皆さんこんにちは!ペット食育協会上級指導士の山崎枝里です。9月1日は防災の日。防災の日がこの日に制定されたのは1923年(大正12年)9月1日に発生した『関東大震災』に由来しています。また、古くから伝わっている暦の雑節の一つ『二百十日』は、立春から数えて210日目の日を指し、現在の暦では9月1日前後となっています。この時期は台風が襲来し、稲作など大被害を受けやすい厄日とされていました。9月から10月にかけて秋の台風シーズンとなり、日本列島にも接近し毎年のように大きな被害をもたらします。台風だけでなく地震や今回のコロナのようなパンデミックなど災害はいつ起こるかわかりません。 防災は特別な備えだけでなく日々の暮らしの中に取り入れておくと、いざという時に慌てず対応すること ができます。今回は、水道や火などが使えない被災状況を想定し、飼い主と犬たちの命を守るレシピです。災害に負けない「知識と備え」を是非アップデートしてくださいね!
食材(1日2回食の場合の1食分)
これまでのレシピはグラム単位でご紹介していましたが、不測の事態を想定すると、食材をわざわざ 計量するのは難しいのではないでしょうか?被災時は食事も臨機応変に対応することが大切です。今回はツナや野菜の水煮などを使いましたが、サバ缶や前回ご紹介した乾物の野菜を使ってももちろんOKです!これまでのレシピでご紹介したワンポイントアドバイスをフル活用しながら飼い主と犬たちの防災非常食ごはんを作ってみましょう!
☑︎ アルファ米 1袋100g
☑︎ 野菜ジュース 1パック約200ml程度
※野菜ジュースの中にはネギ類などが含まれる商品もあるので原材料を必ず確認してください
☑︎ ツナの水煮
(小型犬大さじ2~3杯|中型犬大さじ5~7杯|大型犬大さじ7~10杯)
※目安:大さじ1杯約20g
☑︎ ウズラ卵の水煮
(小型犬1~2個|中型犬2~3個|大型犬3~5個)
☑︎ 赤ちゃん用離乳食 野菜の水煮
(小型犬大さじ2~3杯|中型犬大さじ4~6杯|大型犬大さじ5~8杯)
※離乳食の中には玉ねぎ・ネギ類などが含まれる商品もあるので原材料を必ず確認してください
※目安:大さじ1杯約25g
※小型犬5キロ・中型犬15キロ・大型犬25キロで換算。
️※成犬・アクティブな犬へ向けての分量として基本レシピをご紹介しています。
作り方
【準備】アルファ米はお湯が無くても、常温の野菜ジュースやトマトジュースでも戻すことができます。アルファ米(100g)のパッケージを開封後、中にあるスプーンと脱酸素剤を取り除きます。そこに野菜ジュース1本を注ぎ、アルファ米と野菜ジュースをよく混ぜてチャックを閉じ、約60~ 80分置いておきます。アルファ米の芯が残っていなければOKです。※パッケージに油性ペンで出来上がり時間を書いておくと目安時間が分かり便利です!
1. 野菜ジュースで戻したアルファ米は、《小型犬大さじ1~2杯|中型犬大さじ3~5杯|大型犬大さじ7~10杯》 が1食分です。(※野菜ジュースで戻した状態:大さじ1杯 約30g)
2. うずらの卵は喉に詰まらせないように食べやすい大きさにします。
3. 全ての食材を器に盛り付け、よく混ぜ合わせて完成!
② 災害時に不足がちな野菜の栄養分をごはんと一緒に摂取できる
③ 味に深みがでて美味しさがアップする
※飼い主さん向けのごはんも同じ食材です。塩・胡椒などで味付けをすると美味しく召し上がれます。
これまでの「ワンポイントアドバイス!」のおさらい
1. 食事量の目安
1食分の食事量は、基本として「犬の帽子が目安」です。
”犬の目の上までの帽子”をイメージしていただけるとわかりやすいと思います。食べる量や消化・吸収能力 は1頭づつ異なるので厳密である必要はありません。あくまでも目安としていただき、たくさん運動した日は食事量を多めにあげたり、おやつを多めに食べた日は少し量を減らすなど調整していただけたらと思います。その他、体質やその日の体調に応じてアレンジしていただいてOKです!
2. 各食材の割合について
基本の目安は、<肉&魚類1:野菜類1:穀類(炭水化物)1>です。厳密に計量しなくても、使う食材をお皿に並べて見た目のバランスが1:1:1になればOK!
