道府県や各自治体が運営している愛護センターから犬を迎える場合の譲渡費用は、医療費の負担はないことが多く犬の譲渡は無料で、「畜犬登録料」「マイクロチップ挿入費用・データ登録料」などの登録関連の実費のみであることがほとんどです。その費用を含めても 譲渡にかかる費用は、無料~10,000円程度が一般的です。
また、自治体によっては動物愛護センターから譲り受けた犬の不妊去勢手術の補助金や助成金が受けられる制度がある場合があります。詳しくはお住まいの管轄の動物愛護センターや福祉局にお問合せ下さい。
犬譲渡:無料
マイクロチップ挿入費用・データ登録料:無料
・神奈川県動物愛護センター
犬譲渡手数料:オス4,275円 メス8,140円
・大阪府動物愛護管理センター
犬譲渡:無料
マイクロチップデータ登録料:1,050円
保護団体・個人ボランティアから犬を譲り受ける場合
非営利の譲渡であっても、ワクチン接種など必要な医療処置として保護側が立替えた実費分は営利性はないとみなされ、譲り受ける側(新しい飼い主)に負担してもらうことが出来ます。そのため保護団体や個人ボランティアから迎える場合、譲渡費用の内訳の多くは「医療費」であることが一般的です。
保護団体や個人ボランティアの多くは、保護譲渡対象犬の医療履歴や検査結果を提示するなど、譲渡費用の内訳に対してクリーンな対応をしています。
しかし悪意のあるなしに関わらず、不明瞭な譲渡費用を請求するケースも残念ながら存在します。先述した通り、団体、個人を問わず、第一種動物取扱業者登録の届出をしていない場合は、譲渡の際に利益を出すことはできません。
運営費が必要な場合、飼い主への譲渡費用ではなく他から資金調達を行う必要があります。
東京都動物愛護相談センターに認定登録された犬の保護団体37団体 譲渡費用一覧(WEBサイト所有30団体のみ掲載)
団体名 | 譲渡費用 |
特定非営利活動法人 保健所の成犬・猫の譲渡を推進する会 | ¥34,000~38,000 |
NPO法人 日本動物生命尊重の会 | 約¥30,000(仔犬の場合ワクチン+¥5,000) |
特定非営利活動法人 ALMA | ¥45,000(シニア、継続治療が必要な犬 20,000円~40,000円) |
ECSRN(English Cocker Spaniel Rescue Network) | 金額明記無 |
CAJA(カヤ)の会 | ¥15,000~¥60,000 |
Friends of animals | 金額明記無 |
HappyLabs(ハピラブ) | ¥30,000 |
perro | ¥20,000~¥50,000 |
一般社団法人 ランコントレ・ミグノン Rencontrer Mignon | 金額明記無 |
BCRN(ボーダーコリーレスキューネットワーク) | 金額明記無 |
ふがふがれすきゅークラブ | ¥18,000~¥23,000 |
Angel’s Taleシーズーレスキューネットワーク | ¥15,000~¥35,000 |
ジャックラッセルテリアファンクラブ | 金額明記無 |
Dog Shelter | ¥27,330~¥37,830 |
犬民宿舎しろいぬの里 | ¥45,000 |
FARCO(ファーコ) | 金額明記無 |
一般社団法人ケンの家 | 金額明記無 |
LIFE HOUSE(イオンペット) | 金額明記無 |
アグリドッグレスキュー | ¥20,000~¥40,000 |
GOGO groomers | 金額明記無 |
一般社団法人ワン・モア・フィールド | 金額明記無 |
the VOICE | 金額明記無 |
アイドッグレスキュー隊 | ¥40,000~¥48,000 |
NPO法人Tier Heim KOKUA | 金額明記無 |
公益財団法人 ヒューマニン財団 | 金額明記無 |
Sheltie Rescue | ¥10,000~¥50,000 |
家庭犬のしつけ協会 | 金額明記無 |
一般社団法人 台東125(ワンニャーゴ)小さな手 | ¥33,000 |
PEACE BOAT | ¥45,000 |
まちワン | 金額明記無 |
2021.1.20時点
迎える側の判断材料として、医療明細や領収書を提示してもらうことなどいくつかのチェック項目があります。誠実な活動を行う場所から適正に犬の譲渡を受けましょう。
☑ 医療履歴と動物病院発行の領収書を提示できるか
☑ その治療や医療行為の理由について納得できる説明を受けることができるか
☑ 犬のサイズや性別などで分けた一律の譲渡費用設定ではないか
☑ 医療費実費以外に寄付金、賛助会費、運営費などの支払い義務がないかどうか
個人から犬を譲り受ける場合
自宅や近所で仔犬が産まれたり、飼えなくなって犬を知人に譲るなど、個人間でも様々な譲渡のシチュエーションが考えられます。
しかし、如何なる譲渡の際にも、金品に限らず謝礼を受け取ることはできません。
第一種動物取扱業者として登録していない方が、動物を譲ったり、貸したり、預かったりする際に、何らかの対価(金品に限りません)を得ると、動物愛護管理法違反(無登録営業)として100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。意図せず法を犯してしまわないよう注意が必要です。
譲渡費用明細を見てみよう
保護団体や個人ボランティアから犬を譲り受ける際、上記のような譲渡費用明細を元に請求されるケースが多くあります。今回の記事を読んでいただくことで、明細書に違和感を感じていただけるかと思います。
まず、輸送費、交通費、賛助会費などの請求は基本的にできません。避妊去勢手術や医療費は、合計金額ではなく医療明細が別途必要です。犬を飼育する時、必ず行う畜犬登録については新しい飼い主の居住地で行うことが最もスムーズです。本来支払う必要のない多額の費用が多数発生していることが分かります。
そもそも保護犬や譲渡犬の譲渡費用は、営利性のない事柄に対して実際に立替を行った実費分のことであり、保護活動を維持するための諸経費は含まれません。
そのため、譲渡費用が一律で設定されていたり、決められた寄付金額(必ず寄付金納める時点で任意ではなく強制のため寄付ではありません)が譲渡費用に予め含まれているケースなどは、法に反している可能性があり、十分注意が必要です。
活動を運営していくための経費を譲渡費用に組み込むことは、利益を生む構造として販売行為と見なされ『ペットショップ』と同じ仕組みです。
保護犬や譲渡犬を選択する方の多くは、そのことに対し、意思やポリシーがあってのことだと思います。その想いがよりよい社会の形に繋がるよう、犬の譲渡を受ける際の判断は正しく、納得のいくものであって欲しいと願います。
昨今、犬を想う人の良心に付け込む悪意ある企業や団体、個人とのトラブルも横行しています。こうした保護犬ビジネスに惑わされないためにも、譲り受ける側の知識もアップデートが必要です。私たちが犬の譲渡を考えた時、正しい判断ができるよう知識を深めることで、譲渡を取り巻く環境が適正化され、結果として商用利用に巻き込まれる犬たちを減らすことに繋がると信じています。