・野菜類:野菜の水煮、野菜ジュース(1/3)
・穀 類:アルファ米(1/3)
レシピのポイント
今回は、電気・ガス・水道などのライフラインが停止し、水道や火などが使えない被災状況を想定した中で飼い主と犬の命を守り、心とからだを元気にする防災非常食ごはんです。
1. 赤ちゃん用離乳食を活用する
飼い主用の災害備蓄品としてレトルト食品をストックしている方も多いのではないでしょうか?レトルト食品は、油分や塩分が多く災害時ストレスフルな日常では消化の負担になる場合があります。私自身もローリングストック法(※)で定期的にレトルト食を食べていますが、体調によっては胃もたれや少しお腹がゆるくなったりするのが悩みの1つでした。今回は、人間の赤ちゃん用離乳食をフル活用したレシピです。赤ちゃん用の離乳食は塩分や油分も控えめで柔らかく調理されたものが多く、災害時、犬たちとシェアすることができます。また常備しておくと時間がない日常でも犬の手作り食を簡単に作ることができます。日々の暮らしと備えにぜひご活用ください。
普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法
・袋に入れたままつぶしたり、調理器具を使わず食べやすい大きさにできる
・味つけされていないので好みの味つけが可能
・常温で長期保存が可能
・パウチが多く缶などに比べてゴミがかさばらない
2. 缶詰の他にもパウチ包装などの保存食を備蓄する
今回、缶詰に比べゴミがかさばらないパウチ包装のツナや紙パックの野菜ジュースを活用しました。大きな災害が発生した際、人命救助や、電気・ガス・水道のようなライフラインの復旧が優先的に行われるため、災害の規模にもよりますが発災直後は、家庭ごみの収集は一時的に停止する場合があります。また、ごみの収集や処分を行う事業者やごみ処理施設が被害を受けた場合、生活ごみを含め、ごみ排出ルールが大きく変わる可能性があります。缶詰も長期保存が可能なので我が家でも購入していますが、ゴミという観点と持ち運びの軽さからパウチ包装の保存食も備蓄してしています。
ワンポイントアドバイス!「塩分について」
今回のレシピでは、塩分が含まれるツナの水煮缶をご紹介しました。「犬に塩分は大丈夫なの?」と心配された飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。結論からお伝えすると、「犬には塩分は必要ではない」ではなく「犬にとって人間の量は必要ないが身体に必要な成分」です。健康な犬であれば余分な塩分を身体から尿で排出する機能が備わっています。犬の身体にとって塩分は、
② 血液の浸透圧の調整
③ 神経の伝達
④ 糖分やアミノ酸の吸収
など重要な役割をもち、ドッグフードにもナトリウムとして塩分が含まれています。過度に塩分の摂取を制限すると血液中のナトリウムイオン濃度が低下し、嘔吐や痙攣、下痢、呼吸困難、極度の疲労などの症状があらわれます。
犬は長い歴史の間、動物の血液を含む肉や骨を摂取していました。主に捕食していた草食動物の血液には塩分が含まれ、そのため犬は塩分の排出能力が高く、余分な塩分を尿で排出する機能が備わっています。現在では獣医学会が発表した論文でも、健康な犬では飲水をしっかりしていれば塩分の過剰摂取による高血圧は認められないというデータが出てきています。
手作り食メインの我が家では、薄くうすめた味噌や塩麹などをごはんに加えて適宜与えています。
ご参考までに< 犬の一日に必要なナトリウム量と食塩の摂取量の目安の計算式 >をご紹介します。
② ①で計算したナトリウム量(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)【例:体重5kgの犬の場合】
① 5kg×50mg=1日に必要なナトリウム量 250mg
② 250mg×2.54÷1000=食塩相当量 0.635g
体重5kgの犬の場合 約0.6gが1日に必要な食塩量となります。
今回ご紹介したツナの水煮1袋に含まれる食塩相当量は0.5g。5kgの犬のレシピでは、ツナは約大さじ2~3杯(約40~60g)なので約0.33~0.5gと計算することができます。
※1.今回使った離乳食の水煮の食塩相当量は1袋80gあたり0.041gと微量なので計算に入れていません。
※2.健康な犬であれば塩分摂取に対し過度な心配はありませんが、腎臓や心臓に疾患がある場合排泄機能が制限される恐れが あるのでご注意ください。
参考文献:日本小動物獣医学会誌 2010年63巻1号 P.45〜47
「正常犬・猫の高ナトリウム摂取における血圧および飲水量の変動」
ラナからのメッセージ
名前:ラナ
性別:女の子
生年月日:2016年
好きな食べ物:焼きサンマ・ハンバーグ・りんご
好きなこと:ネコのトンちゃんと遊ぶこと。おとーさんとぴったんこして寝ること。
「みなさんこんにちは。ラナちゃんです。今回も『防災ごはん』です。
おかーさんが作ってくれたごはんは、ラナちゃんが大好きなツナと卵が入っていてうれしくなっちゃいました。あっというまにたべちゃっておかーさんが『もうたべたの?!』ってびっくりしていたよ。手作りごはんもドッグフードもいろんなごはんを食べておくことが防災くんれんにつながるんだよー。防災ってとってもだいじなの。台風がやってきても、きゅうに地震がおきても元気に過ごしてのりこえようね。みんな防災ごはんたべてねー!」
enkara編集部です。ペット災害危機管理士1級・防災士でもある山﨑さんにシチュエーション別で2回に渡って「犬の手作り防災食(非常食)」をご紹介いただきました。前回は、水道や火などライフラインが使える状況を想定したレシピ。今回は、そのライフラインが停止した状況を想定したリスクや緊急度が高い非常時のレシピです。どちらも、乾物やパウチ・缶食材を使っているため切ることがないのでまな板&包丁要らずです。いざという時、自治体などの救援は人間のサポートが優先でありベースです。そのため私たち飼い主は、”犬用の食事を各自常に確保しておくこと”が大切です!いざという時、便利な保存食を上手に活用したいですね。ローリングストックの中に、ぜひちょっと多めに食材を追加して犬を守る防災力をアップしましょう!
[文/山﨑 枝里・構成/enkara編集部]こんにちは!ペット食育協会上級指導士の山崎枝里です。今年の梅雨の期間はとても短く、すでに関東甲信、東海、九州南部地方は異例の早さで梅雨明けが発表されましたね。この時期になるとここ数年、天気予報などで「梅雨末期の大雨に警戒してくださ[…]
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